見透かす王女と四人の騎士
「……うちに何か用ですか」
「お茶のお誘いに来たわけではありません。クイーンズクレストを申し込みに来ました」
(……まあ、そうだよな)
一人で三人の王女相手に堂々と乗り込んでくるとは。
よほど自分の従える騎士に自信があるということか。
「あんた、こっちが三人だってわかってるんでしょうね」
アイリスが強気に言い返す。
「もちろんです、アイリス・ロゼリア。それにリヴ・クリュスタ、フィア・エクレール」
リヴたちの表情が変わる。敵は俺たちを既に知っているのか。
「近藤千早も呼んでください。場所は近くの記念公園がよろしいでしょうか」
近藤のことも知っている……。
俺達を知り尽くした上で、勝てると踏んで勝負しに来ているんだ。
既に俺たちは情報で負けている。
丸裸にされてしまっているような、嫌な感覚。
既にうちの王女たちは恐れ慄いている。
普段強気なアイリスもフィアも、すっかり大人しくなってしまった。
これで勝負になるのだろうか。
でも、何故だろう。
俺は、不思議と相手からは敵意のようなものは感じられなかった。
───
旭山記念公園。
円山の近くにある、1.8平方キロメートルを超える大きな公園である。
夕方に差し掛かった現時刻では、すでに人はまばらだ。
自然も多いが開けた空間もあり、周囲に被害を出さずに戦うにはうってつけの場所である。
俺達は寄り添うように固まり、敵と相対する。
「強敵だね」
「ああ」
流石の近藤も、不安は隠せない様子だ。
王女の数では有利だが、騎士の数で負けている。
単純に考えて、俺と近藤は二人の騎士を同時に相手にすることになるのだ。
「みんなで力を合わせれば、きっと勝てるよ」
近藤がみんなを鼓舞する。
それでも、俺たちの周りに漂う嫌な空気は払拭できない。
「では、あなたに頼みますよ。煌夜」
シルエナの言葉に合わせて前に出てきたのは、黒いスーツを着た赤い長髪の男が一人。
「俺様が揉んでやろう。かかってきたまえ、少年」
他の三人は動かない。どういうつもりなんだ。
「まずはあんた一人で相手になるっていうのか?」
「うーん、まずはっていうか、俺様一人で十分って感じ?」
何だこいつ、舐めてるのか。
軽薄そうな姿勢が、よりそう思わせる。
シルエナと名乗った王女は、他の男と共に後ろで動かない。
この男はともかく、彼女は相手を侮って油断するようなタイプには見えないが……。
俺は近藤と顔を見合わせ、頷き、共に鎧を身に纏った。
俺は慣れた白と水色の装備だ。
舐められているとしても、こっちにとっては好都合。
まずは一人、確実に倒す!
「そんじゃ、いきますかね」
目の前の男も輝きと共に、黒と紫色の鎧姿へと変化した。
両腕には俺と同じガントレット。
そして頭部には、紫色の宝石が埋め込まれた額当てが出現した。
(なんだあの装備は……初めて見る)
ただの防具なのか。それとも何か特別な力を備えているのか。
こいつ、俺たちよりも先の力を身につけている。
「気になっているようだな、少年。こういうのはサークレットって言うんだぜ」
相手は余裕を崩さない。力を持つゆえの自信なのか。
「驚くのはまだ早いぜ~?」
そう語った瞬間、後方のシルエナが杖を構えた。
「ファムシェミド」
彼女が呪文を唱えると、煌夜の影が伸び、それは立体となって人の形となる。
そして彼から分離し、独立した騎士となった!
「これで2対2だ。満足だろう?」
(影で分身を作る呪文……?)
こいつが一緒に戦うっていうのか。
影の実力は、この男と同じ? それとも……。
「いくぜっ!」
考えがまとまらないうちに男は俺に、そして影は近藤へと襲いかかった!
騎士とその影の背後で、シルエナが真剣な眼差しで戦場を見つめている。
「さて、見せてもらいましょうか。あなた方の力を」




