炸裂する策略 そして第二の運命が動き出す
この地割れの大きさは、五、六メートルはある。
助走をつけたとしても、リヴにはおそらく飛び越えられない。
蓮は目の前にいるのに、届かない。
この距離ではフィズラスで牽制するくらいしかできないだろう。
しかしそれが、どれだけの意味を持つだろうか。
「くそっ!」
蓮も状況を理解していた。助けは来ないということを。
「残念だったな。お前はここで終わりだ!」
「ルドメトル!」
呪文が響くと同時に、もう一人の騎士もその身に黒い輝きを纏った。
二人の鋼鉄の騎士の剣が、容赦なく蓮に襲いかかる。
彼は自分の左胸を守ることに必死だった。だがそれも時間の問題でしかないことは明白だった。
「ああっ……リヴが助けに行けなくなったです!」
魔力に余力を残しているリヴが封じられた。
蓮は二対一の不利な状況。
誰もが、この戦況を打破する策を持っていなかった。
──ただ一人、この状況にほくそ笑んでいたアイリスを除いて。
「馬鹿ね。これじゃあ、あんた達もあたしを簡単に攻撃できない。つまり──」
アイリスが前方に杖を構える。
「この状況なら遠慮なく呪文が使えるってことよ!」
勝利を確信したかのように、高らかに叫ぶ。
「ネルトプラ!」
リヴの周囲の地面の下から、鈍い音が響いた。
土が膨らみ、割れる。
そこから直径十センチ程の木の根が二本、這い出てきた。
「えっ!?」
そのうちの一本が土埃を纏わせながら、まるで蛇のようにリヴの胴体に巻き付く。
そして地割れを越え、蓮の近くへと放り投げた。
「うわあああっ!」
なんとかバランスを取って着地に成功する。
前を見ると、もう蓮と敵が交錯する戦場は目の前だった。
「なっ!?」
ペトラもアイーゼも、即座に自分たちの策が破られたことに驚きを隠せない。
「王女! その宝玉頂きだ!」
敵の騎士からすれば、獲物が目の前にのこのことやってきたようなもの。
だが彼らは知らなかった。リヴが持つ冷気の剣の鋭さを。
「ソルブレイドっ!」
青い刃が敵の剣と交差し、鋼鉄の体を凍て付かせる。
そのまま半身はみるみる白く染まっていく。
「ああっ……何だとっ……!」
「うりゃあっ!」
その隙を逃さず、蓮の剣が左胸の宝玉を貫く。
騎士の力は氷と共に光となって失われ、男はその場に崩れ落ちた。
「もう一人……!」
リヴが残った騎士に狙いを定める。
「メトルス!」
リヴの動きを妨げようと、アイーゼにより鉄球が三つ放たれる。
だがそこに蓮が割って入り、盾によって彼女を守った。
「蓮さん!」
「やるぞ、リヴ!」
残った男は必死になってリヴの攻撃を回避しようとするが、そこに蓮の剣が加わる。
さらに、アイリスの操る木の根も襲いかかった。
「うわあああっ!」
三人の同時攻撃を前に為す術は無い。戦場にもう一体、白い氷像が増えた。
「く、くそっ……!」
騎士を失った二人の王女は、逃げようにも逃げられない。
その道は、自分たちの呪文によって失われている。
「勝負あったな。宝玉を砕かせてもらう」
「ストルスっ!」
杖先からリヴ目掛けて石つぶてが放たれる。だがそれも蓮の盾によって防がれる。
最後の悪あがきも意味は成さない。
ペトラとアイーゼの宝玉は、呆気なく蓮の剣によって砕かれた。
「このわたくしが……負けるなんて」
「くそぉ……負けちまった……」
王女達は砂と化し、風に運ばれてどこかへと消えた。
この地割れの大きさは、五、六メートルはある。助走をつけたとしても、リヴにはおそらく飛び越えられない。
蓮は目の前にいるのに、届かない。
ここからではフィズラスで牽制するくらいしかできない。
でも、それがどれだけの意味を持つだろうか。
「くそっ!」
蓮も状況を理解していた。助けは来ないということを。
「残念だったな。お前はここで終わりだ!」
「ルドメトル!」
呪文が響くと同時に、もう一人の騎士もその身に黒い輝きを纏った。
二人の鋼鉄の騎士の剣が、容赦なく蓮に襲いかかる。
彼は自分の左胸を守ることに必死だった。だがそれも時間の問題でしかないことは明白だった。
「ああっ……リヴが助けに行けなくなったです!」
魔力に余力を残しているリヴが封じられた。
蓮は二対一の不利な状況。
誰もが、この戦況を打破する策を持っていなかった。
──ただ一人、この状況にほくそ笑んでいたアイリスを除いて。
「馬鹿ね。これじゃあ、あんた達もあたしを簡単に攻撃できない。つまり――」
アイリスが前に杖を構える。
「この状況なら遠慮なく呪文が使えるってことよ!」
勝利を確信したかのように、高らかに叫ぶ。
「ネルトプラ!」
リヴの周囲の地面の下から、鈍い音が響いた。
土が膨らみ、割れる。
そこから直径十センチ程の木の根が二本、這い出てきた。
「えっ!?」
そのうちの一本が、土埃を纏わせながら、まるで蛇のようにリヴの胴体に巻き付く。
そして地割れを越え、蓮の近くへと放り投げた。
「うわあああっ!」
なんとかバランスを取って着地に成功する。前を見ると、もう蓮と敵が交錯する戦場は目の前だった。
「なっ!?」
ペトラもアイーゼも、即座に自分たちの策が破られたことに驚きを隠せない。
「王女! その宝玉頂きだ!」
敵の騎士からすれば、獲物が目の前にのこのことやってきたようなもの。
だが彼らは知らなかった。リヴが持つ冷気の剣の鋭さを。
「ソルブレイドっ!」
青い刃が敵の剣と交差し、鋼鉄の体を凍て付かせる。そのまま半身はみるみる白く染まっていく。
「ああっ……何だとっ……!」
「うりゃあっ!」
その隙を逃さず、蓮の剣が左胸を貫く。
騎士の力は氷と共に光となって失われ、男はその場に崩れ落ちる。
「もう一人……!」
リヴが鋼鉄と化した騎士に狙いを定める。
「メトルス!」
リヴの動きを妨げようと、アイーゼにより鉄球が三つ放たれる。
だがそこに蓮が割って入り、盾によって彼女を守った。
「蓮さん!」
「やるぞ、リヴ!」
残った男は必死になってリヴの攻撃を回避しようとするが、そこに蓮も加わる。
さらに、アイリスの操る木の根も襲いかかった。
「うわあああっ!」
三人の同時攻撃を前に為す術は無い。戦場にもう一体、白い氷像が増えた。
「く、くそっ……!」
騎士を失った二人の王女は、逃げようにも逃げられない。
その道は、自分たちの呪文によって失われている。
「勝負あったな。宝玉を砕かせてもらう」
「ストルスっ!」
杖先からリヴ目掛けて石つぶてが放たれる。だがそれも蓮の盾によって防がれる。
最後の悪あがきも意味は成さない。
ペトラとアイーゼの宝玉は、呆気なく蓮の剣によって砕かれた。
「このわたくしが……負けるなんて」
「くそぉ……負けちまった……」
王女達は砂と化し、風に運ばれてどこかへと消えた。
「やった……」
勝った。
戦場に残ったのは、意識を失った元騎士と、一点の指輪だけ。
リヴがそこに近づこうとすると、指輪を持つ騎士の体に木の根が巻き付き、その身はアイリスの元へと運ばれた。
そして彼女は、指先から指輪を回収した。
「ずるいです! なんでお前が指輪を取るですか!」
「あたしのおかげで勝てたんだから、あたしのものになるのは当然でしょーが」
当然の権利と言わんばかりに、アイリスはフィアの抗議を歯牙にもかけない。
蓮はリヴと顔を見合わせる。
確かに彼女の呪文がなければ、この勝負は勝てなかっただろう。
リヴも、仕方ないと言った様子で何も言わなかった。
「おーい。俺たちもそっちへ運んでくれ」
フィアたちと合流した蓮は、アイリスに詰め寄られる。
「あんた、名前は?」
「俺? 鷹見蓮だけど」
「ふーん、蓮ね。左手を出しなさい」
彼女が何をしたいのかもわからないまま、深く考えずに言われた通りにした。
次の瞬間、彼の中指に彼女の手によって指輪が嵌め込まれた。
「あっ!」
「えっ?」
その場にいた三人は、一瞬何が行われたのかわからず、調子の外れた声を出すしかなかった。
「これであんたはあたしの騎士ね。これからはアイリスちゃんのために頑張って働きなさい」




