田舎で出会った美少女 運命の出会い
墓参りを終えた僕たちは、そのままおじいさんの家に案内された。
住宅街に佇む2階建ての一軒家。
玄関を開けると、黒いワンちゃんが尻尾を振りながらお出迎えをしてくれた。
可愛い。
「客を歓迎できるなんて、なかなか感心なやつですぅ」
そう言ってフィアがワンちゃんの頭を撫でる。
蓮さんが、黒柴っていう種類なんだと教えてくれた。
「自分の家だと思ってくつろいでくれていいから」
通された居間は綺麗に整頓されており、写真がいくつも飾ってある。
写っているのは、蓮さんだ。
小さな頃から、今よりちょっとだけ若い頃まで、あらゆる年代の蓮さんがそこにいた。
そしてもう1人、蓮さんと良く似た少年が一緒に写っている。
きっとそれは、何度か話に聞いた蓮さんの弟。
双子なのだろうか? それくらい似ている。
たくさん並べられた写真からわかるのは、おじいさん達は蓮さんのことを大切に思っているってこと。
僕はそれがとても嬉しかった。
「リヴちゃんとフィアちゃんはここ使って。夜は布団ここに敷くから」
2階の部屋に通され、荷物を置かせてもらう。
壁にあるのは色褪せたポスター。
棚にある本もどれも古めかしく、年季の入った部屋であることを感じさせる。
居間に戻った僕達は、おばあさんに出してもらった冷たいお茶を飲みながら、くつろがせてもらった。
奥からどんどんお菓子が出てくる。そしてフィアが遠慮なくそれを平らげる。
そんなに食べたら夕飯が入らなくなっちゃう。でもフィアもおばあさんも止まらない。
僕と蓮さんはそれを苦笑しながら眺めていた。
時計が16時を指す頃、元々のTシャツに半ズボンのジャージへ着替えた蓮さんが、外へ出かけようとしていた。
「ちょっとこの辺り走ってくるよ」
「それなら、僕も行きます」
「運動用の服なんて持ってきてないだろ? 長距離の移動で疲れてるんだから休んでろよ」
そう言って蓮さんは行ってしまった。
疲れているのは自分だって同じだろうに、こんな時でも自分を鍛えようとする。
そんな彼だから頼りになる。でも同時に、自分を顧みない様子が心配でもあった。
「蓮ちゃん出かけちまったのか」
「晩御飯までには帰ると言ってましたよ」
おじいさんが少し寂しそうにしている。本当に蓮さんのことが大好きなんだ。
僕たちは居間に残り、お二人と話に花を咲かせた。
「蓮ちゃん、札幌で寂しくなさそうかい?」
正直に言えば寂しいんだと思う。
でも彼のいない間にそう言ってしまうのは悪い気がした。
「フィアが構ってやってるのに寂しいわけがないですぅ」
フィアの言葉に2人は苦笑いをしている。
「確かに蓮ちゃん、明るくなったよな。ちょっと前まで暗かったから心配だったんだよ」
近藤さんも言っていた。輪の中心になるような子供だったと。
そして最近は、昔の彼に近づいているって。
「明るい? あれでですかぁ?」
またも2人が困った顔をしている。もう少し言葉を選んで欲しい。
その後もフィアの発言に何度も僕は冷や冷やさせられた。
そしてそれを受け入れる2人の度量に感謝せざるを得ないのだった。
───
太陽は頂点から落ちてきたが、真夏の空はまだ明るい。
俺は汗を流しながら道路沿いの歩道を走る。
通りかかったコンビニの前で、男女が揉めている様子が見えた。
痴話喧嘩か? だがどうもおかしい。
男の方はどうやら2人組で、ガラが悪く、女性の手首を掴んで離さない。
女性は困っているようだが、もう1人の男もニヤニヤとしており嫌な感じである。
つい立ち止まって様子を見てしまう。すると女性を掴んでいる男がこちらに気づき、睨みつけて来た。
「なーに見てやがんだコラァ!」
目をつけられてしまった。このまま立ち去ってもいいが、あの女性を見捨てるのも気が引けた。
1対2では分が悪いが、今の俺にはこの力がある──。
俺の姿は光に包まれ、半袖半ズボンの上から騎士の鎧、そして剣と盾が出現した。
目の前の3人は不可思議な現象を目の当たりにして呆然としている。
「その女性を離しなよ」
俺の言葉に男は応じないが、明らかに動揺している。
「はあ? なんなんだよテメェは」
女性を掴む手を騎士の力で強化された手で握ると、男は悲鳴を上げた。
「いてててててて!」
「このコスプレ野郎!」
もう1人の男が俺の顔面を殴りつける。だが今の俺にそんな攻撃は通じない。
微動だにしない俺にただ事ではない雰囲気を感じ取ったのか、舌打ちをしながらここから立ち去ろうとする。
「おい待てよ! 俺を置いてくなよ!」
俺が掴んでいた手を離してやると、俺を睨みつけた後、こいつも不満そうにこの場を後にした。
「大丈夫でしたか?……この格好は気にしないでください」
「あ、ありがとうございます」
俺は女性を安心させようと声をかける。
(……この子、よく見ると……)
めちゃくちゃ可愛い……。
高校生くらいか? 下手なアイドルよりよっぽど美少女だぞ。
童顔だけど綺麗な顔だ。栗色の腰まで伸びる髪も素敵だと思う。
胸は大きすぎないが豊かさがはっきりわかる。思わずそこに目がいった後、慌てて目線を逸らす。
ノースリーブのワンピースがよく似合っていて、まるでお嬢様みたいだ。
「……あの……?」
おっとまずい、思わず見とれてしまった。変に思われただろうか。
「助かりました。あの人達に声をかけられて無理矢理連れていかれそうになって……」
どうやらタチの悪いナンパだったらしい。
こんなに可愛い子なら声をかけたくなる気持ちはわかるが、強引なのはいただけない。
「ありがとうございました。この辺りの人ですか?」
「いえ、俺は札幌からたまたま来ていて」
「そうなんですね……」
女性は何かを考え込んでいるようだ。今のやり取りに何かおかしなところがあっただろうか。
「役に立てたなら良かったです。それじゃあ」
そう言って俺もジョギングを再開し、コンビニを後にする。
どんどん遠ざかる俺の背中を女性がしばらく見送っていたことを、俺は知る由もなかった。




