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少年の心に棲む少女 表に出せぬ想い

「じゃあさ、リヴちゃん、俺に紹介してくれよ」


「え……」


 リヴがこいつと付き合う?そんなこと……。


「……あの二人は、そう長く日本にいないはずだから、難しいと思うぞ」


「マジ?どれくらいだ?」


「それは……」


 俺には答えられない。リヴが、いつまでこの世界にいてくれるかなんて。

 明日にでも、俺の前からいなくならないなんて保証は無いのだ。


「あんなに可愛い子と知り合うチャンスなんてそう無いってのに、惜しいな」


 そう言ってあいつは俺の前から離れて行った。


 リヴは女王になる人間。そもそもこの世界の住人ではない。

 それを思えば、あいつなんかがリヴと釣り合う訳がない。


 ……そうさ、考えなくても当たり前の話だ。

 俺があいつにリヴを紹介できなかったのは、それ以上でもそれ以下でもない。


 そのはずなのに、俺には言い訳をしてしまったかのような妙な後ろめたさが残った。


───


 太陽が頂点で輝いている。

 時刻は昼を過ぎ、遊んで体力を使った体が、エネルギーの補給を求めている。


 4人で海の家に向かい、それぞれが好きなものを注文した。


 大したクオリティではないはずだが、妙に美味い。

 空腹に加えて、みんなで海に来ているという状況が最大のスパイスとなっているのだろう。


「美味しいです」


 リヴがカレーを食べて喜んでいる。この海も彼女にとって良い思い出になりそうで良かった。


「焼きそばも食べようっと」


 近藤がカレーを食べてもまだ足りなかったのか、追加注文した。


「よく食べますね。やっぱり栄養が良いから乳がでかくなるですか?」


「ブフッ!」


 フィアの言葉で俺はすすっていたラーメンにむせてしまった。


「うーん、確かにあたしはよく食べるほうだと思うけど」


「普段何食べてるですか?」


「特別なことはないよ。強いて言うなら好き嫌いはしないように気をつけてるかな」


「野菜食べなくても大きくなるですかね?」


 フィアの追求は止まらない。


「鷹見くんが困ってるから、この話はやめよ?」


 俺の顔は真っ赤だ。


 そしてリヴは何を思っているのか、両手を自分の控えめな胸に当てて黙り込んでいる。


「心配しなくても2人とも大きくなるから大丈夫だよ」


(そういう会話は俺のいないところでしてくれ……)


 やっぱり女は苦手だ。そう思わずにいられなかった。


───


 日が沈み始めた。

 海は西の空に照らされ、顔を赤く染めている。


 リヴとフィアはまだ浅瀬で遊んでいる。


 蓮と千早は、砂浜に座り込み2人を見守っていた。


「若い奴は元気だな」


「あたしたちもまだ若いって」


 高校生なのにおじさんみたいなことを言う。そんな蓮を千早はおかしいと笑った。


「近藤は、好きな人はいるのか?」


 唐突な蓮の質問は千早を驚かせた。

 彼からそんな言葉が出てくるなんて、意外だったから。


「まだ、男の人を好きになるってよくわからないかな」


「そうか」


「鷹見くんは?」


「俺は……それどころじゃないかな」


 そう言って、蓮はどこか遠くを見つめている。


(好きな人がいない、とは言わないんだね)


 まさか、あたしのことを意識してる?


 ……なんて、そんなわけないよね。


(君の心に誰かが住んでいるとしたら、それはやっぱり──)


「青春だねー」


「?」


 蓮の心は成長している。そのことがまるで自分のことのように嬉しい。


 同じ歳なのに、千早は蓮を弟のように見守りたいと思った。


───


「……まだフィアは戻ってこないのか」


「そろそろ20分は経ちますね」


 そろそろ帰ろうと支度を始めた頃、フィアは青い顔をしてトイレに駆け込んだ。

 どうやら思った以上に重症らしい。


「ったく、調子に乗ってかき氷3杯も食うからだ」


 蓮の言葉に二人は苦笑いするしかない。


 結局フィアがげっそりとした顔で戻ってきたのはさらに10分後なのだった。

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