大地の呪文 爆発の呪文 盾となって仲間を守れ
全く、気が付かなかった。
楽しくて、浮かれていて、警戒を怠った。
蓮さんが守ってくれなかったら、今頃僕は脱落していた。
──なんて浅はかなんだ。
リヴが自分を責めている間に、蓮達は敵に誘導され、遊園地エリアの外側へと移動した。
すぐ近くにジェットコースターのレーンがあり、上空では空気を切ってコースターが稼働している。
「ここなら人はほとんど来ないし、少しくらい騒がしくしても問題ない」
緋色の髪の王女はそう言って不敵に笑った。
蓮達は互いに距離を取って対峙する。
「自己紹介をしよう。あたしはエクスタイン国の王女ラーヤ。こっちは……」
「……グランベルク国のソニア……」
小さい方がリーダー格か。
もう片方は図体が大きい割に声も表情も暗く、根暗な印象を受ける。
だがどちらも油断はできない。
「クリュスタの王女、リヴです」
「エクレール国のフィアですぅ」
「まさかそっちも王女が二人に騎士が三人とはね。だがちょうどいいじゃないか」
相手の姿がドレスと騎士の姿に変わる。
ラーヤは火の煌めきのような朱いドレス。二人の男も同じく朱色の鎧を身に纏う。
ソニアは深いブラウンのドレスに身を包み、残る一人の男も同じ色の鎧姿となった。
「じゃあ始めようか。どちらが勝っても恨みっこなしだ!」
相手の騎士は三人とも盾を持っている。
俺達よりも経験があるのか? 厄介だ。
俺が様子を伺っていると、その横から飛び出していく人影があった。
「やああっ!」
先陣を切ったのは難波さんだった。剣を振り下ろすが、盾で防がれてしまう。
だが彼は後退せず、身のこなしで相手の攻撃も軽やかに回避する。
続けて、近藤も前に出た。これも防がれてしまうが、臆さず攻撃を続ける。
二人には盾が無いから、攻めるしかないのだ。
(俺も負けてられない!)
蓮は残った一人と相対する。自然と3対3の構図となった。
攻撃を行うことで魔力が溜まるのは検証済み。
人数の利が無い以上、呪文の使いどきで勝負が決まる!
(ふむ……あの二人は盾を持たないけど動きは中々だ)
ラーヤは後方から冷静に戦況を見つめていた。
どんな相手だろうと決して侮りはしない。それが今日までの彼女を支えてきたのだ。
(だけどそれで、あたしの呪文を防ぎきれるのかな?)
「いくよ、フィア!」
「はいです!」
息を合わせる二人。同時に杖を構える。
「フィズラス!」
リヴの杖から三つの氷柱が放たれ、敵に向かって進んでいく。
「初級呪文か。その程度で──」
「ミルナス!」
続けてフィアの杖から雷光が走る。
かつてリジーを相手に放った時よりもさらに磨きがかかった、二方向からの時間差攻撃。
タイミングをしくじれば、盾を持っていても防ぎきれはしない!
「ティラドジス!」
ソニアが呪文を唱えると、騎士の前の地面が隆起し、壁となる。
そしてそれはこちらの呪文を全て受け止めてしまった。
「よくやったソニア。中々危なかったね」
ラーヤはそう言いながらも、余裕の表情を崩さない。
今のを防がれてしまうとは、やはり敵は戦い慣れている。
だが近藤と難波は、盾の不利をものともせず巧みに立ち回っている。
このまま攻め続ければ勝機はある。
「フィア、魔力が貯まったら僕も前に出る。君はこのまま後方で援護してくれ」
「わかったです」
リヴも冷静に戦況を見据え、自分のやるべき事を冷静に捉えている。
敵の防御呪文の前では、フィズラスもミルナスも効果は薄い。
だがソルブレイドなら直接相手を狙える。
自分が前に出れば4対3だ。もし相手の王女も前に出たら、その時はミルナスで直接宝玉を狙えばいい。
そして蓮もまた、相手の不気味な気配に警戒を続けていた。
(まだ、何もしてこないのか?)
敵の王女、ラーヤはいまだに呪文を放ってこない。
機を伺っているだけなのか、それとも──
しばらく膠着が続いた後、ついに敵が動きを見せた。
ラーヤの杖先がこちらに向けられる。呪文を放つ気だ。
(来る!)
「ボルカノグ!」
放たれたのは、直径50cmはありそうな赤く輝く巨大な球体。
それが真っ直ぐにこちらへと向かってくる。
(攻撃呪文? 俺が防がないと!)
蓮は千早と難波を守るために前に出る。呪文の光が彼を眩しく照らす。
構えた盾が、ボルカノグと接した瞬間──
大きな爆発音が鳴り響いた。
空気が揺れたのを、その場にいた全員が感じた。
次の瞬間、蓮の体は大きく宙を舞う。
そしてそのまま、リヴとフィアのさらなる後方へと吹き飛んでいった。
「……蓮さん!?」
リヴが駆け寄る。
今の爆発によるものか、それとも頭を打ったのか、蓮は顔が染まる程の血を頭部から流していた。
目は虚で、体はぴくりとも動かない。
盾は粉々に砕け、もはや使い物にはならない。それが今の呪文の威力を表していた。
「蓮さーーん!」
何度も声をかけるが、やはり反応はない。
息はしている。だがこの戦闘中にはもう立ち上がれないだろう。




