王女たちとのドライブ そして遊園地へ
難波さんの運転で、俺達は札幌を後にしていた。
助手席には近藤。俺たちは3人で後部座席に乗せてもらう。
スピーカーから流れる歌を聴いて、これが難波さんの好みなんだなと思った。
「遊園地、遊園地、楽しみですぅ」
こいつすっかり遊ぶ気でいやがる。
リヴもフィアほどではないにしろ、浮き足立っているのがわかる。
王族である彼女らにとっては、遊びに行くというのは滅多にない機会だったのかも知れない。
まあ、戦闘になる可能性の方が低いだろうしな。あまり気負わず楽しむのが正解なんだろう。
「難波、あとどれくらいで着きますか?」
「まだ1時間以上はかかるかな」
「えー、遅いですぅ。もっと飛ばせですぅ」
フィアは車内で退屈そうにしている。
一方リヴは、移り変わる景色を楽しんでいるようだ。
「蓮さんは留寿都に行ったことありますか?」
「……ああ、昔は何度かな」
昔家族で遊びに行ったことを思い出す。
リヴは何かを察したのか、それ以上聞いてこなかった。
1時間ほど走ったところで、中山峠というところに着いた。
「少し休憩していこうか」
難波さんがみんなに声をかける。
そしてある道の駅に車を停める。
まだ9時を過ぎたあたりなのに、駐車場には多くの車が停まっていた。
トイレを済ませた後、適当に売店を覗く。
リヴとフィアは目を輝かせながら商品を眺めている。
「欲しいものがあったら買ってもいいぞ」
「……いえ、大丈夫ですよ」
リヴは遠慮するが、フィアはこれ幸いと商品を手に取る。
「これと、これと……これもいいですねぇ」
「……1,000円までだぞ」
制限を設けないと好き放題されそうだ。
結局白い恋人をカゴに入れた。おい、これ北海道ならどこでも買えるぞ……。
リヴはシマエナガのぬいぐるみを物欲しそうに眺めている。
北海道に生息している、雪の妖精とも呼ばれる白い小鳥だ。
「それ、欲しいのか?」
「いえ、あの……」
これくらいなら一つ買ってもいいだろう。
遠慮がちなリヴに構わずカゴにいれ、会計を済ませて彼女に渡した。
「ありがとうございます。蓮さん」
リヴはぬいぐるみをギュッと抱きしめた。
とても嬉しそうに笑うのでこっちまで嬉しくなる。
その後、展望台で軽く羊蹄山を眺めて、みんなでソフトクリームを買って後にした。
「こういうところ来ると、食べたくなるよねぇ」
近藤の言葉にみんなが頷いた。
さらに車を走らせること1時間──
「見えてきたぞ」
難波さんの声に、皆が顔を上げた。
山間の緑を背に、ルスツリゾートの遊具が遠くからでも確認できた。
「大きい。蓮さんあれ何ですか?」
「あれは観覧車だな。あれに乗ると高いところから外を眺められるんだ」
「早く行くですぅ」
俺達を乗せた車は建ち並ぶホテルを通り抜け、遊園地の駐車場を……素通りし、その場を後にする。
「ちょっと、どこ行くですか!」
「この先に町がある。そこで王女様がいないか探してくれないかい?」
難波さんはあくまで他の王女に会いたいらしい。
「えー、そんなのいいから早く遊園地に行きたいですぅ」
「町中を一通り走ったらまた戻ってくるから。頼むよ」
フィアの不満をよそに車は走り続ける。
それほど時間をかけずに住宅が並ぶエリアへと辿り着いた。
留寿都村は小さい。
一通りドライブしてもすぐ終わるし、もし王女が潜んでいるならすぐわかるかも知れない。
「どうだい、いるかい?」
「……特に気配は感じませんね」
「王女なんていないです!早く遊園地に戻れですぅ」
難波さんは苦笑いしながら運転を続ける。
フィアが真剣に探しているかは怪しいが、リヴが言うなら間違いなはいだろう。
結局30分ほど走ったところで、諦めて遊園地へと戻ることになった。
駐車場はかなり混んでいる。それでも空きスペースを見つけられた。
「フィア、ドアを開ける時は隣の車に気をつけろよ」
「言われなくてもわかってるですぅ」
車から降りた皆はそれぞれ背中を伸ばした。
「着いたぁ」
入場ゲートをで料金を払い、ついに遊園地にたどり着く。
「早く行くですよ!」
フィアは我先にと園内を駆けていく。
「リヴちゃん、ここに別の王女はいないかい?」
「……いないと思います」
「そうか……」
難波さんは残念そうにしている。
「難波さん、今日は遊園地を楽しみましょう?」
「そうだね……」
近藤に声をかけられ、ようやく王女探しを諦めたようだ。
「フィアちゃん、待って」
近藤が先に行くフィアを追いかけていく。
「しょうがないやつだな……俺達も行くか……リヴ?」
「蓮さん、あれはなんですか?」
リヴの視線の先には、メリーゴーランドがゆったりと回転していた。
馬をはじめとして様々なオブジェが上下に動いている。
「あれは、メリーゴーランドだな。乗り物に乗って回る遊具だ。乗ってみるか?」
「はい、乗ってみたいです」
俺達は一旦フィア達と合流した。
「リヴがメリーゴーランドに乗りたいって言ってさ。フィア、お前は何に乗りたいんだ?」
「フィアはジェットコースターで決まりです!全部制覇してやるです!」
「近藤、俺とリヴは別行動でいいか?」
「いいよー。フィアちゃんは私達が見るから、そっちは2人で楽しんできなよ」
「ありがとう。じゃあ行くかリヴ」
「はいっ」
フィアのことを近藤と難波さんに任せ、俺たちはメリーゴーランドへと向かった。
そう言えばフィアのやつ、身長制限は大丈夫なんだろうか?




