表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/40

新たなる仲間とともに 戦いを求めて遠征へ

次の日の稽古を終えた後、今日は難波さんから近藤に話しかけてきた。


「千早ちゃん……昨日のことなんだけど……」


「はい」


「俺でよかったら……協力させてもらうよ」


「本当ですか?」


「ああ」


 その場にいた俺も、口を挟む。


「難波さん、俺が言うのも何ですが、危険が伴いますよ」


 難波さんの決意に水を刺すようで悪いが、そこは知っておいてもらわなくては。


「そうか……でも俺の実力を見込んで誘ってきたんだろ?」


「そうですね。できるだけ強い人を集めたいので」


「じゃあ、やるよ」


 そこまで言ってくれるのなら俺から言う事は無い。

 早速リヴ達にも伝えることにしよう。


───


 その日の夕方もまた、俺の家に全員が集まった。


「難波さん、よろしくお願いします」


「ああ、力になって見せるよ」


 リヴと握手を交わしたあと、指輪によって契約が行われた。


「念じれば、騎士としての装備を身に纏うことができます」


 難波さんが目を瞑ると、俺と同じ白と水色の鎧姿へと変わった。

 盾は存在しない。同じ王女との契約でも、経験がなければ装備は初期状態のようだ。


「おお……」


 難波さんは自分の姿が変わったことに興奮しているようだ。


「すごいなあ。本当に念じるだけで騎士の姿になっちゃったよ!」


 まずはその場で自分の姿をくまなく見渡す。

 次は洗面所に行って鏡で正面から自分の姿を見る。

 その場で一回転してみたり、自分の姿を堪能しているようだ。


「本当にこんなことが起こるなんて……」


「いつも稽古が終わった後、みんなで模擬戦をしてるんです。今日から難波さんも参加してもらえますか」


 近藤が説明を加えると、難波さんは振り返って頷いた。


「わかった。早速やろう」


 こうして難波さんは俺達の仲間となった。


 5人で行われた初の模擬戦。

 俺と難波さんは同じリヴの騎士だが、あくまで模擬戦なので互いに剣を交え合った。

 盾を持っているのは俺だけなので、難波さんに慣れてもらう狙いもある。


 難波さんは近藤と互角なだけあって、剣だけでは俺は相手にならない。

 技のキレは近藤が上かも知れないが、剣の重さは難波さんが上だ。


「はあっ、はあっ……」


「鷹見くん交代。少し休んでなよ」


 近藤に言われるまま俺は下がり、2人が剣を交える様子を黙って見る。


 ……強い。俺の剣なんか比較にならない。

 この短期間で頼りになる騎士が2人も増えたのだ。

 これからの戦いは俺の出る幕なんて無いのではないだろうか。


「難波もなかなかやるですぅ。お前も足を引っ張らないようにせいぜい気をつけるです」


「ああ……そうだな……」


 かつて見た悪夢を思い出す。リヴとフィアに必要とされなくなる夢。

 実力が足りなければ、それも仕方が無いこと。


「鷹見くん、焦らないで。この中で1番戦ってきた経験があるのは鷹見くんなんだよ?」


 確かにそうだが、俺の経験なんかがどれほど役に立つと言うのだろうか。

 だが焦ってもいいことがないことは既に学習済みだ。


 俺には俺のできることをやる。

 盾を持っているのは俺だけなのだ。


 剣で力になれなくとも、俺が前に出てみんなを守る。

 そんな時がきっとあるはずだ。


「うわぁ!すごいなあ!」


 難波さんはリヴ達の呪文を見てはしゃいでいる。

 少し態度が軽いことが気になった。だがそれも強さゆえの余裕だろう。

 実戦になればもっと真剣になるに決まっている。



 難波さんが加わってからしばらくが経ったが、平穏な時間が続いていた。

 二人に鍛え上げられ、俺の剣の実力も多少は上がったかも知れない。

 まだ、大きな差がある事には変わりはないが。


「まだ他の王女様とは会えないのかい?」


 難波さんの質問に、俺は答えられない。

 王女達はこの地球上に散らばって存在しているという。

 この札幌にばかり集中しているわけではないのだ。


 数人の王女を撃破した今、もしかしたらもうこの辺にはいないんじゃないか?

 そういえば、この前戦ったやつも小樽から来たって言ってたな。


「リヴ、最近他の王女の気配は感じないのか?」


「ここしばらくはないですね」


 やっぱりもうこの近くにはいないのかも知れない。


「じゃあ俺が車を出すから、遠征してみようか」


 難波さんが提案する。わざわざこちらから他の王女を探しに行くのか。

 もし戦闘になって、負けたらその時はリヴとはお別れなのだ。

 そう考えると乗り気にはなれない。


 ──でも。


 俺達が戦いを避けている間に、他の王女は経験を積み強力な呪文を身につけてしまうかも知れない。

 もしそんな相手と当たったら、その時は、為す術なく蹂躙されてしまう可能性がある。


 生き残るために、きっと俺達は戦い続けなければならないんだ。


「リヴ、どうする?」


「……そうですね。その方がいいのかも知れません」


「よし決まりだ。場所は……旭川にしようか。次の週末に出発しよう」


「旭川?そこに遊園地はあるですか?」


 難波さんの提案にフィアが質問する。こいつ遊びに行く気満々だな。


「旭川に遊園地は無いなあ。動物園ならあるんだけど」


 そこにある旭山動物園は、テレビでも取り上げられる知名度の高い動物園だ。


「えー、遊園地に行きたいです。出かけるならそこに連れてけです」


「フィア、遊園地って何?」


「遊園地はめちゃくちゃ大きな公園みたいなもんです。面白そうな遊具がたくさんあるんです!」


 リヴ達の世界に遊園地は無いのか。

 多分フィアの知識はテレビからなんだろうな。


「うーん、ここからだと岩見沢か、留寿都(ルスツ)か」


「ルスツ?テレビで見たことあるです。そこに連れてけです!」


「うーん、留寿都かぁ……小さな村だからなあ」


 留寿都は札幌から車で2時間くらいのリゾート地。

 観光地としては多く人が集まるが、居住地としての規模は決して大きくない。

 王女が存在する可能性は高いとは言えないだろう。


「でも、もしいるなら探しやすいんじゃないですか?」


「……それじゃあ留寿都に行ってみようか」


 難波さんは渋々と言った様子だが予定は決まった。

 週末に出かけると決まって、フィアも近藤も楽しそうだ。

 リヴも遊園地に興味を持ったようだ。ワクワクした様子が滲み出ている。


 こいつらは王女に会うよりも遊びに行くことで頭がいっぱいだな。

 俺は、戦闘になるかもと思うとそんな気分になれない。


 俺って、人一倍小心者なのかも知れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ