新たなる仲間を探せ 道場での勧誘作戦
新しい男性キャラが登場します。NTRや主人公を下げる展開にはならないので安心してお読みください。
体調が回復してから数日後。
俺は学校帰りには道場で稽古。そしてその後にはリヴ、フィア、近藤と共に模擬戦を行うようになった。
俺にとって近藤の動きはとても良い実戦練習になる。
そして、模擬戦を通じて分かったことがある。
リヴ達の呪文を唱える頻度についてだ。
今までは時間の経過と共に杖に魔力が貯まるくらいにしか考えていなかった。
しかし、どうやら騎士の攻撃に合わせて魔力が貯まる速度が早まっているようだ。
騎士が攻撃を続けるほど、王女が呪文を唱えるチャンスも増える。
防戦一方では、呪文に頼れない。
戦況を変えたければ、リスクを負っても攻撃しなければならないのだ。
リジー戦でリヴ達が呪文を唱えられなくなった謎が解けた。
あの時俺は守勢にまわっていたし、そもそもフィアには自分の騎士がいなかった。
だからあの時の2人、特にフィアは呪文を唱えることができなかったのだ。
コソコソと隠れて、呪文だけで相手を攻めることは出来ないってことだ。
現在リヴの呪文は2つ。3つの氷柱を放つフィズラスと、冷気の剣で相手を凍てつかせるソルブレイド。
フィズラスよりソルブレイドの方が必要な魔力が多いようだ。
つまり強力な呪文に頼りたければ、騎士は攻め続けなければならないのだ。
今後も戦いを乗り越えれば、より強力な呪文が身についていくのだろうか。
「フィアも別の呪文が使えるようになりてーです」
「どんな呪文が欲しいの?」
「エターナルフォースライトニング!相手は死ぬですぅ」
「なんだその雑な呪文は」
模擬戦を繰り返したが、フィアに新たな呪文が身につく様子はない。
やっぱりこいつ才能無いんじゃないか?
「私も鷹見くんみたいに盾が使えるようになるのかな」
同じく近藤にも盾が現れることはない。経験値みたいな単純な話では無いのだろうか?
俺達は曲がりなりにも複数の王女を撃破してきた。その違いか?
「まあ私は盾があってもあまり合わない気もするけど。変な癖がついちゃうのも困るし」
「近藤はそれでいいのかもな」
近藤には剣だけで相手を制圧できる実力がある。
俺にはそんなもんないから、上手く盾の使い方を覚えていくしかない。
「近藤の道場に、他に協力してくれそうな人いないか?」
リヴは指輪をまだ一つ持っている。これからの戦い、戦力の補強は急務だ。
「うーん、強い人はいるけど、社会人だと時間を取らせるのも大変だよね」
戦いはいつ起こるかわからない。
それに対応できるかどうかも重要な条件の1つだ。
「難波さんがいいかも。大学生なんだけど、強くて優しいし」
難波冬馬。市内の大学に通う20歳の男性らしい。
大学生はなんとなく高校生よりも自由なイメージがある。良いかもしれない。
「近藤より強いのか?」
「五分五分って感じかな」
難波という人もかなりの実力者のようだ。
それにしても男の大学生と互角とは、近藤の凄さも改めて感嘆するしかない。
「リヴ、どうだ?」
「僕は良いと思います」
そう言いながら乗り気で無いのが伝わってくる。
どうしても戦いに巻き込むことに引け目があるのだろう。
「……リヴ、お前が考えていることはわかる。でも戦い抜くつもりなら避けて通れない話だぞ」
彼女は真剣な顔をして俺の言葉に耳を傾ける。
「厳しい話になるけど、騎士を新しく増やすというのはお前の責任の下でされなきゃいけないんだ。その覚悟がなければ、この先勝ち残れない」
「……はい、分かってます」
リヴは静かに答えた。
その声には、迷いを押し殺した決意がこもっている。
こうして俺達は、難波という人に会うことになった。
───
道場で竹刀を打ち合う乾いた音が響く。
今まさに近藤と難波さんの試合が行われている。
彼は180cmを超える体躯。近藤よりも迫力がある。
それでいて繊細だ。力任せではない確かな技術がある。
「胴ぉぉぉ!」
入った、一本。この勝負は難波さんの勝ちだ。
「はあっ、はあっ……ありがとうございました」
近藤が汗を流し息を切らしている。
あんなに消耗している近藤を見ることはなかなか無い。
「千早ちゃん、お疲れ。またよろしく」
難波さんが優しく微笑みかける。
余裕のある大人の男、という印象を持った。
⸻
「難波さん、この後時間ありますか?」
稽古が終わり、近藤が難波さんに話しかける。
「時間?大丈夫だけど、何か用事かい?」
「相談したいことがありまして……良かったらこの後鷹見君の家に来て欲しいんです」
「鷹見君?ああ、最近入った子だね」
「難波さん、お願いします」
軽く頭を下げた。
「構わないけど、何の話かな?」
「ここではちょっと言いづらくて……家で話をさせてください」
難波さんはそういうことなら……と、それ以上聞かずについて来てくれた。
難波さんの車に3人で乗り合わせ、俺の家に向かう。
「難波さんはファンタジーはお好きですか?」
「漫画とかアニメの話?実は俺結構オタクでさー」
難波さんは今流行っている作品をいくつか追っている、と話した。
そういう意味ではもちろんないのだが、交流になればと、俺達三人は会話を続けた。
近藤と俺の家は歩いていける距離だ。車ならあっという間に着く。
そして俺は難波さんを家に招き入れた。中ではリヴとフィアが待っている。
「難波さん初めまして」
「お前が難波ですか。まあ入って茶でも飲めです」
難波さんは固まっている。
俺の家に少女が2人いるとは予想していなかっただろう。
明かな日本人なら妹で通るが、そうではないのだから俺との関係を想像しているに違いない。
俺たちは居間でテーブルを囲む。
リヴが一人一人にお茶を配る。
「難波さんに協力してもらいたいことがあります。もちろん嫌なら断っても構いません。ただ、ここでの話は内密にして欲しいんです」
リヴが話を進める。
「協力って、何かな……?」
ただ事ではないという雰囲気を感じ取っているのだろう。
難波さんは神妙な面持ちで話を聞いている。
「実は僕達は、ここではない異世界から来たんです」
難波さんは目を丸くしている。驚いているというより、理解が追いつかないのだろう。
「フィア達は次世代の女王なのです。その試練として、こっちの世界に来ているのですぅ」
「……そういう設定の話?」
目の前の少女達は何かを演じているのか。
そう思わなければまるで理解できない話である。
「俺にもその話に参加しろって事なのかな?」
お前ら頭がおかしいのか。そう言わずに話に付き合おうとしてくれる難波さんは確かに優しい人なのだろう。
俺達は互いに目配せをして頷きあう。
そして姿を変えた。
光に包まれリヴとフィアはドレス姿に、俺と近藤は騎士の姿に変わった。
難波さんは驚いて声も出ないと言った様子だ。俺もそうだった。近藤もそうだったに違いない。
「難波さん、この子達が異世界から来た王女様というのは本当です。私と鷹見くんはこの子達に協力してるんです」
俺達は、王女が騎士を集めていること。これまでの戦いの事、そして難波さんにも騎士になって欲しいことを伝えた。
難波さんは、ただ黙って話を聞いていた。
「返事は、急がなくて大丈夫です」
そう切り上げると、難波さんは帰って行った。
「難波さん協力してくれるかな?」
「どうだろうな。今でも聞いた話が現実か理解できてないんじゃないか」
下手をすれば、気味が悪いと今後距離を取られてもおかしくない話だ。
「あいつフィア達のこと周りに広めないですか?」
「話したとしても誰も信じないだろ」
リヴの表情は暗い。
やはり戦いに巻き込む責任を感じている。
だがもう少し図太くならないと騎士なんて集まらないだろう。
果たして彼は新しい戦力となってくれるのか。その答えは後日わかることになる。




