分の悪い戦い それでも少年は剣を取る
「……勝負は受け入れます。ただ、日は改めませんか」
リヴが交渉を試みる。
「ダメですわ。こちらにはその申し出を受け入れる理由はありませんの。今すぐです」
にべもなく、断られた。覚悟を決めるしかない。
「わかった。近くに河川敷がある。そこでやろう。少しだけ準備の時間をくれ」
俺はリヴと共に一旦居間へ引っ込んだ。
「蓮さん、ダメです。あなたは今戦える状態じゃありません!」
「だけど相手は引かないだろ。やるしかない」
俺はポケットからスマホを取り出し、通話画面を開く。
「……フィアか?お前今どこにいる?……戦いを挑まれた。相手は騎士が2人だ。……そうだ。河川敷でやる。急いで来てくれ」
これでこっちは騎士が1人に王女が2人。変則的だが、数は同じだ。
「……行こう。大丈夫だ。勝てる。」
俺はリヴに、そして自分にそう言い聞かせた。
───
俺達は河川敷に着いたが、まだフィアはいない。
なんとか時間を稼がないと。
「……あんた達、なかなか戦い慣れているんじゃないか?」
騎士のうち1人は盾を持っている。
呪文も、いくつ持っているのか……。
「それほどでもありませんわ」
「ところで、あんたたちはどこから来たんだ」
「私達は小樽ということころから来ましたの」
わざわざ別の市から来たのか。積極的に戦闘を仕掛けているのだろう。厄介な相手になりそうだ。
「そうか、そういえば……」
「もう、おしゃべりは良いでしょう?参らせてもらいますわ」
相手は戦闘体制に入る。これ以上言葉で時間を稼ぐのは無理か。
「お行きなさい!」
2人の騎士が前に出る。盾を持った騎士が仕掛けてきた。
相手の剣を盾で受け止める。
いつもより体が重い。こっちも剣を振るうが、同じく盾に防がれてしまう。
その間にもう1人の騎士がリヴの元へと近づいていく。
「くっ!」
「お前の相手は、俺だよ!」
リヴの元へ駆けつけようとするも、相手がそれをさせない。
俺とリヴ、それぞれが1人の騎士と相対する形となってしまった。
「お嬢ちゃん、俺の相手をしてもらおうか」
「……!」
相手は積極的に剣を振るう。リヴはそれを杖で受け止めなんとかかわす。
王女が直接騎士と対峙するのはハイリスクだ。だが人数の不利でそうせざるを得ない。
(なんとかこいつを倒さないと……!)
だが盾を持った騎士同士ではお互いに好機を見つけられない。
こっちが膠着状態に陥っている間、リヴは騎士によって追い詰められていく。
(フィズラスじゃダメだ。この状態をなんとかするには……)
「ソルブレイド!」
リヴの杖の先から、冷気の剣が伸びる。
それが相手の剣と重なった瞬間、騎士の体は凍りついていく。
「うおおっ!?」
「やった!」
相手の騎士を1人封じ込めた。これならなんとかなるかもしれない。
「アルマエル!」
イザベラが呪文を唱えると、凍りついた騎士に大きな水つぶてが直撃した。
たちまち氷は溶けていき、再び敵は動き出した!
「ふう、危ないところだったぜ」
(今のは……回復呪文?)
ソルブレイドが破られた。敵はもう迂闊に踏み込んではこない。
やがて冷気の剣は消え、リヴのそれはただの杖に戻ってしまった。
それを見て敵は攻撃を激しくする。このままではまずい……!
「アルマス!」
イザベラの杖から、バスケットボール程の水の塊が3つ放たれる。盾の防御は遅れ一つは俺に直撃し、衝撃で後方に大きく吹き飛ばされてしまった。
「かはっ……」
俺のマークから外れた騎士も、リヴへと向かっていく。
1対2。まずい……!
「リヴーっ!」
まさに絶体絶命。なすすべ無くやられてしまうのか。
そう思った次の瞬間だった。
「ミルナス!」
雷光が戦場を走る。それは盾を持たない騎士に直撃し動きを止めた。
「ぐあっ!?」
「やあっ!」
リヴの杖がその隙に敵の左胸を打つ。
宝玉は砕け、力を失った騎士はその場に崩れ落ちる。
「やった……」
「なんですって!?」
イザベラも、動揺を隠せない。
「フィア、助けに来てくれたか」
雷が放たれた方向を見るとそこにいたのはやはりフィア。
そしてもう1人女性の姿があった。その人物は──
「近藤!?」
「お待たせ鷹見君。あとは私たちに任せて」
凛とした笑顔が、俺に向けられる。
「いくですよ千早」
「オッケー」
千早の姿は、黄色と白の軽鎧姿へ、騎士へと変わった。
両手で剣を構える。道場で見せる本気の姿がそこにはあった。




