美少女3人のお泊まり会
「ごちそうさま」
晩飯が終わった。食欲が出てきたので蓮は千早の作った普通の食事を口にした。
彼女の手料理なんて初めてだったが、リヴのそれより彼の好みだった。日本人好みとでもいうべきか。
「僕も手伝わせてください」
食器を片付ける千早にリヴがついていく。
「とても美味しかったです。近藤さんは料理が上手ですね」
「ありがとうリヴちゃん。あなたもなかなかのものでしょ?」
冷蔵庫の作り置きを思い浮かべて言う。それは異国風のようなレシピばかりであった。彼女の国の料理なのだろうか?
「リヴちゃんはどこの国の出身?」
「えっと……アメリカです」
リヴはこの世界に来てよく耳にする国の名前を口にした。
「リヴちゃんはいつから日本にいるの?」
「……今年からです」
「随分と日本語が上手なのね」
彼女から見て、リヴだけでなくフィアのそれも日本人と遜色ないレベルだ。
ある意味不自然なくらいだと千早は思った。
「日本に来たのはお父さんのお仕事の関係かな?」
「ええ、そうなんです」
「お仕事は何を?」
「……技術職で、日本に呼ばれたんです」
少し、答えに窮したように見えたのが気になった。
「鷹見くんとは仲が良いんだね」
「よくさせてもらっています」
「彼、優しいでしょ」
「ええ、とっても」
リヴの頬が嬉しそうに緩む。
「もしかして、お付き合いをしてるのかな」
「……いえ、そういう関係というわけでは」
少し慌てたように否定する。嫌がっているわけではなく恥ずかしそうに。
(でもこれはやっぱり……リヴちゃんは鷹見くんのことを気に入っているのかな)
そう考えたらあらゆる点が自然に繋がる。
不良に絡まれてるところを助けるなんて、彼もやるものだと千早は思った。
「私とも仲良くしてね、リヴちゃん」
「ありがとうございます」
彼女が笑った。
(うーん、可愛すぎる)
───
蓮は部屋に引っ込んでいる。
体調が悪いのもあるが、それ以上に女3人に囲まれるのが居心地が悪いからだ。
そんなことも知らず、彼女達は居間で雑談を続ける。
「お前はあいつとどういう関係なんですか?」
「幼馴染だよ。小学生の時から知ってるの」
彼女はリヴの知らない蓮のことよく知っている。それを聞いてみたい。
しかし隣の部屋に彼がいる以上、ずけずけと聞き出すのは気が引けた。
「あいつ昔から暗かったですか?」
だがフィアには遠慮がない。しかし彼女に任せておけば昔の蓮のことを聞き出せそうだ。
(ごめんなさい蓮さん……)
「そんなことないよ。むしろ明るくて、クラスの中心って感じだった。運動も勉強も、なんでもできたしね」
「あいつが?想像できないですぅ」
千早の口から語られる蓮の姿。明るい子供だったという過去。
リヴから見ても、彼が何かを抱えているは明らかだ。
(蓮さんを変えてしまったのは時間?それとも……)
「ハンドボールなんかすごくてね。全国クラスだったんだから。私、鷹見くんはプロになるのかもって思ってたもの」
ハンドボール。この世界に存在しているスポーツ。
(話を聞くに、やっぱり蓮さんはすごい人なんだ)
「でも今はやってないですよね。少年は成長して身の程を知ったのです。上には上がいると」
「うーん」
千早はハンドボールをやめてしまった経緯も知っている様子だ。だが言い淀んでいる。
言いづらい事情があるのは明らかだ。
「でも最近は昔の鷹見くんが帰ってきたみたい。学校でも明るくなったんだから」
(鷹見くんを変えたのは……きっと)
千早はリヴの顔を見た。
(強くなりたいって言ってたもんね。こんなに可愛い子がいたらそりゃ変わるよ。鷹見くん、リヴちゃん、私応援するから、頑張って!)
近藤千早は、恋愛話が大好きなのであった。
「あいつら……好き放題しゃべりやがって」
そして隣の部屋では、蓮が自分のことが話題になっていることをとても気恥ずかしく思っているのだった。
自分の体が熱いのは、おそらく病気のせいではない……彼はただ耐えるしかなかった。
───
熱に合わせて軽く入浴を済ませた後のこと。
「じゃあ、お風呂場借りるね」
「ああ……」
近藤が、脱衣所に入って行った。
ドアの向こうから、布が擦れる音が聞こえてくるような気がする。
同級生の女子が、自分の家の中で裸体を晒しているのだ。
自分の前で裸になるわけじゃないのに、どうにも落ち着かない気分にさせられる。
リヴとフィアの入浴には慣れたが、これからしばらく、ここに近藤が入ったという事を意識させられてしまいそうだ。
「お前の考えていることを当ててやるです。スケベな事を考えてるですね」
「言いがかりはやめろ」
フィアの言葉は図星だ。だが認めるわけにはいかないのでキッパリと否定した。
「……」
何やらリヴから見られている気がする。
彼女からもスケベな奴だと思われているのだろうか。
フィアはともかく、リヴにそう思われたくはない……。
しかし何も言われていないのにこちらから何か言うのも言い訳がましく、何も気にしていない振りをするしかなかった。
そして30分後。
「お風呂いただいたよ。ありがとう」
「ああ……」
いつものポニーテールはほどかれ、長い黒髪がストレートに腰まで伸びている。
パジャマ姿の女子高生。
しかもリヴのような完璧に近い美しさではないが、目鼻立ちのしっかりとした美少女である。
いつもの制服姿よりもさらに胸の膨らみが柔らかそうだ。
Eか、Fか、はっきりとはわからないが近藤のそれは大きい。
思わず目が釘付けになりそうになるが、スケベだと思われたくないので、意識的に目を逸らす。
「もう遅いです。リヴ、今日は一緒に入りましょう」
「そうだね」
リヴとフィアは2人で浴室へと向かっていった。
「いいな。私もリヴちゃんたちと一緒にお風呂入りたかった」
「そうか……」
そして近藤と2人きり。何を話せばいいのかわからない。
「……俺は、部屋で休むよ。家のものは好きに使ってくれ」
「うん、ありがとう」
「おやすみ」
近藤には2階の父の書斎を寝室として貸してある。
俺は逃げるように自分の部屋へと避難した。
⸻
「じゃあ、鷹見くん無理しないでね。行ってきます」
「ああ……世話になったな」
次の日の朝、近藤は学校へと向かっていった。
俺の体温は37.1℃。今日も休めば明日には回復しているだろう。
「蓮さん、今日も1日ゆっくりしましょうね」
「そうさせてもらうよ」
この日俺は、普段見ない平日のテレビなんかを見ながらぼんやりと過ごした。
気がつけば、あっという間に夕方。
「36.7℃。平熱だな」
まだ体調は万全とは言えないが、だいぶ楽にはなった。
「ところで、フィアはまだ帰ってこないのか」
「ええ」
「珍しいな、あいつが1人で出かけるなんて」
15時を過ぎる頃、行き先も告げずに出掛けていった。
まあ晩飯までには帰ってくるだろう。
ピンポーン。
そんなことを考えているとインターホンが鳴る。
(帰ってきたか?別に鳴らさなくても良いのに)
「……」
だがリヴの様子がおかしい。まさか。
こちらが開けずとも、向こうから扉が開かれた。
「はじめまして。私はイザベラ・ルヴァリエ。用はわかっているでしょう?あなたにクイーンズ・クレストを申し込みにきましたわ」
縦ロールの金髪に、フリルがふんだんに使われた白いワンピースの美少女。
その背後に、屈強そうな二人の男が並んでいる。
王女と、2人の騎士。
まずい。分が悪い。
人数の不利もそうだが、俺はまだ万全じゃない。
こんな状態で、戦えるのか……?




