表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/39

弱る少年と王女からの看病

「おはようですぅ」


 いつもは一番最後に起きてくるフィアが、今日は二番手だった。

 彼女が早起きをしたわけでは無い。蓮が遅いのだ。


 彼はいつもは七時には起きて、食器を並べるのを手伝ってくれる。

 どういうわけか、今日は部屋から出てこない。まだ寝ているのだろうか?


「蓮さん、朝ごはんができましたよ」


 ノックをするが、返事は無い。

 たまには寝坊したい日もあるだろう。リヴは蓮を呼ぶことをやめた。


 しかし七時半を過ぎても蓮は出てこない。

 このままでは遅刻してしまう。リヴは蓮を起こすことにした。


「蓮さん、そろそろ起きましょう」


 やはり返事は無い。仕方ないので部屋に入ることにした。

 ドアを開けると、蓮はまだベッドの中にいた。


「蓮さん……蓮さん!?」


 彼の顔が赤い。それに息も荒いようだ。

 あわてて額に触れる。熱い。それにしっとりと汗をかいている。


「大変だ。蓮さんが熱を出している!」



「う……」


 朧げながら意識が戻ってくる。

 体中が熱い。だが額だけが冷たく感じる。そこには冷たいタオルが乗せられていたことに気づく。


 それを落とさないように手で受け止め起き上がると、不快な倦怠感が体を支配していた。


「……俺、熱出してたのか」


 その時、部屋のドアが開いた。新しいタオルを用意したリヴが部屋に入ってきた。

 その後ろから、フィアも顔を出す。


「今起きやがったですか。毎日疲れた顔して剣を振っていればこうもなります。体調管理のなっていないやつです」


 体調を崩した原因。やはり最近始めた剣の特訓だろうか。

 無理をしていた自覚はある。フィアに返す言葉は無かった。


「今……9時半か。今からじゃ遅刻だな」


「学校に行く気ですか? 駄目ですよ。今日は休んでください」


 さすがにこの怠さでは出かける気にはなれない。リヴの言う通り、今日は大人しくしていよう。

 俺は遅ればせながら、学校に休みの連絡を入れた。


「リヴ、体温計持ってきてくれるか」


 居間の引き出しにあるそれを用意してもらう。表示は38℃を超えていた。


「汗拭きます。上を脱いでください」


「い、いいよ。自分でやるからタオルだけ置いて行ってくれ」


「でも……」


「いいから」


 リヴの好意を潰すようで悪いが、それくらい一人でやる。

 任せたら下半身も脱げと言われかねない。


「……わかりました。無理しないでくださいね?」


 そう言ってリヴはフィアと共に部屋から出て行った。



 しばらくして、再度リヴが部屋に入ってくる。


「着替えを用意しましたからこっちに着替えてください。蓮さん、食欲はありますか?」


「……正直、あまりないかな。今はいらないや」


「食べやすいものを用意します。少しでもいいから口にしてください」


 卵と潰した野菜が入ったスープに米を浸したものが出てきた。彼女の国にもおかゆのような料理があるのだろう。


「それじゃ、口を開けてください」


 リヴが当然のようにスプーンを俺の口に近づけようとする。


「い、いいって。一人で食べるよ」


「この前、甘えて欲しいって言ったばかりじゃないですか。看病させてください」


 観念して一口。薄味だが、今の俺には丁度いい。

 だがやはり恥ずかしさに勝てず、リヴからスプーンを受け取り残りは自分で食べることにした。


「ごちそうさま。おいしかったよ」


 結局、全て俺の腹の中に収まった。それを見たリヴは満足そうな顔を見せた。


「じゃあ、そのまま寝ていてください。してほしいことがあったら何でも言ってくださいね」


 そして俺はまた部屋に一人になった。


(……何やってんだろうな俺)


 リヴ達に気を遣わせないようにと気を付けると誓ったばかりなのに。またも俺は彼女たちに心配をかけてしまった。

 つくづく自分が嫌になる。どうして俺はこうもダメなのか……。



「37.4度か。朝よりは下がったな」


 夕方、体温計を見ながら今日一日で調子が良くなったことを実感した。明日には学校に行けるだろうか。


「無理しないで明日も休んだほうがいいですよ」


 昨日までの俺ならこれくらいと言って登校したかも知れないが、無理がたたった結果が今なのだ。

 明日も無理をしないで休んだほうがいいかも知れない。


 ピンポーン。


 玄関からチャイムが鳴る。荷物でも届いたのだろうか。


「はいはーい、フィアが出るですよっと」


 ドアを開けるとそこには、一人の女子高生。蓮に剣の稽古をつける近藤千早だ。


「えっと……鷹見君にプリントを届けに来ました……」


 そう言って彼女はフィアのことを物珍し気に見ている。

 日本人離れした一人の美少女。なぜこんな子が男子高校生の家にいるのだろうか。


「あれ、あなたは近藤さん?」


「リヴちゃん?」


 リヴにとってはクリミアとの戦いで倒れた蓮を休ませてくれた同級生。久しぶりの再会だった。


「……近藤か……」


 奥から蓮も顔を出す。


「鷹見君……具合はどう?」


「ああ……少しは良くなった……」


 そう言った後、気まずい沈黙が流れる。

 リヴとフィアの2人と同居している理由をどう説明すればいいのだろうか。


 リヴとは、暴漢から庇っただけの関係だったはずなのだ。それなのになぜ俺の家に住まわせているのか。


「……あれから連絡先を交換しまして、時々妹と遊びに来てたんです。そしたら今日は蓮さんが体調を崩していたので、看病させてもらっていました」


「……へえ、そうだったんだ」


 急遽リヴとフィアは、姉妹という設定になった。

 筋は通っている、はず。近藤はそれ以上何も聞かなかった。


「リヴちゃんだけじゃ大変じゃない? 私も何か手伝うよ」


「いえ、大丈夫ですよ」


「そう言わず手伝わせて。鷹見君も私のほうが気を使わなくていいだろうから」


 そう言って近藤は奥に入ってくる。


 この状況でリヴは良くて近藤はダメ、とも言いづらい。

 蓮は好きにさせるしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ