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嵐を呼ぶ幼き王女

「リヴ、体調は大丈夫ですか?どこか具合悪くないですか?」


「大丈夫だよ。この通り、元気さ」


「うあーっ、良かったですぅー!」


 フィアはしばらくリヴから離れず泣き続けた。年端もいかない少女が異世界で一人。心細かったに違いない。


「リヴ、助けてください!」


「どうしたの、何かあったの?」


「それが……」


 フィアは今まで自分の身に起きたことを説明し始めた。


「お前、なかなか強そうですね。フィアの騎士にしてやるです!」


 フィアは、体格の良い男を無理やり自分の騎士にした。拒まれても泣いて困らせて自分の思い通りにした。


 そんな時、フィアは別の王女と戦闘になった。結果は、為す術もない惨敗だった。


 従えた騎士は宝玉を砕かれ、フィアは自分の騎士と指輪を失った。なんとか、一人必死に逃げ出した。


「このままじゃ戦いを続けられねーです。リヴ、なんとかしてください」


 話を聞いていて蓮は思った。


(こいつ、あまり関わらない方がいいタイプなんじゃ……)


「リヴ……もしかしてこいつが、リヴの騎士ですか?」


「うん、鷹見蓮さんって言うんだ」


「ふーん……」


 フィアはまるで品定めするように俺のことをジロジロと見回す。


「なんだか、頼りにならなさそーなやつですぅ」


「なっ!」


 言葉を失った。いくらガキでも初対面でそれはないだろう。


「こら、フィア!なんて事言うんだ!……すみません、蓮さん」


「ああ……」


 しかしリヴの手前、怒るわけにもいかない。


「蓮さん……今日のところは遅いですし、彼女も家に泊めてあげられませんか?」


「……まあ、どうせ家なんてないんだろ。だったら、そうするしかないだろ」


「ありがとうございます」


 礼を言うのはお前じゃないだろ、リヴ。


「ふーん、しょうがないですね。今日のところはお前の家で世話になってやるですぅ」


 こいつ、やっぱり一度どついておいた方がいいんじゃないだろうか。


 俺達は、三人で自宅へと移動した。


「ふーむ、庶民が住むにしては、中々の家ですね」


 部屋を舐めるように見回してフィアが言う。


「で、召使いは何人いるですか?」


「そんなのいないよ。ここに住んでるのは、蓮さんと僕だけ」


「えっ……!」


 フィアは絶句している。召使いがいないと言うのは、彼女からすればありえないほどのショックなのか。


「……このケダモノ!何考えてやがるですか!」


 しかしフィアが怒り出したのは別の理由のようである。


「こっちの世界で住む場所が無い事を良いことにリヴに二人きりの同居を強制するなんて!可哀想なリヴ。今までどんな酷いことをされたですか?」


「なっ……!」


 今度は俺とリヴが絶句する番だった。こいつ、ガキのくせになんてことを言うんだ。


「ちょっとフィア、はしたないよ。蓮さんはそんな人じゃないし……そもそも僕が頼み込んでここに住まわせてもらってるんだよ?」


「リヴ、良いんですよ、こんな奴を庇う必要なんてないです」


「……良い加減にしないと、怒るよ」


 リヴが珍しく低い声を出した。


「……本当に、酷いことされてないですか?」


「本当だって。心配ないよ」


「ふーむ……」


 ようやく納得してくれたか。これで少しは大人しくなるか?


「……リヴみたいな魅力的な女性と一緒に暮らして何もしないなんて、お前、玉ついてるですか?もしかして女の子に興味無いとか……それなら安心ですぅ」


「………」


 こいつ、喋ってないと死ぬのか?


「それじゃあ、晩御飯の支度をしますね。フィアもそっちで休んでて」


 台所に向かおうとするリヴを、フィアが制止する。


「なんでリヴがそんなことするですか!お前がやれですぅ」


「フィア、僕がこういうこと好きなのは知ってるでしょ?それに、蓮さんには本当にお世話になってるんだ」


 リヴは俺を庇うようにフィアを諌める。流石にフィアもこれ以上口を挟むことはしなかった。


(……ってちょっと待て、こいつと二人きりかよ?)


「リヴ、今日のところは俺が……」


「ダメですよ。さっき家事は僕に任せるって言ったばかりじゃないですか。蓮さんも休んでてくださいね」


(いや、こいつと一緒なんて、むしろ休まらないんだが……)


 こんなやつと一体どうやって一緒に過ごせっていうんだ。


「お前、何か剣術はやってたですか?」


 唐突にフィアがそんなことを聞いてきた。俺は少し考えてから答える。


「そういうのはないけど……まあ、昔スポーツはやってた」


「かー、話にならないですぅ!」


 フィアは大げさに頭を抱え、左右に振る。


「リヴはなんでこんなの選んだですか? ちゃんと剣術やってる騎士を選べばよかったです!」


「………」


 まあ俺もそう思うが……強引に勧誘して失敗したお前が言うか?


「フィア、蓮さんはとても強いんだよ。僕を助けてくれたし、すでに一回は勝ってるんだよ?」


「……本当にこいつの手柄ですか?リヴが強いだけじゃないですか?」


「僕は蓮さんが騎士になってくれて、本当に良かったと思ってるんだ」


「……ふーん」


 こいつはまだ納得してないようだ。だがリヴのその一言で、俺は溜飲を下げる事ができた。


 * * *


「リヴの手料理なんて初めてですぅ」


「野菜もちゃんと食べなきゃダメだよ」


「そんなもん食べなくても死なないですぅ」


 好き嫌いはあるが、マナーはちゃんとしている。腐っても王族ということか。


「蓮さん、口に合いますか?」


「ああ、美味いよ」


 リヴの手料理は初めてだが、俺よりよほど美味い。皿の上は異国風だが醤油等を使っているため、味は和風だ。


「お前ごときがリヴの手料理にありつける幸運に、泣いて感謝するですぅ」


 もう怒る気力も湧かない。適当にスルーすることを覚えた。


「ふー、食った食った。ご馳走様ですぅ」


「おそ松様。じゃあ食器を片付けてくるね」


「お前も手伝ってきていいんだぞ」


「なんで客人がそんなことする必要あるですか!……しかし可哀想なリヴ、こんな男にいいようにこき使われて……」


「だから僕が好きでやってるんだってば」


 リヴが都度庇ってくれなければ、とっくに俺はこいつを叩き出しているだろう。

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