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新しい仲間は衣装好きのオリンピアン

 彼女たちが一通りゴスロリに着替え終わった後、今度はコスプレ大会が始まった。


「鬼はフィアが滅するのですぅ」


 鬼殺の剣の隊服を身につけたフィアが、刀のおもちゃを振り上げる。

 幼すぎて世界観に合っておらず、服に着せられている感が拭えなかった。


「こらこら、子供がそんなもの持ったら危ないじゃないか」


「フィアを子供扱いするなですぅ!」


 冗談で剣を取り上げようとする蓮に、フィアはムキになって抵抗した。


「あらあら〜、ダメですよ。ケンカは〜」


 蝶のような羽織を纏うアイリスは、キャラになりきっている。

 おっとりとしたセリフと美貌で、雰囲気は抜群だ。


「千早ちゃん、よく似合ってるわ! ほら、こっち来て!」


 隅に隠れようとする千早を、レーカの友人が引っ張り出す。

 今度は長い髪を二つの三つ編みにし、ミニスカートと胸元が大きく開いた隊服を身に纏っていた。


 その露出の高さに、蓮だけでなく千早も赤面している。


「〜っ! 恥ずかしいから見ないで!」


「……お前、水着の時は堂々としてるだろ。今の方が布は多いじゃないか」


「水着とこれは違うの!」


 最後は、左右で柄の違う羽織を纏ったリヴが登場した。


「リヴちゃん! 教えたセリフを言ってみて!」


 レーカ達は期待に満ちた顔でリヴを見つめる。


「……生殺与奪の権利を、相手に渡さないで下さい!」


 青く輝く刀身を前に構えながら、作中の名セリフを叫ぶ。

 またも部屋の中は、レーカ達の歓声で大きく包まれた。


(……これ、男性キャラのセリフだよね。だから何で僕は男装なの?)




「次、これ着てみて!」


 蓮を居間に残して、女性陣は隣の部屋ですでに盛り上がっている。

 最初は渋っていたアイリスも、今はノリノリだった。


「次は制服ね」


 リヴを除いた三人には、女子学生の制服のような衣装が渡される。

 そしてリヴに渡されたのは、学帽と学ランだった。


「これも絶対似合うわ、リヴちゃん!」


「あの……僕も女性用の衣装を着せてもらうわけにはいきませんか?」


 鼻息を荒くしながらリヴに迫るレーカの友人に、リヴは静かに拒絶の意思を示した。


「う〜ん、これも似合うのに……でもそうね……これなんかどうかしら?」




(ふう……)


 蓮は疲れていた。


 美少女達のゴスロリにコスプレ姿。

 思春期の少年には、あまりに刺激的だった。


(まだやるのか……いつまで続くんだ、これ)


 もう終わって欲しい。

 いや、もう少し見ていたい。


 そんな風に、彼の気持ちは今、複雑だった。


 そんなことを考えていると、隣の部屋の扉が開く。

 ファッションショーの再開である。


「お次は制服ショーでーす」


 先頭のフィアは、白いブラウスに紺の袖無しカーディガン。

 スカートは短く赤いチェック柄で、胸元に同じ柄の大きなリボンを結んでいる。


 歳を考えれば、初々しい中学生に見えなくもない。


「知ってるですよ。男は女の制服姿が好きなのです。フィアに欲情すんなですぅ」


 だが、言っていることは擦れたマセガキである。


「お前は沈黙は金という言葉を知るべきだな」


「ぶぅ……お前はフィアにだけ反応が違いすぎるのです! つまんねーのですぅ!」


 続いて登場したのはアイリス。


 臙脂(えんじ)色のブレザーに紺のミニスカート。

 そして目を引くのは、先ほどの千早に倣ったかのようなツインテールだ。


「せ〜んぱい♡ 似合ってますか〜?」


「……いや、お前俺と同い年だろ!?」


 元々童顔の彼女が、髪型によってさらに幼く見える。

 こんな後輩がいたら、学校は楽しすぎると思わせるだけの魅力を放っていた。


(こいつ、心臓に悪すぎる……)


 お次は千早。


 白いブラウスに加え、灰色のチェックのミニスカートは股下ギリギリではないかと思えるほどに短い。

 そして腰にはカーディガンを巻き、両脚にはルーズソックス。


 完全なるギャル風コーディネート。

 普段の真面目な剣道少女とのギャップは凄まじい。


(……これもいいな)


「ちょっと鷹見くん、何か言ってよ……」


「あっ、いや、似合ってると思うぞ」


「本当かなあ……うう、恥ずかしいよ」


 慣れない格好に恥じらう彼女。

 そこがまた良い。


(次はリヴか……)


 今までの流れから言って、また男性用の制服で出てくるのだろうと蓮は予想していた。


 確かに彼女の男装はよく似合っているので、周りがそれを喜ぶのもわかる。

 ただ、リヴは負担に感じている様子なのが気になっていた。


 ガチャリと音を立てて隣の部屋が開く。


 そこから出てきたリヴは、他の三人と同じく女性用の制服。

 セーラー服だった。


 白い生地に紺色のセーラーカラー。

 同じく紺色のプリーツスカートは短すぎず、膝丈。

 そして、もう一つオプションが付いている。


 眼鏡。


「ど、どうですかね……」


「……ああ、似合ってる……」


 大人しそうで、清楚で、そんな美少女。

 リヴのキャラクターにとても合っていて、素敵だ。


「……」


「……」


 二人は、お互いに言葉が出ない。


(可愛いって、言ってやれたらいいのに)


 それだけなのに、勇気が出ない。


(ふ〜ん、この子達って……)


 その様子を、レーカは意味ありげに見つめていた。




「あー、楽しかった」


 レーカとその友人達が、満足そうに笑った。

 フィアとアイリスも楽しかったようだが、リヴと千早は疲れた顔をしている。


「じゃあ約束です。お前、フィアの騎士になれですぅ」


「うん。わかった」


 フィアが指輪を取り出すと、レーカが右手を差し出す。

 そしてそれは薬指へと嵌められる。


「フィアの騎士として戦うと念じろですぅ。そうすれば騎士としての装備を身に纏うことができます」


 レーカが目を瞑り、イメージを高める。

 すると彼女の胸に千早と同じ白と金色の胸当てが現れ、右手には金色の剣が握られた。


「おお〜」


「レーカ、すご〜い!」


 友人から歓声が上がった。


「凄いな。本当にこんなことあるんだ……」


 レーカも自分に起きた魔法に、改めて感動している。


(また、剣を握ることになるなんてね……)


 もう区切りをつけたはずの剣の道。

 自分の限界を越えるために磨き抜かれた力を、今度は人を守るために使う。


 彼女はこれから挑むことになる運命に、血が騒ぐ思いがした。


「レーカさん、これからよろしくお願いします」


「うん、よろしくね」


 千早が彼女に手を差し出し、固く握手を交わす。

 蓮達も順番に続いた。


「お前の活躍に期待します。骨身を惜しまずフィアのために戦えですぅ」


「わかったよ。その代わり……またみんなの着せ替えさせてね?」


「仕方ないですね。従人に報酬をくれてやるのは主君の義務ですぅ」


 フィアが周りに目配せする。

 アイリスは満更でもなさそうな顔をしている。


「ほどほどにお願いします……」


 リヴは晴れない面持ちで呟く。


 こうして彼らに新たな仲間が加わった。


 世界で戦ってきたオリンピアン。

 これ以上ないほど頼もしいことは間違いないだろう。


「フィアの騎士は世界一ですぅ。お前も足を引っ張らないように気をつけるのですぅ」


 そして蓮は、しばらく彼女の増長に悩まされるのだった。

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