↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
120/144

決戦の分水嶺 糸の呪文の真の脅威

「蓮さん……良かった……!」


「……しぶといやつなのです。まるでゴキブリですぅ」


 リヴは、心の底から安堵した。

 フィアの言葉も、本心ではない憎まれ口なのは明らかだった。


 蓮が蘇った。

 なら、こっちも心配をかけるわけにはいかない。


「はあっ!」


 リヴの振り下ろした杖が、敵の騎士の宝玉を掠める。

 相手は思わず顔をしかめた。


(僕も負けません。蓮さん。あなたも負けないで──)




(この装備、安住さんと同じだ)


 蓮は自分の脚に現れたグリーヴを見つめる。

 彼は見ていた。颯爽と現れた安住が、瞬く間に敵の騎士を打ち破っていく姿を。


(脚力を強化する装備……それなら!)


 蓮は、あえて相手から下がり間合いを取る。そして。


(一気に、踏み込む!)


 地面が爆ぜた。

 アイリスを襲う騎士の懐へ、瞬時に入り込む。


 だが、相手もそれを読んでいた。


(俺だってあのオカマと訓練してるんだ。盾があれば、防げない攻撃じゃねぇ!)


 相手は正面に盾を構える。


 それに対し蓮は、剣ではなく、盾を構えたまま勢いに任せてそのまま激突した。


「おおっ!?」


 相手はそれを防ぎきれず、後方に吹き飛んでいく。

 蓮は、この隙を逃すまいと追撃をしかける。


「ベグロジス!」


 イリヤの呪文によって、蓮の前に透明な壁が現れた。


(ガラスの壁さ。その速度で衝突すれば大怪我するよ!)


 このままでは衝突する。このままでは止まれない。


(──だったら!)


 蓮は寸前で高く跳び、ガラスの壁を乗り越える。


 その間に敵は体勢を立て直す。


 蓮は上空から勢いよく剣を振り抜いた。

 相手は盾で防ぐが、衝撃を防ぎきれず胸が開く。


「ぐうっ!」


「ここだっ!」


 その隙をついて、蓮は左胸の宝玉を貫いた。


「くはっ……」


 力を失って倒れる男に背を向け、蓮はそのままアイリスの下へ駆けつける。


「大丈夫か、アイリス」


 彼女の顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。


「違っ……これは、あれ! 花粉症だから! 森の中で、嫌になるわ!」


「……そうだな。お前はあとは下がっていろ」


 アイリスの無事を確認して、次に蓮はリヴ達の元へと疾る。


「リヴっ!」


「蓮さん!」


 彼女達を狙うのは二人の騎士。


(今の俺なら、同時に相手をしてもやれるはずだ!)


「シルシェミド!」


 シルエナの杖から黒い光球が放たれ、その一人の敵が構える盾に直撃した。


 受けた相手は自分の影から黒い手が伸び、体を縛り上げられる。


「うわっ……!」


(今だっ!)


 その隙を逃さず、蓮の剣が相手の左胸を突く。

 宝玉は砕け、彼は力を失い崩れ落ちた。


「もう一人……っ!」


「くっ」


 残る一人は何とか応戦しようと試みるが、リヴ達と合わせて四対一。相手になるはずもなかった。


「ああっ……」


 なす術もなく、彼もまた宝玉を失い騎士としての力を失った。


「次は……あれ、あいつどこいった?」


 近くにいたはずのミラは、姿を消していた。

 さっきまで確かにそこにいたのに。


「おそらく呪文を使って変身したのでしょう。その辺の小石にでも化けているなら、見つけようがありません」


「じゃあ、どうすれば?」


「警戒は怠らないように。ですが、彼女一人で我々に攻撃して来るとは考えにくいですね」


 事実上、撃退したと言っていいということか。


「蓮さん!」


 リヴは泣いている。心配をかけてしまったのだろう。


「リヴ。お前はここにいろ。俺は他のみんなを助けてくる」


 彼女達に襲いかかる騎士は全て払った。これで心置きなく戦える。

 蓮は混戦となっている戦場の中央へと向かっていく。


(安住に続いて、グリーヴを持つ騎士がもう一人。あの少年は、同じくグリーヴを持つ騎士でなくては止められまい)


「孝宏! あの子供を止めろ!」


 フィオナの号令が響いた次の瞬間、風を切ってフィオナの最強の騎士、阿部孝宏が蓮の前に迫り来る。


(こいつ!? 安住さんが相手をしていたはずなのに)


「可愛いボーヤ。今度あんたが相手をしてちょうだい」


「くっ!」


 剣が激しくぶつかり合う。

 自分と同じ速さで動く相手だ。装備の優位性は通じない。


(安住さんはどこ行ったんだ? まさか、やられ──)


「よそ見をしないで。今あんたの相手をしてるのはアタシよ!」


 容赦なく、阿部の剣は蓮に襲いかかった。

 他のことに気を取られていては、とてもかわしきれない。


「おおおっ!」


「若いっていいわね。もっと激しくぶつかってきなさい!」


 距離を取ろうとしても、瞬時に詰められる。

 閃光のような一撃は、わずかでも気を緩めれば自分の急所に届くだろう。


(もし安住さんがやられたなら、こいつを倒すのは俺の役目だ!)


 おそらくここが、この決戦の分水嶺。

 この男を倒せれば勝つのは自分たち。負ければ、この男を止められる者はもういない。


(絶対に、負けるわけにはいかない!)


 それにしてもやりにくい相手だ。

 繰り出す攻撃を、すり抜けるようにかわしてくる。


 そして、何かがおかしい。

 言葉にできないが、自分の直感が危険を伝えてくる。


 その妙な違和感を蓮は知っている。

 まるで相手に誘導されているような、かつてハンドボールでも味わった感覚。


「鷹見君! こっちに来るな!」


 声をかけてきたのは、安住。

 振り向くと、彼は全身を血で汚し満身創痍だった。


「安住さん!?」


「この周囲には糸がいくつも張られている! 近づくな! 切り刻まれるぞ!」


 糸……これもフィオナという王女の呪文か。


 まるで見えない。だが確かにそこにある。

 これが安住を追い詰めたトリックということだろう。


「リオイプリト!」


 遠くからフィオナの声が響いたと思うと、傷だらけの安住がふらりと立ち上がる。

 そして一気に距離を詰め、なんと蓮に剣を振り抜いてきた!


「安住さん!? 何を……!」


「くっ……体が勝手に……?」


 安住の後方で、フィオナが杖をこちらに向け不敵に笑う。


「手品の種を明かすとは、良くない客だ。代償は体で払ってもらうぞ」


(これも糸の呪文? 安住さんを操っているっていうのか!)


「鷹見君……私に構わず、攻撃しろ!」


「あら、そもそもそんな余裕あるのかしら。あたし達のデュエット、防ぎきれる?」


 グリーヴを持つ二人の騎士が、容赦なく蓮へと襲いかかる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。