聖夜の告白 学校一の美少女が好きなのは
駅前を過ぎる雑踏は、やはりカップルが多い。
そんな、既にパートナーがいるはずの男性も、俺達とすれ違う際にはこちらに目線を動かす。
まず南條を見て、その後は俺を見る。
男なら誰もがその美貌に目を奪われる美少女。
そしてその隣にいるのはどんな男なのかと、確かめるように。
だが俺は南條の特別な存在では無い。
俺達は今日、伊藤と漆間をくっつけるために共同戦線を張るだけの関係だったはずだ。
終わった後のことなんて、何も考えていなかった。
「まだ、時間あるんでしょ? せっかくなんだから、あたし達もイルミネーション見ていこうよ」
時計は18時を回った。
リヴ達の元には、19時くらいに行けば問題ないだろう。
移動を考えても、30分くらいは余裕があるはずだ。
「そうだな……」
俺は頷いた。
クリスマスイブはやはり特別だ。
そんな日に見られるイルミネーションは、やはり見ないと損だと感じてしまう。
USJで過ごした夜も、こうして一緒に見たっけな。
「USJのパレードを思い出すよね」
南條も同じことを考えていたようだ。
「結衣、上手く行くかな……」
「……大丈夫だと思うよ」
あれだけカラオケで仲良くしてたのだから、余程の事がなければなんとかなるのではないか。
「鷹見って、優しいよね」
「そうか?」
「今日も付き合ってくれたし」
別に断る理由も無かったし、正直、南條と過ごせて役得だと思っている自分もいる。
だから、優しいなんて言われるとむしろ困ってしまう。
「……鷹見から見て、あたしってどんな感じ?」
「どんな感じって?」
「だから、こんな感じって言うか」
語彙が足りていないが、俺に優しいと言ってくれたように、俺も南條をどう思っているかということか。
「優しいと思うよ。だって小さい兄妹の面倒見てるんだろ」
「他には?」
「……正直、俺とは合わないタイプかなって思ってた。でも、今では一緒にいて楽しいと思ってるよ」
俺は南條のことを友達だと思っている。
お前も、そう思ってくれてるだろ?
「合わないって? ひどーい。なんでそんなこと言うの」
彼女は笑っている。本気でショックを受けているわけではない。
「だってなんて言うか、お前はクラスでも中心って感じだろ。それに比べたら、俺は陰キャって言うか……」
「……そうだね。あたしも最初は鷹見のこと、地味なやつだと思ってた。でも今では面白いやつだと思ってるよ」
「面白い? 俺、面白いこと言えてるか?」
「面白い面白い。言葉より、態度って言うか。鷹見ほど面白いやついないよ」
「なんだよそれ」
「本気で芸人いけると思う」
「それはねーよ」
──ああ、楽しいな。
でも、それと同時にドキドキする。
リヴやアイリスに、いや近藤にだってそう感じるように、南條にも同じ気持ちになってしまう。
俺って、節操が無いのかな。可愛い女の子なら、誰でも良いのか?
……しょうがないやつだな、俺は。
こんな気持ち、表に出せない。
表に出さなければ……お前はこれからも仲良くしてくれるだろ?
時計の針は18時半に近づいた。
そろそろあいつらの待つ家に帰らなくてはならない。
「……面白いだけでなく、すごい人だと思う。あたしの兄妹を命懸けで助けてくれたしね」
「……助かってよかったよ。本当に」
「……なんで、助けてくれたの?」
「何でって……助けたいと思うのは普通じゃないか」
「でも、火事のビルに飛び込むなんて普通じゃないよ。そんなこと、普通できないって」
……それは、その通りだろう。
でも俺があの時動けたのは、指輪の力に守られていたからだ。
だから、救出できたから俺がすごい奴だというのは、違うんだ。
「兄妹を助けてくれたのは……あたしのことが好きだから……?」
好き……? 友達として、ってことだよな……。
好きって言っちゃうと、何だかややこしいことになる気がするぞ。
「……前に、あんたのことが好きな子がいるって、言ったよね……」
「……ああ、言ってたな」
「……それ、あたしの事だよ」
………え?
「あたしは、鷹見のことが好きだよ」




