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聖夜の任務は盛り上げ役 そして始まる二人きりの時間

「メリークリスマース、イブ!」


「いえーい」


 ドリンクバーによるカラフルなグラスを使って四人は乾杯する。

 あらかじめ持ち込みを相談していたケーキを開けたところで、それを前にみんなで写真撮影をした。


「せっかくだから男女で座ろうぜ」


 漆間の提案で伊藤は自然と漆間の隣に座る形となる。

 こう言う事さらっと言えるから凄いよな……。


 L字型のソファーのもう一辺に、俺も南條と一緒に腰掛けた。


 カラオケルームという密室。

 実際の距離以上に、彼女とは近い気がした。


「はい、漆間」


「サンキュ」


 伊藤が切り分けたケーキを渡す。

 ごく自然なアピールだ。


「はい、鷹見も」


 次は南條がケーキを皿に載せ、俺に渡してくれた。


「ありがとう」


 南條も、こういう気遣いができる子なんだよな……。

 夜もケーキが出るからあまり腹一杯にはなれないのだけど、美味い。


「よーし、歌うぞ」


 先陣を切るのは漆間。

 昨年流行ったクリスマスソングを、上手に歌い切った。

 こいつ、何やらせても様になるよな。


 その後は他の二人も、そして俺も、順番にマイクを手に取る。

 歌うのは得意じゃないけれど、白けさせるわけにはいかない。


「上手いじゃーん」


「良いぞー!」


 周りも盛り上げてくれる。

 別に俺だけのためではないのだけれど、悪い気はしない。


「伊藤、一緒に歌おうぜ」


 漆間がTikTokで流行った少し古い男女のデュエット曲を入れ、伊藤にもマイクを渡す。

 曲が始まると、漆間は伊藤の肩を抱き寄せ、顔がくっつくんじゃないかという近さで歌い始めた。


 ……本当に凄いやつだ。とても真似できない。


 当然、伊藤は嫌な顔をするどころかむしろ喜んでいる。

 こいつら、俺達が気を使わなくても勝手にくっつくんじゃないか?


「いいねー! ラブラブー!」


「いえーい!」


 南條が合いの手を入れて盛り上げ、漆間も応じる。

 今日始まって一番の盛り上がりを見せた。


「次、お前らも一緒に歌えよ」


 漆間が、俺と南條にマイクを渡してきた。


 南條と、デュエット?

 照れるけど……ここはノリに合わせないとダメだよな。


「鷹見、これ歌える?」


 南條がデンモクで入力した曲を俺に確認させる。

 これもTikTokで流れてくる曲で、歌ったことは無いがなんとなく歌詞は知っている。


 少しレトロな曲が始まると、漆間が俺たちを囃し立てる。


「お前らももっとくっつけー!」


「いえーい!」


 伊藤も同調して盛り上げようとする。


 ここは……くっつくべきなんだよな?

 南條も、嫌だと思わないよな?


 頭でそう考えていると、南條が先に俺の肩を抱き寄せて来た。


「いえーい!」


 俺も慌てて彼女の肩を抱き寄せる。


「い、いえーい!」


 彼女からいい匂いがする。

 これは香水? いや、シャンプーか? 


 その後も、俺たちは大いに盛り上がった。

 二時間なんて、あっという間に過ぎていった。


「楽しかったねー」


「喉、ちょっと痛いわ」


 カラオケ店から出ると、外はもう暗い。

 駅前はイルミネーションが光り、幻想的な雰囲気を作り出している。


 この後は、ここで漆間と伊藤を二人きりにしなくてはならない。

 さて、どうするか。


「……ここからは、別行動にしようぜ」


 口火を切ったのは、俺だ。


「お、俺っ、ここからは、南條と二人きりがいいな!」


 思ったよりも声が大きくなり、そして裏返った。


「いやどんだけあたしと二人きりになりたいの? しょうがないなー」


 南條も、合わせてくれる。


「ってわけで、ここからは別行動にしよっか。あたしたちは行くね」


 南條が二人に手を振る。

 漆間が俺を見て、ニヤリと笑った。


「じゃあそうするか。伊藤は俺と行こうぜ」


「……うん」


 俺たちは二人に背を向ける。


「鷹見、頑張れよ」


 去り際に漆間が激励をする。

 完全に勘違いされてるな……。


 俺も内心、伊藤頑張れよ、と告げる。


 そして俺たちは、あてもなく歩き続ける。

 二人はもう振り返っても見えない。任務完了だ。


「ありがとうね」


 隣で南條が、ふっと微笑む。

 デートごっこも、これで終わりか……。


「ねえ、鷹見……」


「なんだ?」


 南條は何かを言い淀んでいる。

 けれど少し時間をかけ、はっきりと俺に告げた。


「もう少しだけ……一緒に過ごさない?」

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