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長月 君とお月見を Side友希

暑さが落ち着くと、一気に空の青は色褪せていく。


 あんなに高かったのに、きらきらしていたのに。


「ますたー、すすきなのです」


「ありがとう、こすもす」


 夏の魔法が解けた頃、一年で最も美しい月が昇る。


 中秋の名月。いわゆるお月見。月見団子の形は地方によって全く違うらしいけど


とりあえずは丸いお団子とすすきを満月に供えることにしよう。ちなみに、中秋の名月が満月とは限らない。今年はたまたま満月らしいけれど。


「メロンパンを見ると、最近満月に見えるんだよなあ」


 とはいえ、パン作りは流石に専門外。


「月の満ち欠けクッキーとかどうだろう。新月の日から食べ始めて満月の日に食べ終わる十五枚入りクッキー。イラストは……直くんスケジュール空いてるかなあ」


「それとは別にお店で出すのは夜空のゼリーに三日月のチョコレートを乗せたものと……満月ムースとかかなあ。秋は果物が美味しいからとりあえずぶどうジャムと生クリームを中に入れて……大人向けにはラムレーズンなんかもいいか、秋の新作はこれでいこう」


 無事にお月見の準備を終えて、満月のような焼きたてメロンパンに齧り付く。最近はメロンパンの中に色々入っているものも多いけれど、さくさくふわふわの生地を味わうなら、シンプルな方がいい。


**


 毎年中秋の名月は、店を休みにすることにしている。


 こすもすはこの満月の光を浴びることでパワーアップとパワーチャージをするらしく、月が昇るのを待つために屋根に登った。


「月が綺麗だな」


「あ、圭。中庭に準備ができてるよ」


 中庭の小さなテーブルには、満月チーズケーキ。普通のチーズケーキの上にクレープ生地を重ね、クレーターの模様のようにバーナーで軽く炙ってある。この日のお茶は金木犀の香りの桂花茶。


「「いただきます」」


 こうして、毎年小さなふたりきりのお茶会を開くようになったのはいつからだったっけ。


「美味い。チーズケーキも甘くなくて食べやすい」


「お茶が本当にいい香りだね」


 湯気がふわりと空に昇っていく。


「そういえば月には桂の木が生えてるって言い伝えがあるらしいよ」


「じゃあ月のうさぎは、金木犀のいい香りを纏ってるのかもな」


 穏やかに時が過ぎ、夜風が冷たくなる前にお茶会はお開きだ。食器を片付けてからソファに座っていると、だんだん眠くなってくる。


「眠いのか?」


「ん……だいじょう……ぶ」


 意識がここで途切れる。


 あとから聞いたことだけど、これからしばらく俺は圭の肩を枕にして寝ていて


最終的に圭も眠ってしまったのでらべぺんとみんとが毛布をかけてくれたらしい。


 圭が帰宅した頃を見計らって、PENGにメッセージを送る。


「好きな人のそばにいると安心して眠くなるって言うけど、昔から圭のそばは安心して眠くなっちゃうんだよな」


「俺も、友希の隣は安心するよ。そうだ、新曲のコード送るから聞いてくれ。もしかしたら今年中にソロで曲出せるかもって言われてるんだ」


 ふふ、と笑って、新曲をダウンロードする。


 窓の外の月へ、歌声は溶けていく。

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