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人格の死

「見させてもらってたよ。チーちゃん、いい子だろ?」


 ツカサの頬が緩んでいる。よほどチーちゃんの事が好きなのだろう。


「で、問題はここからだ。多重人格を治すってことは、俺たちが一度死ぬってことに等しい。受け継がれるにしたって、人格は一度なくなるだろう。お前にチーちゃんを殺せるか?」


 そんなこと、できるはずがなかった。私は返事のかわりに右の拳を前に突きだした。


「だろう?できるわけがない。だが、あの浦原って医者はもう多重人格を見抜いている」


「どうしてそう思うの?」


「リードに気づいたからだ。お前、犬なんか飼ってないんだよ。もちろん犬の匂いなんてするはずがない」


「ツカサ君、私は確かに犬――ジョセフを飼っているわよ?リードだってここにあるわ」


「散歩のコースは?記憶はあるか?」


 全く、無かった。


「チーちゃんにガムを渡したのは俺だ。同じようにお前にもリードを渡した。なぜだと思う?」


「私にとってのご褒美が、犬だったの?」


「そうだ。正確には、愛情だな。心当たりあるだろ?」


 ツカサは鋭さの増した視線を向け続けていたが、その瞳には父親のような温もりが宿っていた。



読んでいただきありがとうございます。




よろしければ、☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援頂けると嬉しいです。




何卒よろしくお願いします。

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