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人格の死
「見させてもらってたよ。チーちゃん、いい子だろ?」
ツカサの頬が緩んでいる。よほどチーちゃんの事が好きなのだろう。
「で、問題はここからだ。多重人格を治すってことは、俺たちが一度死ぬってことに等しい。受け継がれるにしたって、人格は一度なくなるだろう。お前にチーちゃんを殺せるか?」
そんなこと、できるはずがなかった。私は返事のかわりに右の拳を前に突きだした。
「だろう?できるわけがない。だが、あの浦原って医者はもう多重人格を見抜いている」
「どうしてそう思うの?」
「リードに気づいたからだ。お前、犬なんか飼ってないんだよ。もちろん犬の匂いなんてするはずがない」
「ツカサ君、私は確かに犬――ジョセフを飼っているわよ?リードだってここにあるわ」
「散歩のコースは?記憶はあるか?」
全く、無かった。
「チーちゃんにガムを渡したのは俺だ。同じようにお前にもリードを渡した。なぜだと思う?」
「私にとってのご褒美が、犬だったの?」
「そうだ。正確には、愛情だな。心当たりあるだろ?」
ツカサは鋭さの増した視線を向け続けていたが、その瞳には父親のような温もりが宿っていた。
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