第22話 スキルハンター
『スキル:睡眠ブレスを獲得しました――』
いきなり頭の中に、わけのわからない無機質な音声が流れて、そんなことを言われた。
「え…………?」
いったいなにが起こったのだろうか。
スキルを獲得したって……!?
どういうこと……!?
「とりあえず……試しに使ってみるか……」
俺は威力をなるべく抑えるようにして、スキル【睡眠ブレス】を使ってみた。
すると、なんと俺の口の中から、先ほどの大蛇と同じ技が繰り出されたのだ……!
威力を最小にしておいたから、ブレスは俺の口から少し漏れ出ると、すぐに霧散した。
けど、これを最大威力で放てば、さっきの大蛇と同じことができるぞ……!?
まさか、モンスターの肉を食べたら、モンスターの技を覚えることができるなんて……。
「これは……とんでもない発見じゃないか……!?」
モンスターのスキルを盗むなんてそんな話はきいたことがない。
人間からスキルを盗むという技はきいたことがあるけど……。
普通は、モンスターの使うスキルは、人間は覚えられないはずなんだ。
モンスターのスキルはモンスターしか使えない。
それがこの世界で、誰もが知っている常識だ。
スキルってのは普通は、修行していると、ある一定の確率で【閃く】ものだ。
そのときにしていた行動によって、いろんなスキルが発現する。
けど、モンスターに固有のスキルは、人間には発現しないはずなんだ。
そう、モンスターの肉でも食わない限りは……。
「バレたら大変なことになるな……。人前では使えないな……」
人間が睡眠ブレスなんて吐いたら、大騒ぎになってしまう。
最悪の場合、魔族扱いされて処刑だろうな。
それだけは避けないといけない。
でも、なんでいきなり今回だけ、スキルを閃いたんだ……?
これまでにもさんざんモンスターの肉を食ってきたのに……。
「そうか……確率か……!」
スキルを閃くためには、同じ型を何度も練習するなどして、試行回数を増やさなければならない。そうしているうちに、たまに新しいスキルが閃いたりする。
ちなみに、剣の型とスキルは別だ。
スキルは発動させるだけで、身体が勝手に動くというものだからな。
まあ、一種の魔法みたいなものだ。
そのスキルを効率よく発現させるためのものが型といってもいい。
とにかく、スキルが発現するかどうかは、運しだいなんだ。
つまり、試行回数を増やさないといけない。
「なるほど……スキルの閃きは、モンスタースキルの場合でも同じってことか……」
俺が大蛇の肉をたくさん食ったから、そのたびに閃きの可能性が試行されて、ついにスキルが発現したってこと。
これまでにもモンスターの肉を食ってきたけど、さすがにここまでの量、同じモンスターを食ったことはないからな。
おそらくは大蛇の肉を食って閃いたから、今回は【睡眠ブレス】のスキルなのだろう。
「つまり……他のモンスターを食えば、また別のスキルが手に入るってことか……!?」
モンスターによって、使ってくるスキルが違う。
てことは、覚えたいスキルがあれば、それを使うモンスターを食えば、いつかは閃くんじゃないのか……!?
そう、俺が覚えたいスキル――それは【毒魔法】だ。
正確には、毒魔法はスキルじゃなくて魔法だけど。
でも、俺には本来使えないスキルっていう意味では一緒だ。
魔法も稀にだが、同じ仕組みで、閃くことがあるしな。
俺が本来覚えるはずのないブレス系スキルを覚えることができたってことは、毒魔法も同じ方法で覚えることができるのではないか……?
その類推は、そんなに間違っていないんじゃないか?
この仮説が正しいとすれば……とんでもないな。
毒魔法さえ覚えれば、俺はさらに毒耐性の特訓ができる……!
俺の念願が叶うぞ……!
あれだけ練習しても使うことのできなかった毒魔法……。
その毒魔法を使うモンスターが、この森にもいる――。
――それは、【ポイズンスカルデーモン】という名のモンスターだ。
「そうと決まれば……さっそくポイズンスカルデーモン狩りといこうか……!」
ポイズンスカルデーモンを食いまくれば、そのうち毒魔法を閃くことができるかもしれない。
まだ仮説だが、やってみる価値はある。
そのほかにも、ポイズントードを食えば、あの【毒の液】を手に入れることができるかもしれないな。
ただ、毒の液はモンスター固有のスキルだから、人前では使えない。
その点でも、やっぱりポイズンスカルデーモンから毒魔法を得たい。
気分はまるでスキルを狩るハンター――スキルハンターだな。
他にも覚えたいスキルはいろいろある。
想像が膨らむな。
「っと……その前に、今日はもう遅いからいったん帰るか……」
さすがに大蛇との戦いで疲れたしな……。
俺はドッグミートをその場に残して、森を抜けた。
あ、ちなみに。
一応大蛇の頭は切り取って持ってきたぞ。
いや、決して後で食べるためではない。
さすがにモンスターを食ってるところを他人に見られたら人生終わる。
大蛇の頭を持ってきたのは、討伐の証拠とするためだ。
たしか、領内の冒険者ギルドでは例の大蛇――暴食の王の【討伐依頼】が出ていたはずだ。
街の人も、家畜を食い荒らされて困っていたからな。
ギルドに持っていけば、報奨金が出るはずだ。
まあ、お小遣いは貰っているから、お金にはあまり困ってはいないんだけどな。
けど、ないよりはあったほうが、のちのち役に立つかもしれないからな。
それに、俺が討伐したとなれば、ドミナル家の名声もさらに上がる。
貴族としての立場はさらに安泰なものとなる。
領地の平和を守るのも、領主のつとめだからな。
ドミナル家自体の株をあげておくことで、俺の貴族社会での立場も確固たるものとなりえる。
毒殺の危険性は多少上がるかもしれないが、そのほかの要因で死ぬ可能性は下がるだろう。
それに、領民からの信頼も得ておくほうがなにかと有利だ。
「あ、でも、冒険者ギルドに持っていくなら、ギルド登録が必要だよな……」
【冒険者登録】はそのうちやろうとは思っていたから、ついでにやっておくことにするか。
俺は大蛇の頭を持って領地内の冒険者ギルドへと向かうのであった――。




