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ホリゾント・ヘル  作者: 神無時雨
第三章 揺蕩う飛花に山おろし

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三章8話  乱戦

日の下を悠々と羽ばたく金烏。

それに掴まった朔たちは作戦会議中である。


「どーするよ?」


やっぱりこういう時は輝登が頼もしい。


「まずはJR京都駅付近へ降り立ちましょう。」


「くっ…あまりその辺の地理がわからないよ…」


マリンがうめく。


「修学旅行で行ったことあるぐらいのレベルだしな…」


「どこに出たんだろう?清水寺かな?みんな飛び降りてるし。」


つばさの予想に澪が答える。


「…いや、意外とあそこからの飛び降りって助かってるんだよ。」


「本能寺とか?」


「もう本能寺の当時のやつって残ってないんだよね…石碑はあるけど。」


「澪ちゃん詳しいね。歴史好きなの?」


「うん。とっても。」


「マジか。俺の課題手伝ってくれ。」


「小学生に頼るとか恥ずかしくないんですか?」


「いや、できるやつに年齢なんて関係ないさ。できるやつがやった方がいい。」


「言い逃れできてないよ?ちゃっちゃとやりなよ天原くん。ためるとめんどくさいよ?」


「う゛っ…わかったよお母さん。」


「私はお母さんじゃありません!!」


結局は作戦会議どころではなくなってしまうのであった。


◆ ◆ ◆

無事にJR京都駅の裏へ着陸した5人。


「いやあああ!!」


「わああ!!みんな逃げろ!!」


悲鳴を上げ逃げる女子高生やサラリーマン。比較的落ち着いていそうな男子大学生につばさは声をかける。


「なんの騒ぎですか?」


「なんかな、この先の三条河原でな、急に人がぎょーさん吸い込まれてん。」


「え?」


「なんの前触れもなく川に人が吸い込まれたんよ。マジで怖ない?」


「うん。ホラー。」


その会話に割り込む声が。


「そんだけとちゃうで!これ見てみ!!」


声の主である女子大学生が何かのSNSのリアルタイム通知サイトを見せる。


『急に人が吸い込まれたんだがww』


『こちら木屋町通り。姿はないのに大勢が足を踏み鳴らす音と鬨の声が聞こえる!!』


『ちょ待って!!居酒屋の池田屋でもおんなじ現象起きてる!!』


京都中が大混乱である。

朔たちは大学生に礼を言って別れる。


「手分けした方がいいかな?」


「先輩たちももう現着してるはずだし…」


「まあとりあえず俺は三条河原向かってみる。」


「んじゃあたしは相棒と一緒に行くね。」


朔とマリンは一番近そうなところに。


「じゃあ僕は木屋町通りに向かいます。」


輝登は先ほどのSNSで出ていたところに。


「私はまず凱羅さんたちに電話をかけてみる。」


「何かわかったら連絡してよ。澪ちゃん。私は池田屋に行くから。」


「一緒に行こうよ。」


澪とつばさは結局一緒に行くようだ。


「じゃあ、みんな無事で帰ってきてくださいね!!」


輝登の言葉を皮切りに、5人は目的地へ向かって走りだしたのだった。


▲ ▲ ▲

同刻、地獄某所。


「ふぅむ、暴徒たちを地上へ輩出したはいいですけど、小一時間経っても未だ目立った戦果が得られていないようですね。」


そう言うのは、先っぽだけが青色でベースは銀の髪の女。


「どうやら地上にはさぞかし優秀な対抗組織があるようです。ね、閻魔様?」


「ああ。だが、所詮はニンゲン。いずれ綻びが現れるさ。こちらには怨霊も多い。」


女に呼びかけられて答えたのはマリンの父親、閻魔大王だ。


「はぁ。やっと十王を滅ぼして地獄を手中に収めたと言うのに、今度は娘の反抗期とは。なんとも嘆かわしい。」


「心中お察しいたします。まあ、彼らもただではやられはしませんよ。」


「だといいのだが。最近はきな臭い動きが増えておる。敵対勢力は潰しておきたいものだ。」


「マリンさん…でしたっけ?どこまで足掻けるのか、見ものですね。」


はははは…と高笑いが、空高くこだましていた。


▲ ▲ ▲

さて、地獄で自分が話題に上がっているなど毛頭知らないマリンは、澪と一緒に京都の街を散策していた。


「池田屋…?確か新撰組に関係あったような…なんだっけ澪ちゃん。」


「うん。幕末に新撰組がそこで話し合っていた長州藩とか土佐藩の人をとっちめたんだよ。」


「なーる。それで無念な霊が出てきたんだね…っと、そろそろつきそうだよ。」


「…だね。連絡だけ、入れとく?」


澪がそう言って、凱羅に電話をかける。ワンコールで取ってくれる。


「…なんや!?今ちょっと立て込んでるから息荒いけど許してや。」


「あ、イクリプス、京都に現着しました。」


「おー!!ご苦労さん!!大体察しついてるやろけど、なんか京都で同時多発的に霊が暴れとる!!場所とそこに誰がいるかのリアルタイムマップ送るから共有して欲しいねん!!で、手薄なとこサポートして欲しい。なんか不具合が起きたら京都水族館前に行って!!『光耀』のみんなが待機してるから!!」


「わかりました…あ、マップきました!!なるほど池田屋はすでに制圧済みですか。じゃあ他に向かいます!」


「賢い子で助かるわ!あ、せや朔くんちょっとここに呼んで!!」


「わかりました!きります!!」


超高速テンポの凱羅と澪の通話が終了する。

それを見てつばさは策に電話をかける。


「天原くんに電話だね…あ、もしもし、天原くん?ちょっと師団長が呼んでるよ?」


「マジ?んじゃ行くわ。まあマリンは1人でも大丈夫だろ。ありがとう。」


「きるねー。」


そして、澪とつばさはマップを見て、次にどこへ行くべきか考えるのだった。


▲ ▲ ▲


「ってわけで、俺は凱羅さんのとこ行ってくる。マリン、あとは頼んだぜ。」


「えぇ〜…1人きりぃ〜??」


「なんだよ寂しいのか?」


「いや?別にそう言うわけじゃないけど何さ?もし1人で行ってコテンパンにされたらどうするのさって話だけどね?」


(めっちゃ早口…)


心中で突っ込みながら朔は応答する。


「マリンだったら負けねえし、もしほんとにやばかったらまた駆けつけてやるよ。」


その言葉に、マリンは目を少し見開き、


「じっ…じゃあいいよ。行ってきて。あたしがいないからってホームシックかかっちゃだめだよ?京都の可愛い女の子に浮気とかもダメだよ!?」


「へいへい。わーったわーった。まあ、頑張ってな。」


「ん。相棒こそね。」


こうして朔は金烏に掴まり、凱羅のいる場所、神泉苑へと向かったのだった。


「さーて、こんなみんなの憩いの場の河原でおいたをするやつはどいつだ?」


と、三条河原の河岸に来たマリンはけしかける。すると、マリンから5メートルほど離れた水面が割れ、数個の生首が、互いの髪の毛どうしで括られて一つになったものが出てきた。


「うーん…不気味だ…!」


その一つ一つが、血走った目でマリンを睨む。それがカッと目も見開いた時、水でできた大きな手が2本飛んできた。人なら片手で10人は一度に掴めそうだ。


「なーる。こいつが人を水中に引き摺り込んだんだな。」


結構スピードの速いそれを、マリンはすれすれで避ける。

とたん、からぶって地面に叩きつけられた手がぱしゃんと崩壊。ただの水となってマリンに降りかかる。


「ちぇっ…びしょ濡れだ……!?」


ぐいっ、と引かれる感覚。


「まさか…!!」


こいつの能力は…


「どんな形状であれ、水を操るのか!!」


その語尾を言い切らぬうち、マリンは水中に落とされーーーー


「てたまるかぁぁ!!!」


マリンは自分の濡れた服、髪に高圧で通電させる。


「ぐううぅ…っっっ…!!!」


しばらく痺れに耐える。じゅうううう…と音がして、濡れたそれらが乾いていく。吸引力も落ちる。


「っしゃ!!だいぶきついけどこれでまだ戦える…!!」


第二ラウンドが、始まる。


◆ ◆ ◆

朔は上空から京都を一望。


「あれが…神泉苑か…」


幻想的な一角が見えてきた。しかし、近づくと禍々しい気配が叩きつけられる。そして、その主を辿ると。


「なんだ…あのでっかいおっさん…!!!」


小さくとも5メートルはあるおじさんがいる。長い、黒灰色の髪を振り乱し、髭は顎に生えたこれまた長いもの。黄色く光る目はぎょろぎょろと、みるものを威圧する。服装は地味な、襟の丸い長衣である『袍』。


「えぇ〜…あれとやり合うの…??」


激しく気が進まない朔だが、いくしかない。

びびって割と遠目に降り立つ朔。しかし敵はそれを見逃さない。赤黒い球体をいくつも飛ばしてくる。


「えー…こんな離れてんのに感知されんのか…。没個性で売ってんのに…。」


軽口を叩きながらも、木立の向こうから飛んでくる球体をかわして前進。立ち並んだ木々が出す枝葉にチクチクと刺されつつ朔はトップスピードに乗る。視界が開けた。広場のような場所だ。池が複数あり、それらにかかる橋もある。中央に本殿っぽいところがある。まず朔の目に見えたのは、すごく見覚えのある背中。朔は迷わず駆け寄り、声をかける。


「凱羅さん!!遅くなりました!!」


「お!!来たか。おおきにな!!」


「どう言う状況ですこれ?」


「『最強の怨霊』早良親王や。記録ではこの方を鎮めるために863年に、御霊会っつーお祭りが行われたらしいんやけど、見ての通り健在やな。」


「最強、かぁ…。なんで俺呼んだんですか?」


「もう食らったやろあのタマ。」


「あの血みたいな色のやつですか?いや、今んとこは被弾ゼロでやってますよ。」


「ガチか。まあ、それが理由や。朔くん、君リズム感あるやろ。とりあえずそのタマの処理して欲しいねん。さっき何発かもろてから動きが鈍うなってなあ…このままデバフされまくっとったらやばいねん。」


「んじゃ弾いていきますね!」


「頼むわ!!」


朔はほんのりと赤い宿霊剣をすらり、と抜き放ち、倒れる。


「ごぶっ…。わ…すれてた…!」


「何しとん!?…もしかしてなんか副作用か??」


「そうっす…毎回酷くなっていくんで困りものです…。すぐ回復するので行ってください…!!」


「…わかった。死ぬんとちゃうぞ。」


「…当たり前です。こんなとこでゲームオーバーなんて勘弁ですよ…!!」


凱羅が地面を蹴り、消える。下は小石が敷き詰められており、足場も悪いのに。


「何がデバフだよ…。とんだバケモンじゃんか…!」


でも。


「はやくあんなとこに追い付きてぇな…!!」


そんな思いを噛み締めていると、凱羅の声が飛んでくる。


「おい!避けろ!!!」


朔に向かって先ほどの球体と同じ色の巨大な針みたいなものがたくさん飛んでくる。


「スピードが…ダンチ!!!」


法外な速さで飛んでくる針を、朔は転がって避ける。そのまま近くの木を盾にして呼吸を整える。


「ふぅっ…ふぅぅ…っ!!」


凱羅はちょこまかと跳ね回りながら、一撃離脱を繰り返している。彼が使う武器は、反りのないいわゆる直刀というもの。少し青みがかったそれを凱羅は振り抜き、少しずつダメージを与えていく。


「ふっ…!!」


早良親王は先に小さな刃のついた鞭のようなものをしならせ、凱羅に迫る。足元を刈り取るように振り抜かれた一撃を、凱羅はバク転で避ける。足元の砂利を凱羅は刀で円弧を描くように薙ぐ。それは目眩しの役割を果たした。


       そう、両者に。


早良親王は、その土煙の向こうで力をためていたらしく、今までの比でない速度の密度と速度の巨大な針が飛来する。刀を振り切ったままの姿勢でいる凱羅は、回避も迎撃も間に合わ――――


「―――葵鏡刃!!!」


ガギイイイン、と音がし、左上から右下へかけて火花が散る。割り込んだのは朔。倦怠感から彼は回復していた。


「間に…あった!!!」


朔は、あまりの勢いに尻餅をついた凱羅を振り返り、助けられたことを実感。


「なかなかやれるじゃねぇか…俺!!」


「マジで助かったわ。ありがとな。ここからは共闘ってことでエエん?」


「ふっふっふ。任せてくださいよ。」


「頼もしいなぁ。なんか新技まで完成させちゃって。」


「まあそれは後で解説します。いきますよ!!」


朔と凱羅は同時に飛びかかる。怨念の針と球が2人と早良親王との間を埋め尽くす。

凱羅は右に左にうねり、バックステップを踏み、かわし続ける。


「この弾幕の処理は…俺に任せて下さい!!会心の一撃…お願いします!!!」


「ふっ…。ナマ言っとるわ。ああ、任せろや。決めたるわ。」


凱羅のその返答を受け、朔は目をカッ!と見開く。


「全部…受け切る…!!」


強く地面を蹴り、手近な針を叩き落とす。凱羅に迫るものから優先して斬り払い、巻き落とし、打ち落とす。


「葵鏡刃!!」


背後に迫る大量の球を振り向きざまの一撃でまとめて灰燼に帰す。朔はそのまま果敢に早良親王の方へ。


「おー…迎撃専用技か…!なるほどな。得意分野をじゅーぶんに開花させたっちゅーことかいな。やるやないか…!!ボクも気張らんとなぁ!!」


少し離れた凱羅は朔のまさかの働きに驚き、成長を祝福する。そして彼は大業の準備に取り掛かる。


「いくでぇ…」


ザリッと音を立て、凱羅は右足を右後ろに、左足を左前に大きく開き、沈んだ姿勢をとる。正眼に構えた刀を、両腕ごと右に大きくずらし、刃を上にした直刀を顔の高さより少し上に持ってくる。刺突に特化した姿勢。

ふぅぅ…と息を吐き、凱羅は顔を上げる。


「アンタレス・スコーピオン・スティング!!!」


足に溜めた推進力を爆発させ、空気を切り裂きすごい速度で猛進。


「凱羅さん!?」


朔は辛くも凱羅を避ける。串刺しを免れた。

凱羅はそれに構わず一直線に早良親王のもとへ。彼が通り過ぎた後には逆巻く旋風のみが残される。


「ぐぇっ…!!風つんよ…!!」


朔は腕で顔をガード。


「凱羅さん…すげぇ…!!!」


進んでいく凱羅を見つつ、朔はそうこぼす。あの速度を、パワーを。朔はいつか出せるだろうか。


「いつか…でいい。必ず追いついて、越してやるさ。」


だから今は。


「がんばれ!!!凱羅さん!!!」


そう叫びながら、朔は追撃の準備を始めたのだった。


進む凱羅。その目にはただ、敵のみが映っている。早良親王は、焦って球を打ち出す。


「ハッ!!針みたいなんは連発でけへんねんな!!!おっそいわ!!!」


さらに加速する凱羅は球を置き去りに、さらに懐へ潜り込む。最後の鞭の抵抗も追いつかない速度で肉薄した凱羅は、最後に地面を蹴り跳躍。


「だいたい…この辺が核やろ…!!!」


早良親王のど真ん中に、直刀を突き通した。


風が、吹き荒れる。


▲ ▲ ▲

ダダダダダダッ!!!!

輝登の向かった木屋町通り。その往来では大勢の幕末藩士の幽霊が集い行き来していた。


「くっ…!!」


輝登は痛みに顔を顰め、近くの木陰に隠れる。そのまま荒い息を整える。

大声を出して避難勧告をしながら逃げ遅れた人がいないかを見回る最中、背中を薄く切られたのだった。誰もこの周辺にいないことがわかったが、状況は劣勢。藩士たちは輝登を探して木屋町通り周辺を駆け巡っている。


(ここは…歴史的な暗殺事件が頻発した場所…。だから…見つかるとまずい…!!)


そう思った輝登は近くの茶店に転がり込み、その2階に潜伏。自身の武器である銃を取り出す。


(ここからなら…狙撃できるはず…!!!)


彼は茶店の二階の窓を少し開け、銃身をその隙間から覗かせる。


「この数なら…撃てば当たるでしょう…!!」


乾いた音がして、藩士が蒸発するかのように消えてゆく。


(数が多い…倒し切れるか…!?)


藩士が一斉に蜘蛛の子を散らすように射線から逃れ、建物の合間に逃げ込む。


「これじゃ…狙えませんね…。」


そうして輝登は、彼らが出てくるのを待つことに躍起になり、周囲への注意を怠った。だから、自身がいる部屋の襖が微かに鳴った音に気づくことができなかった。


「!?」


時すでに遅し。銃弾の飛んでくる方向から輝登の位置を推察した藩士たちが雪崩れ込んできた。彼らの得物は刀剣。銃では狭い室内で戦うには不利すぎる。


(まずっ…!!!)


斬りかかってくる刀身を銃の先で受け流して時間と距離を稼ぐ。少し離れてから乱射する。しかしもともと遠距離狙撃用の銃ではうまく当たらない。藩士が、輝登に大勢でなだれかかる。輝登が迫り来るだろう痛みに備えて目を瞑ったその時。


ザクッ!!!


荒い音がして、そこにいた藩士が吹っ飛ばされる。割り込んできたのは2人。1人は橙色の長髪に銀縁メガネ。平行四辺形の刃が柄の両側についた両刃の得物を持っている。もう1人は先の赤い白髪の無造作ヘアー。両手には先が湾曲した大ぶりのナイフがある。


「危ないところでしたね。ここは任せて、君は他の救援に向かって下さい。」


「流石に銃だと分が悪いわな。近接戦なら任せなよ。」


「…力樹さんと…、乃蒼さん?」


「正解。助けにきたよ。君はここじゃなくて狙撃が活かせるところに行った方がいい。」


「できれば貴船神社に向かってくれると助かります。あそこの担当と連絡がつきません。」


「…!わかりました!!ありがとうございます!!」


「気をつけなよ。」


輝登を送り出し、2人はいつのまにか周囲を取り囲んだ藩士たちに目を走らせる。


「背中は任せました。」


「あいよ。暴れちゃっていいの?」


「愚問です。行きますよ。」


逆方向に飛び出した2人は敵を切り崩し始めた。力樹は柄のところを回転させ、二つの平行四辺形の刃で周囲を圧倒する。乃蒼は両手のナイフを逆手に持ち、高速のステップで切り込む。集団の中央で回転し、周りを撫で切る。


「とにかく物量ですね。」


「たわいもな…」


異様な気配を感じた2人は言葉を切り、茶店の2階から飛び出す。茶店の窓を割り、空中へ飛び出した2人がついさっきまでいた足元が爆ぜた。


「なん…ですか!?」


「!!あれ…!!」


乃蒼の視線の先には、ある店の屋根の上に立つ、黒光りする拳銃のようなものを構えた男がいた。


「…飛び道具…!!」


呻く乃蒼を残し、力樹が思い切り跳躍し、男との間を詰める。


「!!」


男はそれに対応するように後ろ跳びをし、力樹の間合いから外れる。置き土産として銃弾を一発放つ。力樹は武器で弾くが、その隙にまた男は発砲する。


「くっ…きりがないですねっ…!!!」


たまらなくなった力樹は仕方なく射線から逃れるために店の合間に入り込む。


▲ ▲ ▲

跳んでいく力樹を見守っていた乃蒼の方も、非常にまずい状態に追い込まれていた。


「なんだこいつら…強くない??」


肩から血を流す乃蒼。目の前には3人の藩士。あらかた雑魚藩士は片付けたと思ったら急に出現したのだ。全員着物を着流しており、1人は二刀流で他2人は一刀流だ。


「多勢に無勢…」


乃蒼は焦って斬りかかっていくが、二刀流の藩士に片方の刀だけで受け止められ、もう一方を振り下ろそうとする。他2人も駆け寄ってくる。乃蒼は後ろに飛びすさり距離をとった。


しかし彼は、この時少し開けた川辺に出てしまった。銃声がする。先ほどの男が発砲したのだ。


乃蒼に、弾丸が迫る。


▲ ▲ ▲

澪とつばさは貴船神社に現着した。

そこで一番に目に入ったのは。

白い白衣から伸びた右手が千切れとんだ、無惨な姿の真名であった。


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