393話_sideout_結界内_夜
どことも知れぬ路地裏で、ケイは建物の壁に背を預けて呼吸を整える。
小休止のつもりだったが、酷使されて疲労が蓄積した足腰から力が抜けて、そのままズルズルと座り込んでしまう。
聞こえるのはケイ自身の荒い息と、時折、遠くから響く修道士の声だけ。活気と熱気に満ちていたはずのロイエンタールの街からは人間の気配が消え、静寂に包まれていた。夜になり、陽が落ちれば街中のそこかしこで明かりが灯り始め、そして夕食時の客を呼び込む食事処が、空腹を刺激する匂いを漂わせ始める。
それがある。人々が生活している景色がある。なのに人々が居ない。
「結界……」
街から人が消えたのではない。人が居ない街にケイだけが閉じ込められたのだ。その特異な事象から察するに、寺院を守っていたものと同じような論理結界の類を修道士クロスが行使して、ケイはその内部に囚われたのだろう。ケイは武にも魔法にも秀でた技術や知識を持たないが、こと魔法に対する感覚だけはずば抜けている。それはケイの身を侵す呪詛の副次的な作用でもあり、同時にケイが呪詛に侵されるそもそもの原因である並外れた魔法的素養の齎す感覚でもあった。
だから原理もなにもわからないが、ケイは自身が囚われたことも、それがどういうものであるのかも感覚的にわかっていた。
『――――そろそろ、覚悟を決めてもいい頃では?』
どこからかクロスの声が聞こえる。
耳元で囁かれているようにも、遥か遠くから呼び掛けられているようにも聞こえる。方向も判然とせず、大きくも小さくもない声だ。ここが彼の構築した結界の中であるならば、なにも不思議なことではない。結界の主が結界の中に居る者に話し掛けているだけだ。
『どれだけ逃げても、無意味ですよ』
正直なところ、ケイには彼の目的がさっぱりわからなかった。
結界に囚われてしまったケイに出来ることは、クロス本体に捕まらないように逃げ回ることだけだった。それとて、意味があることなのかはわからなかった。だが、もしこの結界が範囲を区切って閉じ込めるだけのものだとすれば、結界内で逃げることには意味がある。そうしてケイが時間を稼いでいるうちに外に居る友人達が事態に気付いて、外から対処をしてくれるかもしれないからだ。
そうして一縷の望みを捨てずに走り続けたケイだが、ただでさえ呪詛のせいで弱った身体は既に限界が近かった。
考えたくはないが、リュウ達による救援も望みは薄いだろう。ケイが結界に囚われたのはまだ陽が高い時間帯だったのに、結局助けはないままに夜が来てしまった。結界の内外で時間の流れが違う可能性は否定出来ないが、それを考え始めたらキリがない。
「…………っ」
誰も助けてくれない。
ケイは泣きたくなる心を叱咤して、壁に手をついて震える脚で立ち上がった。
友人達が現れないということは、きっと彼等もそれぞれに窮地に陥っているということだ。だからケイが泣いている場合ではない。誰も助けてくれないならば自力で救済するしかない。そして自分が逆に友人達を助けるのだ。
やるべきことはわかっている。
この結界の中に居るのはケイと、そしてクロスだ。
逃げ続けても意味はない。ケイがこの結界を脱するための唯一の手段は、術者であるクロスを打倒することでしかない。彼を倒せば、その手勢を退かせることが出来るかもしれない。そうすれば友人達を助けられるかもしれない。
だから、ケイはやるのだ。
やるしかないのだ。
きっと、それこそがクロスの狙いであるとなんとなく察していたとしても、それしかないのだ。
逃げるのを止めたケイが感覚の導くままに歩いていくと、クロスは広い十字路の中心に佇んで待っていた。ここはロイエンタールの中心街に程近い場所であり、寺院に籠っていたケイは直接訪れたことはないが、友人達の話を聞く限りでは普段はそれはもう賑やかな通りなのだろう。
煌々と灯りを焚いた食事処からは食欲をそそる匂いが漂ってくるが、客も店員も居ない。
交通の要所でもある十字路には多くの馬車が行き交うのも珍しくないのだろう。陽が落ちた時間帯では数こそ少ないがいくらかの馬車が散見され、しかし往来の真ん中で停止した馬車には御者も居なければ馬も居ない。なんの音もしない結界内には、人だけでなくあらゆる動物が消えてしまっているのか、とケイはぼんやりと実感する。
ケイを待ち構えていたクロスは悠然と佇んでいるだけで、相変わらずの微笑みを浮かべたまま、武装した様子もない。
彼がなにを言うよりも早く、ケイは動く。
敢えて、疲れ果てた足取りを隠すこともなく歩いてきたのだ。これまで結界内を逃げるケイの姿を把握してきたクロスにとって、ケイが疲労困憊であることなどお見通しに違いなかった。だから、その通りだぞと主張するために、ケイは必死に歩いてきたのだ。
全ては、邂逅のこの瞬間。
ただ一度だけの油断を誘うため。
ケイの身体に巣食う呪詛は、ケイの魔力系と密接に結びついている。故にケイは呪詛を受けて以来魔法を満足に使えない身体になった。魔力を活性化させることは、呪詛に活力を与えてしまうことに繋がるからだ。ケイは自身の魔力ごと呪詛を抑えつけることで生き永らえてきたと言ってもいい。魔力を抑えつけたケイの肉体が徐々に弱っていたのは、魔力とは生命力とも密接に関わっているものだからだ。
このただ一撃のためだけに、ケイは久方振りに自身の魔力を解き放つ。
抑圧された魔力が、呪詛と共に溢れ出し、ケイの身体を隠していた外套を激しくはためかせる。フードが落ちて露になったケイの双眸は黒く染まり、美しい亜麻色の頭髪からは一気に色が抜け落ちて白く染まる。
きっと、今の自分は魔物にしか見えない酷い姿をしているのだろうと、ケイは自嘲気味に思いつつも。
白い髪だけは、リュウ君のアヴァターとお揃いみたいで、ちょっと悪くないな……なんて。
解放された魔力は抑圧されてきた分だけ勢いよく荒れ狂い、ケイに通常を遥かに超えた瞬発力を齎した。
奇しくも、その動きはまさしく魔物のそれであった。
ただの一蹴りで、ケイはクロスとの間合いをゼロにする。音を置き去りにする踏み込みは、反動で自らをすら傷付けつつ、一瞬にして襤褸のようになってしまった外套を空気との摩擦で焦がしながら、ケイは右手の手刀で正面を穿ち抜く。
武技もなく、大した魔法を身に着けても居ないケイに出来ることは、ただ膂力に任せた原始的な暴力だけであった。
しかしただ一度きりのオーバーブーストが、単純極まる攻撃に強力無比な破壊力を与えていた。
「…………」
そして、無音だった。
声はなかった。
焦げて千切れ飛んだ外套の残骸が灰となり、季節外れの雪花のようにひらりひらり舞う。
その只中で、ケイが繰り出した渾身の一撃は、見事に標的を外していた。
「…………え?」
ケイには、なにが起きたのかわからなかった。
確かに自分はクロスの胸の中心を狙って攻撃を繰り出したし、この期に及んで手加減をするつもりなんて一切なかった。
半ば以上魔物と化したケイの一撃に、直前までの油断もあってかクロスはまるで反応出来ていなかった。そもそも肉眼で追える速度ではなかったはずだ。防御魔法の類にぶつかった感じもなかった。
一切の抵抗なく、ケイの手刀は真っすぐに進み、そして何故か空振ったのだ。
なによりも理解し難いのは、そんなケイの伸ばした腕のすぐ横に変わらぬ姿勢で佇んでいるクロスが、ケイの視線で見る限り、ただの一歩すらも動いていなかったということだ。
理解出来ない状況に凍り付く思考を許さぬように、ケイの脳裏で不穏な脈動が大きく響く。
「くっ、つ…………あがぅ」
解き放たれた呪詛がケイの魔力を貪って爆発的に進行している。頭が割れるような尋常ではない苦痛の中、ケイはその場に蹲って身体を丸めて、必死に魔力の脈動を抑えることしか出来ない。
ケイの頭上から、クロスの嘆息が聞こえた。
「大して期待もしていませんが…………やはりゴミでしたか」
「ご……み……?」
「そうです。ゴミです。貴女のことですよ」
穏やかな口調でそう言って、クロスは無造作に、蹲るケイの顔面を蹴りつけた。
「がっ!?」
ブーツの爪先で強かに鼻柱を蹴られ、ケイは為す術もなくひっくり返って地面に倒れる。
その姿を見下ろして、クロスは笑みを消し、悲痛な面持ちで呻く。
「なんということだ……! 気付いていますか? 顔面を蹴られて血の一滴も出ない。最早その身は魔物に堕ちてしまったということですよ」
クロスの言葉の通り、ケイは蹴られた衝撃こそ受けたものの、ダメージは殆どなかった。
魔力を伴わない物理攻撃が通用しないという魔物の特性ゆえのことであった。
しかしケイにそれを気に病んでいる余裕などない。活性化した呪詛の齎す激烈な苦痛が、割れんばかりに頭を揺らしているからだ。
「ですがご安心なさい。貴女は残念ながらゴミでしたが、我らが主はゴミにも救済の手を差し伸べる」
大仰に告げた後、クロスは元通りの柔和な笑みを浮かべて明後日の方向を見た。
「どうやら、無作法な客人も来たようですね」
◇◇◇
ケイを救うため、ルークと別れて修道士の気配を追ったマルグリットであったが、その場に辿り着いた時には既にとっくりと日が暮れていた。気配を追うなどと言えば多少格好もつくが、実際のところは魔力が訴える違和感をわけもわからず辿っていただけで、確証などあったものではない。
人々が消えた街並みは時折結界の外の光景を更新して反映しているように、御者の消えた馬車の位置がコマ送りのように動いたり、誰も居ない食事処の店先の灯りが勝手に灯ったりしている。こんな状況でなければ不思議で幻想的な光景と言えなくもなかったが、背景を考えればマルグリットにはどうにも不気味な景色としか思えなかった。
マルグリットが彼等の姿を視界に捉えた時、広い十字路の中心近くに修道士が立ち、その足元にケイが倒れていた。一刻の猶予もないと判断したマルグリットは走る速度を上げて、片手のレイピアを振り抜いて魔法を唱える。
「『輝く槍火』ッ!!」
マルグリットが身に着けている数少ない遠距離攻撃手段の光属性射撃魔法。
練度の未熟さもあって射程が短く威力にも乏しいそれは、至近にいるケイを傷付けずに修道士のみを牽制する手段としては図らずも最適であった。修道士は慌てた様子もなく、片手で防御魔法を展開して攻撃を防ぎつつ、もう片方の手でケイの身柄を押さえようとしたようだが、伸ばした手の先にケイの身体が無くて意外そうな顔をした。
マルグリットの接近に修道士が気を取られた一瞬を見逃さず、ケイはよたよたと頼りない動作ながらも必死の形相でその場を離れていたのだ。ケイを盾にされるとマルグリットは即座に詰んでしまうので、その決死の行動には賞賛を送りたい気分だった。
そのまま剣戟の間合いまで踏み込んだマルグリットがレイピアを振るうと、修道士は後方へと下がって回避した。ただ魔力が乗せられただけの斬撃を躱すにしては少々大袈裟な動きであったが、その分だけ距離が開いたのでマルグリットにとっては好都合だ。
蹲るケイを背後に庇って、マルグリットは修道士を見据えてレイピアを構え直した。
「魔物を庇うのですか?」
この状況で笑みを浮かべている胡散臭い修道士がそんなことを問うてくるものだから、マルグリットはつい普段の調子で威嚇してしまった。
「ああン!?」
「友愛は確かに素晴らしいものです。しかし時に眼を曇らせてしまう。良く御覧なさい。貴女が背に庇ったそれは、果たして本当に人間ですか?」
説法顔で修道士が促すので、マルグリットは肩越しに背後をちらっと見てみた。
酷く苦しんでいた様子のケイはようやく若干落ち着いてきたのか、脂汗で髪が張り付いたお世辞にも綺麗とは言えない顔でマルグリットを見上げてくる。あれから更に呪詛が進行してしまったのか、マルグリットの知っている顔よりも、今の彼女はだいぶ雰囲気が変わってしまっている。
とはいえ、ケイはケイだ。勿論魔物などではない。
「人間だけど?」
「……認められない気持ちはわかります。しかし」
「うっさい黙れ! てかあんた誰だよ!?」
マルグリットは修道士の言葉を強引に遮って叫ぶ。マルグリットは自身の頭の出来がよろしくないことを自覚している。聖職者に理路整然と滾々と諭されたら、それがどんなに理不尽で荒唐無稽な論法であろうとなんとなく正しいような気がしてきてしまう、有り体に言って騙される側の人間であるということを自覚している。
だって今まさに修道士の言葉に釣られて一瞬ケイの姿を確認してしまった。
故にマルグリットはもう最初から聞かないことにした。
聞かなければ効かないので無敵だ。
それともう一つ、こんな状況になってから言うようなことではないかもしれないが、実はマルグリットはそもそもこの修道士が何者で、なんのためにケイを狙っているのかもまったく知らないのだ。
可能な限り力になる、とリンと交わした約束だけを縁にここまで来てしまったが、事情を知らないので落としどころがまったくわからないし、どうすれば修道士を退かせることが出来るのかもわからない。
「これは失礼。申し遅れましたが、私は教会黎明機関に所属しております、クロスと申します」
「……そのクロスさんが、なんであたしの友達をいじめてるのさ」
「いじめているつもりはありませんよ。私の目的はそちらのゴミを救済することですから」
ぴくり、とマルグリットの眉が動く。
「まさか、その『ゴミ』ってのはあたしの友達のことを言ってるんじゃないだろうな?」
「ええ勿論。ゴミを友人と呼ぶとは、貴女は実に大らかな心をお持ちのようだ」
「それは勘違いよ。だって今まさにブチ切れそうだもん」
別にマルグリットは言うほどケイに友情を感じているわけではない。それなりに言葉も交わしたリンであればともかく、ケイとは知り合い程度の交流しかない。
だからと言って、見知った相手をゴミ呼ばわりされるのは普通に不愉快だし、何より恥ずかしげもなく他者をそのように呼ばわる人間の常識と品性を疑う。
「しかしですね、そう睨まれましても私としては、これ以外にそれを表現する言葉を持たないのですよ」
「語彙力」
「いえいえ、そうでなく。本音を言えば私はそれは既に魔物であると考えていますが、貴女も友人と思う相手を魔物呼ばわりされたくはないでしょう? ですがさりとて人間ではない。だからゴミです。魔物に堕ちた人間のゴミ」
「まるで、魔物よりはゴミ呼ばわりのほうがマシだって口振りだ」
「違うのですか?」
マルグリットは早くも投げ出したくなってきた。このクロスなる修道士との対話を、である。
話が通じる気がまるでしない。黎明機関こんなのばっかか、とただでさえ少ない信仰心が燃え尽きそうになる。
言うまでもないが、マルグリットの常識で言えば『魔物』も『ゴミ』も人間を称する言葉ではないし、どちらがマシとかではなくどちらも等しくあり得ない侮辱だ。
「まずは剣を下ろしなさい。私は言葉を尽くすことを厭うつもりはありません。全てを説明しましょう」
勝手に話せ、とばかりにマルグリットがレイピアを構えたまま無言を貫いていると、クロスは物憂げな息を吐いたものの、すぐに笑みを浮かべて語り始めた。
「私の目的はそれを救済することであると申しましたが、もう一つあります。全ての元凶である魔物、ベルフェルテを討伐することです」
マルグリットにとっては知らない名前であったが、ケイがここに至るまでの事情を先日、本人の口から聞いていたマルグリットは、一つ思い当たることはあった。
「『緑后』とかってのじゃなくて?」
「リョクゴウはベルフェルテの数ある名前の一つに過ぎません。ヒンジス帝国では『ヴァスティハ』、紅爛では『魄己』、そして大峰では『緑后』……百年以上の時を、奴は名前を変え複数の国を渡り歩いてきたのですよ」
「それで、この人をいじめればリョクゴーだかベルヘルテだかが怒って出てくるって?」
マルグリットがケイに聞いていた話では、緑后はなんらかの目的があってケイに呪詛を掛けたのだから、ケイを狙えば緑后が己の目的を守るために出てくるという発想は、まあわからなくはない。
ケイを損なおうとするという行為自体が、ケイを救済するというクロス自身の言葉と真っ向から対立しているという一行矛盾のお粗末さに目を瞑れば、であるが。
「長いこと歴史の裏で暗躍してきたようなヤバい魔物が、見え見えの罠に掛かりに来るとは到底思えないんだけど?」
「でしょうね。しかし、ベルフェルテにとってそのゴミ――失敬、それが代替のきかないものであれば、破壊される前に出て来ざるを得ないはずですから」
まるで教師が生徒に諭すように、あまりにもクロスが平然と言うものだから、マルグリットは一瞬反応が遅れてしまった。
「破壊だって?」
「ええ。最終的には」
「だっ、いや、おかしいでしょ! ケイさんを救うんじゃなかったの!?」
救うことが目的の一つだと語った舌の根も乾かぬうちに正反対のことを言い出すクロスに、マルグリットは思わず声を上げてしまった。
ちなみに、どうにも胡散臭さが拭えない修道士に渡る情報は出来るだけ少ないほうがいいと考えて、マルグリットは意味があるかはともかくとして一応ケイや自分の名前を出さないように会話していたのだが、そんな小賢しい目論見が吹っ飛ぶ程度には虚を突かれた。
そして、クロスはというと、ケイという名に反応を示した。
「もしや、ケイというのはそれが呪詛に侵される前の女性の名前ですね。ああ成程、貴女の憤りの理由がようやく理解できました。これは私の不徳ですね」
一人で得心した様子のクロスに、マルグリットは眉を顰める。
言うまでもなく、マルグリットには彼が何を言いだしたのかがまるで理解出来ていない。
「私はなにも、そのケイという女性をゴミ呼ばわりしたわけではありませんし、そんなつもりは毛頭ありませんよ。そのように聞こえてしまったのであれば、心より謝罪します。申し訳ございませんでした」
本当に深々と頭を下げられて、マルグリットは困惑よりも先に、薄ら寒いものを覚えた。
だって、クロスが本気でこれを言っているのだとすれば、今まさにマルグリットが背に庇っているケイは、彼にとっては一体なんなのか。
「謝る相手が、違うでしょ……?」
「? ええ勿論、理解しておりますが。故人に詫びるには、この場では少々……」
「故人……!? いや、ケイさんはここに居るでしょ!?」
一体なんだと思ってるの、とマルグリットが声を荒げると、クロスは眉根を寄せた。
まるで、マルグリットの言わんとするところがよく理解出来なくて申し訳ない、とでも言いたげな顏であった。
その絶妙に困ったような顔で、クロスは言う。
「……ですから、それはゴミでしょう?」




