↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪逆令嬢のうろ覚え救済論(旧題:輪廻転生って信じる?)  作者: Lynx097
七章_小夜啼鳥は朝を待つ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

463/951

392話_sideout_某所_夜のはじめ




 蒼い雷光と化したルークは鋭角的な軌道で以てドルチェの側方に肉薄し、そのまま斬り抜けるつもりで大剣を薙ぎ払った。激しい閃光とスパークを撒き散らした一撃に、ルークが覚えたのは鉄塊をぶん殴ったような硬質な手応えだ。

 歯噛みするような気持で、しかしルークの顔面には好戦的な笑みが浮かぶ。


 防ぎやがった――ッ!


 ドルチェは間違いなく、ルークの動きに反応出来ていなかった。にもかかわらず、彼女は義体の腕を折り畳んで防御態勢を取り、ルークの斬撃を堅牢に弾き返したのだ。義体のせいか見た目よりも非常に重たいらしいドルチェの身体は、しかし圧倒的な速度差によるエネルギーをもろに受けて砲弾の如く吹っ飛んだ。

 その姿を見据えるルークの翠色の瞳と、ドルチェの灰色の瞳が、視線で交錯する。認識外の速度から叩き付けられた攻撃を辛うじて防いだにしては、ドルチェの顔に驚愕の色は見えない。


 見えてんのか……?


 試してみよう。とルークは大剣を構え直し、ブーツの靴底でざりりと地面を噛む。ルークの視界には自身が展開している結界が作り出す光のレールが見えていた。大剣を投射する磁力のレールだ。

 磁性体の大剣を弾体とし、電磁力によって駆動力を与える。

 ルークの大剣はそもそもこのために造られた特別製なのだが、さりとて無茶な使い方には違いないので消耗は早い。またロイドにどやされるだろうな、と心の片隅で自嘲しながらも、ルークは魔力と磁力を解き放つ。

 常人の視界には像すら残らない速度で、ルークは鋭角を重ねたジグザグな軌道を描く。一直線に進めば最も速いのは道理なのだが、それをすると少々速過ぎてルーク自身が認識出来ず、気付けば相手を通り越すどころか建物の壁に埋まってぶち抜きかねない。故に敢えて複数回の方向転換を行う軌道を描くことで進路の把握と補正を行っているのだ。

 虚空を斜めに寸断しつつ進むその姿は、まさしく雷光の如く。

 再び認識の外から大剣を叩き付けたルークに、ドルチェはまたしても防いで見せた。先の一撃はなんとか義体を割り込ませたという風であったが、今度はしっかりと防御を合わせてきた。


 攻撃の余波で吹き荒れる豪風がドルチェの頭に乗ったウィンプルを揺らし、一息に奪い去ってしまった。その下から現れたのは、癖っ毛気味な白いショートヘアと、両のこめかみから後頭部までをぐるりと覆う金属製のサークレットだった。

 既視感のあるデザインは手足の義体と同じものだとルークが察するのと同時、サークレットの装飾のように見えていた複数の丸い宝玉がキロキロと奇妙な動きを見せる。ドルチェの頭を覆うように等間隔で配置された赤色の宝玉の正体は――



「『眼』か……ッ!?」


「ドルチェには、眼もいっぱいあるのだ!」



 ドルチェには文字通りの意味で死角がないのだ。元来の双眸で前方を視認し、側方から後方にかけてはサークレットに等配された義体の眼で視認している。ウィンプルを被っていても視えていたようなので、衣服を透過する視界を持っているのか、あるいは光の像ではなく温度などで周囲を認識する視界なのかもしれない。

 そして、義体の瞳が天然の瞳と比べて性能的にどうなのかは定かではないが、手足の義体の高性能さを思えば、むしろドルチェは死角に回られたほうが良く見えるのではなかろうか。

 ルークの大剣を受け止めたドルチェはそのまま振り抜き、剛力に弾かれたルークは後退して手頃な建物の屋根に着地した。建物の間を張り巡らせた糸の上に蜘蛛宜しく屹立するドルチェを警戒しつつ、ルークはゆるりと視線を巡らせた。マルグリットと一緒に行動していた時から少なからず違和感を覚えてはいたが、あまりにも静か過ぎる。ロイエンタールの街の中心地からは外れているとはいえ、陸刀会の寺院があった地区に比べれば建物も多いし民家もそれなりに見られる。だというのに、これだけやらかしても住民が誰一人顔を出しやしない。



「修道士の結界の中か」



 先程マルグリットが感じ取っていた違和感というか結界の気配のようなものにルークはまるで気付くことが出来なかったのだが、マルグリットが修道士を捕捉したからなのか、あるいはルークが結界の中に取り込まれたからなのか、現在は僅かだが結界の存在を感じ取ることが出来ていた。



「そうなのだ。そもそも、おにーちゃん達が結界の中に入ってきたから、修道士様はドルチェに遊んできなさいって言ったのだ」


「どういう結界なんだこれ。俺達以外の人が居ねえのか?」


「知らないのだ!」



 元気に言い切ったドルチェに、ルークも端から期待はしていなかったので「あっそう」と返した。

 人が居ないというのがルークにとって都合がよいかというと、良くも悪くも半々である。ルークの戦闘スタイルはかなり気を遣ってやらないと周囲に洒落にならない被害が出がちなので、巻き込まれる部外者が居ないのは気兼ねしなくて済むという意味で僥倖だ。しかし、それは同時に外部からの助けを期待出来ないということでもある。ルーク自身はともかくとして、マルグリットが孤立無援を強いられてしまう。

 やはり、早くこの場を片付けてマルグリットを追わなければ、とルークは大剣を構え直す。

 応じるように六腕を広げたドルチェだが、見れば細く長い義体の腕はルークの攻撃を防いだことで一部が曲がったり凹んでしまっていた。ただ、動作にはまるで問題がなさそうだ。



「おにーちゃん。弱いって言ってごめんなさいなのだ。そんなに弱くないのだ」


「そらどーも」


「でもドルチェのほうがやっぱり強いのだ!」


「どうかな!」



 雷光となって真正面から突撃したルークへの歓迎は、密度が高過ぎて最早壁のようにしか見えない糸の濁流であった。それに遮られてルークからドルチェの姿は見えなくなっているが、一体どこからどうやって糸を出しているのか見当もつかない。どう考えても義体の腕から飛び出す範疇を越えまくっている。

 死角に回り込む意味は薄いとして最短距離を最高速でぶち抜こうとしたルークであったが、当然ドルチェも相対的に正面こそが弱点だと理解しているので、させはしないと大雑把な空間攻撃を置いてきたのだ。

 ルークは制動がてらに真正面に大剣を振り抜き、ドルチェの糸を迎撃する。放つのは雷属性斬撃魔法『割り裂く雷刃(ライトニング・セイル)』。大海を往く帆船の如く、空間を切り裂いて進む大規模魔力斬撃である。速度には乏しいが威力と直進性は凄まじいものがある。

 蒼色の魔力斬撃はドルチェが放つ糸の濁流と激突し、一方的に焼き消しながら直進する。迎撃の反動を利用して進路を変えたルークは、再びの鋭角軌道によってドルチェの側面斜め上方から躍り掛かる。義体の瞳に捕捉されていようが、避けようがなければ問題ない。比較的低速で直進する魔力斬撃と、高速で回り込んだルーク自身による同時攻撃であった。

 ドルチェの回答は、



「だいっ!回転なのだぁ~!!」



 放射状に広げた六腕が、火を噴いた。

 仕込み武器なのかなんなのか、義体の拳の辺りから放たれた火焔がドルチェの身体に推力を与え、軸足を起点に高速回転する。地上で使ったら地盤を掘って埋まりそうな勢いであったが、ドルチェが足場として使っている糸は切れる素振りもなく、むしろ接触面積の極端な少なさから摩擦による抵抗を軽減することに一役買っている。

 直線移動と旋回の違いはあるものの、単純な速度比較で言えばルークに比肩するほどの速さ。ルークの魔力斬撃を苦も無く弾き散らし、ルークの大剣をも弾く。

 ルークの移動速度は肉眼で捉えられる領域を越えているが、そこにはルーク自身の認識能力以上には加速出来ないというセルフリミット的な制限が存在している。そしてドルチェが持つ義体の瞳の性能はおそらく人間の瞳の性能を凌駕しており、多少なりともルークの速度に対応出来ているようだった。



「逃げるなら……こうなのだ!」



 次にドルチェは糸をぶちまけた。一瞬前に一点に束ねてルークの突撃を防ごうとした糸束を、今度は広範囲に伸ばしてきたのである。どうやって展開しているのか謎だった量の糸は、最初と変わらずドルチェの義体の先から出て、途中で明らかに物理法則を無視した膨脹を見せている。これだけ景気よく放出出来る点からも伺えるが、どうやらドルチェの糸はフェムトファイバー的な性質を有する半物理的なものから殆ど魔力塊に近い術理的なものまでを自在に使い分けられるらしい。

 物量がおかしいのもそうだが、そもそも物理的な糸が先端に矢でも付いているみたいに虚空を疾駆して伸びてくるのがまずあり得ないのだ。それがあり得てしまうのは物理ではなく術理に多くの比重を置くオブジェクトであるから。

 それ即ち、ドルチェの魔力が続く限りはいくらでも出せるということに他ならない。

 ルークがいかに速くとも、避ける隙間がない程に糸で埋め尽くしてしまえば関係ないという、なんとも子供らしい単純な発想であった。



「それはよ、失敗だと思うぜ?」



 鉄を寸断する糸の群れに、高速で突っ込めば自分からバラバラになる。そういう意味ではドルチェの行動は理に適っていた。

 ただしそれは、糸で切れる相手にしか通じない。

 生身ならばまだしも、雷となって術理化したルークの肉体は、魔力糸ごときで切れはしない。まあ糸の密度が高くなれば一概に効かないとは言い難いが、密度を捨てて範囲を取った糸の群れは、今のルークにとっては障害となり得ない。

 よってルークは糸の群れを全身で焼き切りながら、躊躇なく真正面からドルチェに突っ込んだ。電磁力で大剣を投射する戦法において、最も強力な剣撃とは何か。


 刺突である。



「どらあああああああッ!!!!」


「うぎゃああああああッ!!??」



 自身を巨大な槍の切っ先として突撃したルークに、まさか糸の群れをものともせずに突っ込んでくるとは思わなかったらしいドルチェは涙目で絶叫し、しかし彼女自身の恐慌振りとは無関係に、別の生物のように勝手に動いた六腕がルークの攻撃を辛くも受け止める。

 大剣の切っ先を上下左右から圧し潰すような、荒々しいにも程がある白刃取りだ。

 高速回転の際に火を噴いたのは、どうやら義体の手首の辺りに仕込まれた推力装置のようで、ドルチェが六腕を使った移動を駆使していたことから察するに、手首に推進装置を有する意味とは移動補助であると同時に、勿論腕なのだから打撃力向上にも使えるのだろう。その能力をフルに発揮したのが、六腕白刃取りであり、一撃で人体を貫通して余りあるであろう威力の打撃を六本分重ねてようやく、ルークの突撃の威力と拮抗出来たというところだ。

 勢いのままに切っ先にドルチェをくっつけたまま飛び抜けたルークは、その時、金属がぶつかり合う音を聞いた。度々耳にしているそれは、ドルチェの義体に仕込まれた機構が作動した時の合図であった。



「うりゃー!」



 と、ドルチェが技も何もあったものではない駄々っ子みたいな動きで片脚を振り上げる。勿論、ルークの身の丈ほどもある大剣の切っ先を掴んでいるドルチェが、その場でどれだけ足を振ったところで刀身を叩くのが精々であり、ルークの身体まで届くわけがない、というわけでもないのは振り上げた彼女の足が、実は足首に仕込まれたヒンジで二つ折りにされた構造であり、仕込み杖かなにかのように倍の長さに伸びたからだ。

 折り畳まれていたほうの足はそれそのものが磨き抜かれたエッジであり、つまり足の先端から足と同じ長さの刀身が生えたに等しい。



「いや、今更そんなんで驚くのは、」



 無理がある、と言いつつ切っ先を払い、ドルチェの身体を押し飛ばすことで仕込みキックを危なげなく回避したルークは、しかし即座に表情を引き攣らせることになる。

 ガチンガキンと音を立てて、ドルチェの六腕が性懲りもなく変形していたからだ。

 手首の推進装置が一回転して内部に引っ込み、変わりにずるりと出てきたのは、燻し銀な光沢を放つ、ルークにとってはなんだか既視感のありまくる金属の筒である。ルークはそこに、所属クランの先輩であるサマンサの眼光を幻視した。

 ちなみサマンサという女性は魔法銃のプロである。

 つまり、



「くらえなのだー!!」



 ドルチェの六腕が一斉に発射したのは、おそらく糸を織り上げて創られたのであろう白い弾丸であった。それは発射された瞬間から分解して放射状に広がり、射程の短い散弾となってルークを襲う。

 サマンサのおかげ(?)でなんとなく察していたルークは咄嗟に回避行動を起こすことが出来た。雷化して間一髪で離脱したものの、しかし散弾の攻撃範囲を完全に抜けきることは出来ず、左半身に数か所被弾してしまう。



「イ”ッ()――!」



 雷化した肉体に物理攻撃は殆ど効かないが、魔法は普通に効く。魔力で生成されたオブジェクトもまた然り。こういうもの同士がぶつかり合った時、ものをいうのは魔力の密度だ。密度が低いほうが低い分だけダメージを受ける。だから散漫な糸の群れは触れるだけで一蹴出来たルークであっても、押し固められた弾丸はそれなりに痛い。

 勿論、生身で食らっていれば痛いでは済まなかったのだが。



「まだまだなのだー!」



 ドルチェの追撃が来る。

 彼女の右手側の義体が音を立てて変形し、細い三本の腕に分かれていたそれが組み合わさって一本になる。人間の腕と同じ輪郭をした姿に戻った、と表現したほうが正しいだろう。そして彼女が振り被った右腕に、周辺から湧き立った白い奔流が集束していく。

 彼女がこれまでの戦闘で張り巡らし、放出してきた糸だった。それらは凄まじい速度でしゅるしゅると折り重なって形を成し、瞬く間にドルチェの拳を数十倍にも膨れ上がらせる。


 どう見ても明らかにパンチが来る。


 そんなルークの予想は普通に正しかったのだが、生憎とドルチェのパンチはルークの想像の十倍くらいは速かった。

 魔物との戦闘に慣れ過ぎていたルークには、巨体は鈍重であるという先入観があったのだ。それは魔物というものがスケマティックの集積体であり、重さを有するからこそなのだが、ドルチェのビッグナックルは魔力の糸を織り上げた魔力製の拳なので、重さもなければ空気抵抗もない。



「ぱーんち!」


「ぶへっ」



 間抜けな絵面だが洒落にならない威力でぶん殴られたルークは、雷を撒き散らして背中からぶっ飛ぶ。

 意地でも大剣は手放さなかったが、一瞬意識が飛んだ気すらした。

 ドルチェに付き合って半分空中戦に臨んでいたのが幸いした。背後が空だったからぶっ飛ぶだけで済んだが、これで背後が地面とか壁とかだったら叩き付けられて死んでいたかもしれない。術理化した肉体には物理的なダメージが通らないとはいえ、それはルークが意識して魔法を保っていればという前提なので、要するにぶん殴られて意識が飛んだらそのままぶつかって弾けて死ぬ。

 結界を利用して空中で制動を掛けたルークは、あまりの衝撃にぼやける意識をヘッドシェイクで強制的に覚醒させつつ、随分と遠くに離されてしまったドルチェの姿を探し、



「はは。まじか……」



 思わず半笑いが出た。

 ついでにたらりと垂れたのは鼻水ではなく、殴られたせいで鼻血が出たのだということにしておこう。

 というのも、拳だけでは飽き足らず、更に無数の糸を併呑してサイズを増していったドルチェは、既に見上げるような巨体に成長していたからだ。真っ白なそれを端的に表現するならば、超巨大な雲か雪のゴーレムだ。王国最大の騎士と呼ばれた男のアヴァターとでも取っ組み合いの喧嘩が出来そうなサイズ感だ。

 実のところは雲でも雪でもなく糸の集合体なのだろうが。要するに超巨大な人型の繭である。



『ほぉんきもぉぉぉぉぉどなぁのぉだぁぁぁぁぁ』



 内側から響くドルチェの声も大気に轟くように低く折り重なって聞こえる。

 造形にはこだわりがないのか、ドルチェを内包した巨大繭ゴーレムは一切の装飾がないつるりとした外観をしている。寸胴で短足だが腕が長いというシルエットは、たぶん義体込みのドルチェと同じような体型に形成した結果なのだろう。

 無人の街並みを蹴散らして破壊しながら、巨大繭ゴーレムが驀進してくる。

 例によって、サイズからは想像出来ない速さである。


 それを見据えるルークは、舌を巻くような思いであった。

 ドルチェという幼女に対する感服である。

 外見や言動からは想像だに出来ないことだが、つくづく大した戦士ではないか。なにせ無駄がない。どんな距離でも対応可能な能力を有していて、惜しげもなく糸を使い捨てたかと思えば、最後には切り札として無駄なく有効活用してくる。対人戦に強く、対軍戦にも強く、そして対魔物戦にも強いに違いない。

 それとついでに言うならば、



「ちゃんとお約束をやってくれるのはポイント高いぜ」



 雷を滾らせ、ルークは大剣を構える。

 ギャグにもなりやしない彼我のサイズ差。

 あの繭ゴーレムを前にすれば、ルークなど爪先で潰される程度のアリンコでしかない。



「最近ちょうど、親父の煽りが腹立ってたんだよな」



 そりゃあシリウスとて遊んでいたわけではないのはわかるが、あの父親ときたら、ことあるごとにルークに対して自慢をしてくるのだ。

 それはもう、サラマンデル種の件で。

 デカブツ撃破は討伐者の花形と言ってもいい。少なくともルークはそう思っている。だから偶然にもサラマンデル種と戦い討伐する機会に恵まれたシリウスを大層羨んだルークに対して、あの親父ときたら、年甲斐もなく『今どんな気持ち?』をやってくるのだ。



「デカブツを斬りてえと思ってたところだ」



 ドルチェは強い。

 能力も実力も認めざるを得ない。

 しかしながら、幼さだけは如何ともし難い。つまるところ経験不足と、論理的思考の欠如。

 仮にドルチェが理知的な大人であったならば、ルーク相手にこの繭ゴーレムという選択肢は取らなかったであろう。

 何故って、討伐者であるルークは、対人戦よりもバケモノ退治のほうが滅法強いからだ。


 振り下ろされる巨大な拳に対して、ルークの身体はこれまでの苦戦や負傷が嘘のように滑らかに動いた。長年の経験で魂に刻み込まれた討伐者としてのメソッドが、ルークの身体を衝き動かしたのだ。

 繰り出すのは再びの刺突撃。

 先回はドルチェの神業じみた六腕白刃取りに防がれたが、その巨体ではむしろ切っ先を掴めまい。


 迸るような放電を残して雷光となったルークは、ここにきてかつてない程に速かった。

 真っすぐに伸びる一筋の光だった。

 落ちてきた拳に対して真っすぐにスッと入り、音もなく貫通して、そのままゴーレムの頭部らしき部位に突き刺さり、やはり抵抗なく突き抜けた。


 無人の街並みの中で、巨大なゴーレムまでもが動きを止め、静止した絵画のような一時が訪れる。

 その静寂の中に小さく響いたのは、飛び抜けたルークが雷化を解いて軽やかに着地した足音であった。

 その手に感じた確かな手ごたえを疑うことなく、ルークは大剣を背に収め、そして振り返って言う。



「どこかの誰か曰く。悪役の巨大化は負けフラグらしいぜ?」



 などと、微妙に格好つけてしまうのも『どこかの誰か』の影響かもしれないな、と気付いたルークは一人笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やった!特撮回だ! 回転が始まった時は「ガ○ラ」か!と思ったが、怪人の類であったか。 [一言] ヒトと大きく異なる形態を取るから、それを操る脳はかなり特異な使い方をしてるに違いない。 補…
[一言] ほんま巨大化までする怪人の鑑や
[良い点] 戦闘シーンめちゃめちゃすき [気になる点] お子ちゃまは大きい=強いだからね仕方ないね そしてこの戦闘が結界内で行われてたようなので、ハイゼン姉ことプリムさんがこれを見れてないのがちょっぴ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。