342話_side_Rex_ちょっと前_クランハウス
~"主人公の幼馴染"レックス~
黒い森というのはそれ自体が魔物の一種であると言われており、魔物という存在が陽の下では活動しないように、黒い森もまた夜の間にしか活動状態にはならない。黒い森が活動状態になることを『森が開く』と言い、反対に休眠状態になることを『森が閉じる』と言う。故に討伐者という職種の活動時間もまた、森が開いている時間帯を基準とすることになり、つまりは陽が落ちてからが本格始動となるわけだ。
ここブラッドフォード領ロイエンタールで討伐者として活動し始めた俺達の生活リズムは、学院生活のそれとは一変している。活動時間が日中から夜間に変わったことで、その分だけ生活リズムそのものがずれ込んだと言える。夜に働き、明け方に帰り、昼まで眠り、夜に備える。そんな生活が一週間続き、ようやく身体が少しずつ慣れてきたというところだろうか。
なんだかんだでちゃんと順応するのだから、いやはや若いって素晴らしい。などと思う中身おじさんの俺であった。
さて最初の一週間はクレメンス氏が説明したように俺達の試用期間として設けられていた。大きな問題もなく、勿論脱落者もなく試用期間を乗り切った俺達は一日の休日を与えられ、英気を養って、今日から再び活動を開始する。
昼に起きた俺達はまずパーチでクリスティンが作った昼食を取り、それから『剣の誓い』のクランハウスへと向かう。日没を待たなくては黒い森に繰り出すことは出来ないから、それまでの間はクランメンバーを相手に鍛錬をしたり、勉強をしたり、買い出しに行ったりと様々である。基本的にはそれぞれが配属されたグループごとに活動しているので、他のグループの面子が何をしているのかは殆ど知らない。なのでここでの俺の相方は専ら、同じグループに配属されたノエルさんということになる。……のだが、今日に限っては俺の傍らにはノエルさんの他にもう一人の同行者がいる。
誰かというとミアベルである。
「ノエル達のほうはそんな感じなんだ」
「うん。ミアベルのほうは?」
「こっちはシリウスさんが『習うより慣れろ!』って感じの人だから……わたしはわりと性にあってる気がするんだけど、ティアは苦労してるかなぁ」
ミリティアさんが苦労している理由の半分はあの奔放過ぎるメイドのせいな気がしてならないが。
クランハウスの廊下を歩く俺の後ろでは、ノエルさんとミアベルが肩を並べて近況を報告し合っていた。俺達はパーチと名付けた共同住居で生活しているので、帰れば毎日顔を合わせることになるのだが、今日までの生活ではそれぞれが一杯一杯でそんな他愛のない会話をする余裕もなかったのだ。俺は曲がりなりにも騎士志望ということで相応に鍛えているから、まだ多少は余力があったが、マルグリット嬢以外の女性陣は本当に疲労困憊の様相だったからな。寝落ちした彼女等をクリスティンとリゼルが担いで寝床に放り込んだのも一度や二度ではない。
少しは慣れてきたとはいえ、今日のところは比較的元気なのは単に昨日が休日だったからというだけのことであり、まだ暫くは眠気と戦う日々が続きそうだ。
ちなみに俺とノエルさんの近況であるが、それなりに有意義に経験を積ませてもらっている。俺達が配属されたグループのリーダーはロイド氏という男性で、彼はこの『剣の誓い』の技術系を一手に引き受けているエンジニアの親分的立場の人物だ。勿論彼自身も討伐者であり、俺やノエルさんを率いて黒い森での活動も行っているが、まあ言っても技術畑であり、こなす依頼も基本的にはスケマティック収集や装備の実地検証的な側面が強い。ごりごり強敵を討伐してスコアを稼ぐ役割の戦闘班とは仕事の方向性が違うのだ。だから楽だというわけでは勿論ないが、ロイド氏自身が理論派であり、肉体的な労働を嫌う性質でもあるので、彼の率いるパーティーというのも自然とそういうスタンス――効率的に、低燃費――になるのだ。
その点、ミアベルも言ったことだがシリウス氏のパーティーに配属されたミリティアさんはだいぶ扱かれていそうだ。彼女はわりと運動音痴で体力も乏しいから余計に。ただ、そもそもこの活動の発案者がミリティアさん本人だし、彼女が何を思ってその決断をしたのか、協力者である俺にはよくわかるので、英雄伯の庇護のもと、甘やかされることなく存分に修行に励めばいいのではないかなと思っている。実際、ミリティアさんは間違いなく友人達の中で一番しんどそうな顔をしているが、弱音など一切ないし、思わずこちらの背筋が伸びるくらいに真剣に臨んでいる。彼女の執事のトビアスさんも、護衛のリゼルもそんなミリティアさんの真剣さが伝わるからこそ、それぞれの流儀で粛粛とサポートに徹することを厭わないのだろう。
そしてそれは、労わるような声音で彼女の近況を語るミアベルや、勿論俺も含んだ友人一同も例外ではない。
俺達三人が辿り着いたのは、クランハウスの奥まった一角に位置している部屋で、ロイド氏の私室である。まあ尤も、私的な空間というよりは圧倒的に研究室的な趣が強いのだが。
俺とノエルさんにとってはこの一週間通った場所でもある。
「ロイドさん。来ましたよ」
半開きになっていた扉を開けて室内に入ると、ロイド氏は作業台に向かってなにやら熱心にやっていた作業を中断して、魔法具の眼鏡を外しながら振り向いた。なお眼鏡は視力矯正用ではなく、魔力の痕跡を可視化する特殊な魔法具であり、魔法具職人にとっては必需品とも言える道具らしい。眼鏡だったりゴーグルだったりルーペだったり形態は様々だが。
ロイド氏は線の細い小柄な男性で、その身に纏った白衣のローブも相俟って、見るからに研究者然とした風貌をしている。実のところ、そもそも本業は研究者で、研究のために討伐者をやっている節があるようだが詳しいことまでは訊いていない。
「アトリーも一緒か?」
「はいな!居まっす!」
ぴょんこと手を挙げて存在を主張したミアベルに、ロイド氏は「そうか」と呟いて視線を逸らした。
あまり触れて欲しくなさそうなので敢えて口には出さないが、ロイド氏はどうやら女性への苦手意識が若干あるらしい。有り体に言えば、女性慣れしていない。そんな彼にとってはミアベルのような人懐っこい美少女は存在自体が劇物である。本人的には堪ったものではなかろうが、おじさんにしてみれば非常に微笑ましいことだ。ロイド氏は俺よりだいぶ年上だが、中身と比べれば充分に若者なので。
「お茶を淹れますね」
一週間も経てば勝手知ったるノエルさんが備え付けの魔法具で湯を沸かせてお茶の準備をし始めるが、ロイド氏はぶっきら棒に「ああ」と答えただけであった。ミアベルとタイプは異なるとはいえノエルさんも文句なしの美少女なので、つまりはそういうことである。これまで一週間の慣れの分だけ、ミアベルよりは耐性が出来ているというだけのことなのだ。
ロイド氏に促されて俺とミアベルはテーブルに着き、しかし彼自身は座ることなくローブのポケットに手を突っ込んでうろつきながら話し始める。
「クレメンスが設けた試用期間が終わったわけだが、俺からの評価としてはコーリッジもクライエインも及第点に達している。今後も活動を継続するに問題ないだろう」
「ありがとうございます」
「ロイドさんのご指導のおかげです」
茶器を用意しながらノエルさんがにっこり笑顔で言うと、ロイド氏は「ん」と「む」の中間みたいな唸り声を発した。
「アトリー含む他の学生達も聞くところによると上手くやっているようだな」
「はい!頑張ってます!」
「……まあ、ルークは言うまでもなく、ベリエも元々魔物との交戦経験はそれなりにあるのだから、ここで躓く方がおかしい。一番心配なのはハートアートだが、御付きのメイドに頼ることもなく食らい付いてるらしいじゃないか。シリウスはあれでシビアに見る人だから、その目に適った以上は問題あるまい…………言っておくがハートアートが心配だというのは、彼女が一番荒事に慣れていなさそうだったからという意味であって、他意はないぞ」
何も言ってませんって。
自ら墓穴を掘っていくスタイルのロイド氏に、ノエルさんも苦笑気味だ。なおミアベルがなにも察していないのは今更なので触れない。
「お前達からの希望がなければ、これまで通りの配属で今後の活動も続けるのが妥当だと考えているが、どうだ?」
試用期間はあくまでも試験的な配属なので、グループの気風や指導者が合う合わないの話は当然出てきて然るべきだ。ただ、今回の場合は事前にクレメンス氏がある程度こちらの適性を見極めた上での配属だったこともあってか、皆上手いことやっていけているので学生側から異動を申し出ることはない。
俺とノエルさんが揃ってその旨を伝えると、ロイド氏は言葉少なに「了解した」と告げたが、安堵したような気配が隠し切れていなかった。たかが学生からの評価とはいえ、ロイド氏は結構気にしてしまうタイプだろうしな。とりあえず俺とノエルさんから『No』を突き付けられなかったので安心したのだろう。
「じゃあ今日の本題に入るぞ」
ノエルさんが淹れてくれた紅茶を立ったまま飲みつつ、ロイド氏が見遣るのは俺とミアベルの姿だ。
普段はミリティアさんと一緒にシリウス氏の元に向かうミアベルが今日はこちらに居るのは、この『本題』のためである。
「試用期間で収集したデータをもとに、お前達の武器を調整した。今日からはこちらを使ってもらう」
そう言ってロイド氏が案内したのは彼が最初に居た作業台で、そこには大小二つの刀剣のようなものが置かれていた。片手剣サイズのそれがミアベルのもので、大剣サイズのそれが俺のものだ。
最初にギルドで装備を揃えた際に、ルークとマルグリット嬢以外の面子は武器を新調した。ノエルさんとミリティアさんはそれぞれ既製品の杖と弓を購入して使っているのだが、俺とミアベルは事情が異なる。俺についてはロイド氏からの提案で、ミアベルについては金銭的な事情で、既製品の武器を購入することはやめてロイド氏謹製の試作武器をデータ取りがてらに使わせてもらっているのだ。
一応補足しておくと、ミアベルの金銭的な事情というのは彼女の実家の経済力の問題ではなくて、ミアベルの魔法資質が強力過ぎるせいで並大抵の武器では出力に耐えられず、合うものを探そうとすると値段が軒並みべらぼうに高くなってしまうということが発覚したためだ。
「お前達の癖勘、魔力のキャパ、出力諸々、ある程度は把握できたのでそれを元に『マギアドライブ』を調整した。これでもそれなりに馴染むはずだが、最終的には実際に使用しながらの調整となる」
「まぎあどらいぶ?」
きょとんと呟いたミアベルに、ロイド氏は作業台に置かれた武器の一部を指差して見せる。
「柄と刀身の間にレンズ状の構造体が見えるな。その内部に見えている円盤状の発光体がマギアドライブだ。これは簡単に言えば自律思考する補助動力で、マギアドライブ搭載型の魔法具とは即ち『自分で魔法を使う魔法具』である」
要するに、補助AIが搭載されているようなものか、と俺は理解する。
この『マギアドライブ』という装置は既存の技術であり、学術都市国家ザンクシオンで雛形が作られ、北の帝政ディ・エンテにて実用化され、近年になってリヒティナリア王国でも見られるようになったものだ。
その正体は魔法モデルの集積体であり、複数の魔法モデルを用いて創られた演算回路によって自律思考をエミュレーションしているようだ。魔物という生命が魔法モデルであるスケマティックの集積体であるならば、マギアドライブは人工的に生み出された魔法生命であると言えるかもしれない。現時点では固有の意思を持つことはなく、あくまでも入力された情報を元に反復学習を行い、最適解を演算して実行するという装置に過ぎないが。
「自前で魔法を使える者がマギアドライブ搭載の武器を持つ利点はあるんですか?」
「現状では然程ないと言わざるを得ないな。技術が進歩してドライブの自律思考が更に高度化すれば魔法使いと分業を行うことで意義を見出せるだろうが、現状では魔法使い本人の劣化コピーにしかならない。ただしそれは使用者が熟達した魔法使いであればの話だ。お前達のような学生レベルであれば多少なりとも役に立つだろう」
魔法使いとマギアドライブが別個に魔法を使う――即ちロイド氏が言ったような『分業』という理想には届かなくとも、普通の魔法具を持つよりは間違いなく便利ではあるのだ。何故ってマギアドライブは使えば使うほどこちらの行動を覚えて合わせてくれるはずだから。そのためにロイド氏は一週間掛けて俺とミアベルの戦闘スタイルの情報を集めて分析してドライブに入力したのであろう。
「そしてこれはお前達への支援であると同時に、マギアドライブ開発のための試験であることも理解してくれ。この技術は王国ではまだ一般的ではない。俺も実用化したことがない。要するに武器と一緒に経験を積んでくれることを望む」
今回、『剣の誓い』が俺達を受け入れてくれたのは当然クラン側にも利点があってのことだろう。その一環がロイド氏に対する研究協力であるならば否やない。俺達にも少なからず恩恵のある話には違いない。
ロイド氏がこの機に乗じてマギアドライブの実用化を試行しようと考えたのは、おそらくだが俺達がテストベッドとしてもってこいの人材だからだろう。エンディミオン魔法学院の現役学生ということは、魔法的に高い資質を有していることが約束されていて、尚且つ発展途上なので変な癖がついておらず素直な応答性が期待出来るということだ。AIを育てたいが変なことを学習させたくはないロイド氏にしてみれば、またとないチャンスというわけである。
熟達の魔法使いに教示をさせればスムーズに強力なAIが成長するだろうが、それはどうあがいてもその魔法使いの専用機にしかならないのである。
「実用化が進んでいない理由は、教示に時間が掛かるからですか?」
「いや。それは技術的な問題ではなくシステム上避け得ない事象だ。そこが装置としての出来を決める以上、むしろ時間を掛けるべきだ。実用化の妨げとなっているのは一つはコスト面の問題だな」
「コストですか」
「ああ。なんせコイツは高度な魔法モデルの集積体だ。武器に搭載可能なサイズに収めようと思えばどうしてもある程度は既製品に頼らざるを得ない」
魔法モデルの既製品、などと言われて一瞬考えてしまったが、すぐに思い至った。
「なるほど。魔物のスケマティックを素材として要するんですね」
「そうだ。それも基幹部分には大型種から得るような希少かつ高度なスケマティックが要る。故に『剣の誓い』を以てしてもたった三基のマギアドライブを製造するのがやっとだ」
こともなげに説明するロイド氏だが、俺達は揃って顔を引き攣らせていた。
なんというものを託してくれるのだ。これで壊しでもしたら弁償でコーリッジ男爵家が傾くぞ。
ちなみに俺とミアベルの武器に搭載されたのが三基のうちの二基で、残りの一基は研究用にロイド氏が持っておくようだ。
「そんな顔をしなくても、故意に損なわない限りはお前達に責を問うたりはしない。黒い森で魔物相手に実地試験を行うのだからある程度のリスクは織り込み済みだ。高価だが、逆に言えば金さえ積めば作り直せるわけだしな」
ガワだけならば、と注釈が付くわけだが。
マギアドライブの本当の価値は内部に蓄積された情報と経験であると俺は理解している。
その遣り取りの中で疑問を覚えたらしいノエルさんが思案気に口を開く。
「でも、確かマギアドライブって帝国では量産されて軍隊に配備されてるんですよね。そんなに高価なはずないと思うんですけど」
「正しい。俺は帝国産の実物を持っているが、一言で言えば粗悪品だ。技術が足りないのではなく、おそらく意図的に質を落として量産に耐え得るコストカットを図ったのだろう。同程度のものであれば王国でも量産可能だろうが、まあ為されないだろう」
それは王国と帝国の軍事的思想の違いに起因することだ。
王国の軍略は前時代的で、根幹に根差しているのは騎士道である。要するに一騎打ちの文化であり、高じて突出した固有戦力を全体がサポートするという形態を取る。
対する帝国の軍略は先進的で、その根幹はマスゲームだ。とにかく戦力を均一化し、兵科ごとにユニット運用することを重視する。
どちらにも利点があるので、どちらが優れているという話ではない。王国の軍略は局所的に強力であるが、一個人の資質に頼らざるを得ないため替えも融通も効かないという欠陥を内包している。帝国の軍略は多方面作戦に秀でており、兵力が損耗しても即座に他から補充出来るという柔軟性がある。軍隊そのものが高度にマニュアル化されていて個人技を徹底的に排しているからだ。王国の強力な戦力が攻めて来たら帝国に太刀打ち出来る兵隊は居ないが、帝国の画一的な兵隊が多方面から攻めて来たら王国の一個の戦力では全てを止められない。
無論、帝国軍にも一騎当千の固有戦力は存在するのだろうが、運用思想が異なるため、帝国軍では自軍の人間であっても逸脱した存在を(建前上は)容認しないのである。
余談だが、この対比の縮図と言えるのが北の国境を守っているアシュタルテ侯爵家の働きである。即ち帝国が熱心に送り込んでくる侵略の魔の手を余すところなく撃退せしめているのは、偏に国境を守護しているのがアシュタルテ侯爵家という突出した固有戦力の権化みたいな連中だからだし、どれだけ撃退されても帝国の攻め手が尽きないのは工作員すらも画一化されており替えが効くからだ。
少し話が逸れたが、つまり帝国が実用化にこぎつけたマギアドライブは、原理が同じとはいえ実質的には別系統の進化系なのだ。
ここで疑問に思うのは、帝国ライクの粗悪なドライブであれば現状の技術でも充分に量産運用が可能なのに、何故王国ではそれすらも実用化しないのか、である。粗悪品でも使えるのだから、国軍に配備して損はないはずなのだ。
その疑問に対する答えは簡単で、つまりこのマギアドライブという技術は突き詰めれば魔法使いという特権階級の優位を脅かす可能性を秘めたものだからだ。故に保守派の王国貴族はあの手この手でこの技術の流入を阻んできたのだろうが、結局のところ、鎖国でもしない限りは国際社会の潮流には抗えないのである。
「というわけで王国は王国流のマギアドライブを開発するべきなのだが、実用化の妨げとなっているのはコストだけではない」
むしろ実際的にはこちらのほうが深刻だ、とロイド氏が告げるので、俺達は顔を見合わせた。
技術的な問題だとすれば、流石に見当がつかない。
「持ってみろ。話が早い」
促されて俺とミアベルはそれぞれの得物の前に立ち、作業台からそれを取り上げようとして、
「「おっも」」
綺麗にハモってしまう。
そう。尋常ではなく重いのだ。見た目は普通の刀剣よりもマギアドライブの分だけ肥大化して見えるのだが、言ってしまえばそれだけの違いだ。精々が二割ほども重量増があれば良いところだろうと思えるのだが、
「んにににににに!」
顔を真っ赤にしたミアベルが片手剣を両手で持ち上げる。
持ち上げられないほど重いわけではない。俺のほうもちゃんとそのつもりで力と魔力を籠めれば持ち上げることは出来る。だがしかし、これを武器として振るえと言われたら、相当な鍛錬を要するであろうことは明らかだ。
身体強化魔法を使えば~ではなく、今まさに、身体強化を使って持ち上げるのが精一杯なのだ。振り下ろすだけの鈍器としてならば使えるかもしれないが、剣としては使えない。こんなものを制動しようとしたら、筋肉や骨格のほうが瞬く間に悲鳴を上げるだろう。
明らかに見た目の体積や材料の比重と実際の重量が釣り合っていない。となると何が重量増を齎しているのかと考えれば原因は一つしかないのだ。
「魔物には実体があるし、当然重量もある。同じく魔法モデルの集積体であるマギアドライブもまた然りだ」
つまり、とロイド氏は嘆息する。
「マギアドライブが高度化すればするほどに、滅茶苦茶に重くなるわけだな」




