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第357話 再会③

 別室に案内されると、落ち着かない様子で部屋の中を歩き回っているルトルスとミリアの姿があった。


「シェーナ!」


 一目散にルトルスが駆け寄ると、シェーナの懐に飛び込んだ。


「ごめん、心配かけたね。ルトルスはどこも怪我とかしてないかい?」


「ああ、大丈夫だ。ペトラとミリアもご覧の通り無事だよ」


 その言葉を聞けてシェーナは深く安堵する。

 ミリアは柔らかいタオルを差し出すと、シェーナの体を見回して目立った怪我をしていない事を確認し畏まる。


「シェーナお嬢様、申し訳ありません。私が付いていながら、お嬢様を危険な目に遭わせてしまいました。ウラバルト家の執事として、私はこれから賊の本拠地を探し当てて報復に……」


「そんな物騒な事はしなくていいよ。こうして無事に皆と合流できただけでも運が良いんだから」


 ハミルトンに連れ去られてからは置かれていた状況に絶望していたシェーナだったが、こうしてまた皆と顔を揃えられるだけでも奇跡的だ。

 シェーナ達と距離を取り、壁を背にしているペトラにミュースが横に立って言葉を投げかける。


「なかなか素敵な方達ですね。私もこうして貴女と同じ任務に就けてほっとしているところですよ」


「別に気を遣わなくてもいいですよ。私のせいでミュース様の昇進に影響を与えた事に深く反省しています」


「あらあら、らしくないですね。昔の貴女は目を輝かせ才気に溢れた剣神と謡われていたではありませんか」


「……遠い昔の話ですよ。井の中の蛙大海を知らず、確かに女神に登用された直後は実績を買われて自信過剰でしたが、キャスティル様と手合わせしてからは己の未熟さを思い知らされました」


「キャスティル様は幹部クラスでも最前線で活躍している女神様。以前にも言いましたが、あまり気を落とす事はありませんよ」


 ミュースは彼女が女神に登用された時からの長い付き合いだ。

 当時のペトラはそれこそ、創造神ミールを打ち倒して己がトップに君臨してやろうと息巻くぐらいの豪快な性格の持ち主だった。

 だが、実際はペトラを登用したキャスティルに負かされてからは他の幹部クラスの女神にも手合わせしたが敗北の連続。

 女神に登用された頃から彼女は次第に自信を喪失し、今回シェーナの護衛任務に就いてから定期的にミュースへ報告を上げていたペトラに心情の変化が窺えていた。


「サリーニャの行方はまだ確認できていないんですよね?」


「残念ながら……レサントル様の配下数名が現着して行方を追っていますが、まだ発見したと報告はありません」


 現在、不安定な情勢であるプライデンでは人を探し当てるだけでも困難。

 ヒュムリス王国の軍勢が上陸し進軍している事もあり、治安が悪化し一部で略奪行為に及ぶ者達も現れている。

 加えて、サリーニャは異世界転生したエルフだとロスロに認知されて追われる身となった。

 ペトラの部下が身を挺して犠牲となり、逃がした後の足取りはレサントルの配下達が追っている。

 本来なら、現場の責任者であるペトラが率先してサリーニャの探索に向かうべきなのだろうが、今はレサントルの指揮下に入りシェーナの護衛を最優先として命令が下っている。


「ミール様も甘いなぁ。こんな奴をまだ護衛に残しておくなんてね」


 突然、見知らぬ声が部屋中に響き渡ると共に部屋の中心から奇妙な紋様の魔法陣が浮かび上がる。

 咄嗟にミュースは魔法陣に向かって畏まり、ペトラも後に続く。

 魔法陣はやがて一人の女性を形成していくと、遅れて魔法陣から四人の人物が姿を現していく。


「本日は遠路遥々お越しいただきありがとうございます」


 ミュースは深々と頭を下げて労いの言葉を送ると、ペトラは心中穏やかではいられなかった。


「レサントルに挨拶を済ませてから仕事に取り掛かるぞ」


 突然現れた五人の人物は異様な雰囲気を纏って場を圧倒する。

 とくに号令をかけたリーダーらしき女性は一目見て相当の実力者であると判別できる程の武人であり、部下を引き連れて部屋を後にする。


「まさか……『果ての部隊』が出張って来るなんて」


「お気持ちはお察ししますが、決定事項です」


 ペトラは信じられないと言わんばかりにミュースへ視線を移すが、彼女は小さく首を横に振って答えるしかなかった。


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