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藁人間  作者: Yem
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6/28

6

公用車は住宅街の一角で静かに止まった。

規制線が張られた一軒家の前には、数台のパトカーが並び、鑑識を終えた警察官たちが撤収の準備を進めている。


「ここです」


鈴木が資料に目を落としながら言った。

田口は無言で規制線をくぐる。

玄関を抜け、事件現場となったリビングへ足を踏み入れた。


部屋にはまだ鉄のような血の臭いがわずかに残っている。

床には鑑識が付けた番号札が点々と置かれ、家具は激しく荒らされていた。

田口はゆっくりと部屋を見渡す。


家具の倒れ方。

割れたガラス。

床に残る血痕。

何一つ見逃すまいと、視線を巡らせていく。

一方、鈴木は血痕の前で足を止めた。


「うっ……」


顔をしかめ、小さく息をのむ。


「ここで襲われたんですね……」


血だまりの跡を見つめたまま、青ざめた顔で呟く。


「思ったより……きついな」


田口は振り返り、小さくため息をついた。


「現場を怖がっていたら刑事は務まらないぞ」


「す、すみません……」


鈴木は照れ隠しのように苦笑した。

その瞬間だった。


――パァッ。


突然、家全体が白い光に包まれた。

窓の外から差し込む光ではない。

部屋そのものが発光したかのような、不自然な閃光だった。


「な、なんだ!?」


鈴木は思わず目を覆う。

田口だけは目を見開いていた。


(この光……。)


間違いない。

昨日、飛び降り事件の現場で見た光と同じだった。

鼓動が速くなる。

光は一瞬で消え、室内は再び静寂に包まれた。

そのとき。


カタン――。


家の裏手から、小さな物音が聞こえた。

田口は顔を上げる。


「鈴木、ここで待ってろ」


「えっ!?田口さん!」


返事も待たず、田口は裏口へ駆け出した。

勝手口の扉を開ける。

そこには小さな裏庭が広がっていた。

風に草木が揺れ、静まり返っている。

その中央に、一人の青年が立っていた。


黒い服。

無表情な顔。

右手には一本のナイフが握られている。

田口の息が止まった。


昨日、ビルの屋上から飛び降り、何事もなかったように立ち去った青年――。

間違いなく、同じ男だった。

青年は田口を見つめるでもなく、ただ静かに、その場に立ち尽くしていた。






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