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公用車は住宅街の一角で静かに止まった。
規制線が張られた一軒家の前には、数台のパトカーが並び、鑑識を終えた警察官たちが撤収の準備を進めている。
「ここです」
鈴木が資料に目を落としながら言った。
田口は無言で規制線をくぐる。
玄関を抜け、事件現場となったリビングへ足を踏み入れた。
部屋にはまだ鉄のような血の臭いがわずかに残っている。
床には鑑識が付けた番号札が点々と置かれ、家具は激しく荒らされていた。
田口はゆっくりと部屋を見渡す。
家具の倒れ方。
割れたガラス。
床に残る血痕。
何一つ見逃すまいと、視線を巡らせていく。
一方、鈴木は血痕の前で足を止めた。
「うっ……」
顔をしかめ、小さく息をのむ。
「ここで襲われたんですね……」
血だまりの跡を見つめたまま、青ざめた顔で呟く。
「思ったより……きついな」
田口は振り返り、小さくため息をついた。
「現場を怖がっていたら刑事は務まらないぞ」
「す、すみません……」
鈴木は照れ隠しのように苦笑した。
その瞬間だった。
――パァッ。
突然、家全体が白い光に包まれた。
窓の外から差し込む光ではない。
部屋そのものが発光したかのような、不自然な閃光だった。
「な、なんだ!?」
鈴木は思わず目を覆う。
田口だけは目を見開いていた。
(この光……。)
間違いない。
昨日、飛び降り事件の現場で見た光と同じだった。
鼓動が速くなる。
光は一瞬で消え、室内は再び静寂に包まれた。
そのとき。
カタン――。
家の裏手から、小さな物音が聞こえた。
田口は顔を上げる。
「鈴木、ここで待ってろ」
「えっ!?田口さん!」
返事も待たず、田口は裏口へ駆け出した。
勝手口の扉を開ける。
そこには小さな裏庭が広がっていた。
風に草木が揺れ、静まり返っている。
その中央に、一人の青年が立っていた。
黒い服。
無表情な顔。
右手には一本のナイフが握られている。
田口の息が止まった。
昨日、ビルの屋上から飛び降り、何事もなかったように立ち去った青年――。
間違いなく、同じ男だった。
青年は田口を見つめるでもなく、ただ静かに、その場に立ち尽くしていた。




