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藁人間  作者: Yem
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5

田口は強盗殺人事件のファイルを抱え、捜査一課を後にした。

まずは現場を自分の目で見る。

その後、近隣住民への聞き込みを行い、事件当日の様子を洗い直す――それが田口の捜査の基本だった。

駐車場へ降りると、公用車のドアを開け、運転席へ乗り込む。

エンジンをかけようとした、そのときだった。


「ま、待ってください!」


背後から慌ただしい声が飛んできた。

田口が振り返ると、一人の若い刑事が息を切らしながら駆け寄ってくる。

額には汗を浮かべ、肩で大きく息をしていた。


「はぁ……はぁ……間に合った……」


青年は助手席のドアを開けると、当然のように乗り込んだ。


「……なんだ?」


突然のことに、田口は目を丸くする。

青年は姿勢を正し、慌てて頭を下げた。


「失礼しました!捜査一課の鈴木です!」


「鈴木?あぁ、思い出した。最近配属されたって言ってたな、確か…」


「はい!中村さんから、田口さんの捜査をサポートするよう命令を受けまして…」


そう言って警察手帳を見せる。

田口は小さくため息をついた。


「……聞いてないぞ」


「中村さんが『田口には現場で伝えればいい』って」


申し訳なさそうに笑う鈴木。

まだ二十代半ばだろうか。

どこか頼りなさが残るものの、その目にはやる気が宿っていた。


田口はハンドルに手を置きながら窓の外を見た。

本音を言えば、一人のほうが気楽だった。

自分のペースで考え、自由に動ける。

誰かと組めば、その分だけ気を遣うことになる。

だが、上司の命令では断るわけにもいかない。


「……わかった」


田口はシートベルトを締めた。


「足を引っ張るなよ」


「はい!」


鈴木は勢いよく返事をし、慌ててシートベルトを締める。

公用車はゆっくりと警察署を後にし、強盗殺人事件の現場へ向けて走り出した。





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