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田口は強盗殺人事件のファイルを抱え、捜査一課を後にした。
まずは現場を自分の目で見る。
その後、近隣住民への聞き込みを行い、事件当日の様子を洗い直す――それが田口の捜査の基本だった。
駐車場へ降りると、公用車のドアを開け、運転席へ乗り込む。
エンジンをかけようとした、そのときだった。
「ま、待ってください!」
背後から慌ただしい声が飛んできた。
田口が振り返ると、一人の若い刑事が息を切らしながら駆け寄ってくる。
額には汗を浮かべ、肩で大きく息をしていた。
「はぁ……はぁ……間に合った……」
青年は助手席のドアを開けると、当然のように乗り込んだ。
「……なんだ?」
突然のことに、田口は目を丸くする。
青年は姿勢を正し、慌てて頭を下げた。
「失礼しました!捜査一課の鈴木です!」
「鈴木?あぁ、思い出した。最近配属されたって言ってたな、確か…」
「はい!中村さんから、田口さんの捜査をサポートするよう命令を受けまして…」
そう言って警察手帳を見せる。
田口は小さくため息をついた。
「……聞いてないぞ」
「中村さんが『田口には現場で伝えればいい』って」
申し訳なさそうに笑う鈴木。
まだ二十代半ばだろうか。
どこか頼りなさが残るものの、その目にはやる気が宿っていた。
田口はハンドルに手を置きながら窓の外を見た。
本音を言えば、一人のほうが気楽だった。
自分のペースで考え、自由に動ける。
誰かと組めば、その分だけ気を遣うことになる。
だが、上司の命令では断るわけにもいかない。
「……わかった」
田口はシートベルトを締めた。
「足を引っ張るなよ」
「はい!」
鈴木は勢いよく返事をし、慌ててシートベルトを締める。
公用車はゆっくりと警察署を後にし、強盗殺人事件の現場へ向けて走り出した。




