エピローグ 1
数日後。
朝の柔らかな陽射しが窓から差し込む。
田口はネクタイを締め直し、いつものように仕事へ向かう支度を整えた。
「さて……」
玄関のドアノブに手を掛け、扉を開く。
「田口さん!おはよ!」
元気いっぱいの声が飛び込んできた。
「……和葉、お前、怪我はもう大丈夫なのか?」
そこには満面の笑みを浮かべた和葉が立っていた。
「見てのとおり、完全復活してます!」
田口は苦笑する。
「また都市伝説の話か?」
「違う違う!」
和葉は慌てて首を横に振る。
「今日は鈴木さんと朝日さんのこと!二人とも、どうしてるのかなって気になって」
田口は小さく息を吐いた。
「鈴木は謹慎処分だ、しばらく顔は見てない…。
でも、あれだ。あいつ、お前に謝りたいって言ってたから…。
そのうち、自分からお前に会いに来るだろ」
「そっか……」
和葉は安心したように微笑んだ。
「朝日さんは?」
「相変わらずだ」
田口は肩をすくめる。
「どこで何をしてるのか、見当もつかない。
名刺だけ渡しておいて、電話をかけてもつながらない。
勝手にもほどがある。まったく…」
和葉は思わず笑みをこぼした。
「謎が多い、朝日さんらしいね」
少しの沈黙のあと、和葉は遠慮がちに口を開く。
「あ……あと。京さんは?」
田口の表情が少しだけ引き締まる。
「あいつは今、警察が管理する特別収容施設にいる。
能力のこともある。
厳重な監視下で治療を受けてる」
和葉は静かにうなずいた。
「今日、面会に行く予定だ」
その言葉を聞いた瞬間、和葉の表情が明るくなる。
「私も行きたい!」
「は?」
田口は思わず聞き返した。
「お前、まだ懲りてないのか?あんな目に遭ったばかりだろ」
和葉は真っすぐ田口を見つめる。
「だからだよ。ちゃんと京さんと話したい。
あの人、本当は悪い人じゃないって思うから」
田口は額に手を当て、大きくため息をついた。
「……お前は本当に凄い精神力だな」
「えへへ」
和葉は照れくさそうに笑う。
「それって、褒めてる?」
「褒めてない」
田口は即座に言い返した。
それでも和葉は笑顔を崩さない。
その様子を見て、田口は観念したように肩を落とした。
「……わかった。ただし、俺のそばを離れるな」
「やった!」
和葉は子どものように喜ぶ。
こうして午後、田口と和葉は、京が収容されている施設へ向かうことになった。




