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藁人間  作者: Yem
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25/28

25

屋上に、静寂が戻る。

田口は荒い息を整えながら、その場に座り込んでいた。

零は京の肩へそっと手を添える。


「京……」


その瞬間だった。

京の表情が苦痛に歪む。


「っ……!」


突然、自分の胸を強く押さえ、その場へうずくまる。


「京!」


零が慌てて肩を支える。

京の呼吸は急速に乱れ始めた。


「はぁ……はぁ……」


全身が激しく震える。

次の瞬間。


「ごほっ!」


真っ赤な血が口から溢れ、コンクリートの床へ飛び散った。


「京!」


零は京の身体を抱き起こす。

京は焦点の合わない目で零を見つめ、かすれた声を絞り出した。


「……兄貴」


零は震える声で応える。


「しゃべるな。大丈夫だ。いま救急車を呼ぶから」


しかし京は小さく首を横に振った。


「……ごめん。兄貴……ごめんな」


零の目に涙が浮かぶ。

京は苦しそうに息を吐きながら続けた。


「兄貴の……言う通り……だった。俺の……能力で……」


再び血を吐く。


「体が……もう……」


最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。

京の身体から力が抜ける。

瞳は静かに閉じられ、意識を失った。


「京!」


零は京を強く抱きしめた。


「駄目だ……!京!」


返事はない。

零は必死に京の身体をゆさぶる。


「目を開けろ!京!」


その声には、探偵としての冷静さはもう残っていなかった。

ただ、弟を失いたくない兄の叫びだけがあった。

零は涙をこらえながら田口に呼びかける。


「田口さん!救急車を!早く!」


「いま呼んでるから、落ち着け!」


住所を伝えながら、田口は京から目を離せなかった。


夜風だけが静かに吹き抜ける屋上で。

零は弟の身体を抱きしめたまま、何度も名前を呼び続けていた。





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