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暗い夜道を、一人の少年が走っていた。
その少年は、14歳の鈴木だった。
行き先もわからないまま、ただ必死に前だけを見て走る。
その手には、一枚の写真が握られていた。
写真には、優しく微笑む女性が写っている。
養護施設の寮母だった。
両親のいない鈴木にとって、母親のような存在。
だが、その女性は施設で働いていた一人の男に命を奪われた。
警察は捜査を始めたものの、犯人は逃走。
鈴木は誰にも言わず、一人で犯人を追い続けた。
そしてある夜。
人気のない路地裏で、犯人を見つけた。
だが、鈴木が駆け寄るより早く、一人の少年が男の前へ立っていた。
黒い服をまとった、無表情な少年。
――朝日京。
京は何も話さなかった。
鈴木が声をかけようとした、その瞬間。
世界が白く光った。
眩しい閃光。
思わず目を閉じる。
光が消えたときには、少年の姿はなく、犯人だけが血を流しその場に倒れていた。
後日。
ニュースが流れる。
『〇〇事件の容疑者が遺体で発見されました―』
鈴木はテレビを見つめたまま、動くことができなかった。
あの夜。
一体なにが起こっていたのか。
それから月日が流れ
警察学校に通っていた鈴木はある日、
あの時の少年によく似た人物を公園で見つける。
「あの、ちょっとお話いいですか?」
鈴木が京に声をかけた。
それ以来、鈴木と京は度々会うようになった。
夜中の公園。
人気のない図書館。
古本屋。
二人は言葉を交わさなくても、一緒に本を読み続けた。
京はほとんど話さない。
それでも鈴木にはわかった。
京は悪人ではない。
誰よりも静かで、誰よりも孤独な人間だと。
鈴木にとって京は、初めてできた親友だった。
◇
夜の道路を一台の車が走っていた。
後部座席では和葉が静かに眠っている。
和葉は睡眠薬の作用で、規則正しい寝息を立てていた。
助手席では京が窓の外を眺めている。
鈴木はハンドルを握ったまま静かに話し始めた。
「田口さんは、お前を止めようとする。
刑事だから当然だ。でも、僕は違う」
赤信号で車が止まる。
「京、お前には、これからも凶悪犯を消してほしい。
法では裁けない人間は、沢山いる。
お前にしか止められない悪もある」
鈴木はバックミラー越しに和葉を見る。
「……田口さんには刑事を辞めてもらう。
交渉の為に、この子を人質にするしかない」
苦しそうに目を閉じる。
「こんなこと、本当はしたくない。
でも、それしか方法が思いつかない」
しばらく沈黙が流れる。
鈴木は再び京を見る。
「どうして…。田口さんの前で能力を使ったんだ!?
約束しただろ!能力のこと、誰にも話さないって!」
京は何も答えない。
窓の外へ視線を向けたまま、流れていく夜空を静かに見つめていた。
街の灯りが、京の横顔を淡く照らす。
その瞳が何を見つめ、何を考えているのか。
鈴木にもわからなかった。




