21
田口はポケットからスマートフォンを取り出した。
まず鈴木へ電話をかける。
呼び出し音が鳴る。
一回。
二回。
三回――。
『……』
応答はない。
「鈴木?」
もう一度かけ直す。
しかし、何度鳴らしても電話はつながらなかった。
田口の胸に嫌な予感が広がる。
「何かあったのか……?」
その瞬間、あることを思い出した。
「そうだ。車のGPS……」
田口は急いで専用アプリを開く。
鈴木と和葉が乗っているであろう車の現在位置を示す地図が表示される。
数秒後、一つのマークが点滅した。
「……!」
田口は目を見開く。
車は、京の住むアパートを示していた。
「どういうことだ……?」
思わず声が漏れる。
田口の車で病院へ向かったはずの鈴木が、なぜ京のアパートへ戻っているのか
田口は疑問を抱く。
隣で画面を見た朝日零は、小さく目を閉じた。
「……田口さん、すみません。僕のミスです」
田口が零の方を見る。
「ミス?何のことだ」
零は苦しそうに息を吐いた。
「京の交友関係について、もっと調べておくべきでした」
その言葉を聞いた瞬間、田口の脳裏に一つの考えが浮かぶ。
「まさか……。鈴木と京は……」
零は静かにうなずいた。
「おそらく、以前から面識があります。
目的まではわかりません。
ですが、二人は何らかの理由で動いている」
田口の背筋が凍る。
「和葉が危ない!早くアパートに戻れ!」
田口が零に京のアパートに行くよう指示を出した
そのとき。
スマートフォンの地図上で、車を示すマークがゆっくりと動き始めた。
「動いた……」
京のアパートを離れ、車は市街地へ向かって走り出している。
田口は画面を食い入るように見つめた。
「鈴木……どこへ向かう気だ」
零も地図へ目を落とす。
「まだ追いつけます。急ぎましょう」
田口は力強くうなずいた。
零はすぐにエンジンを始動させる。
タイヤが甲高い音を立て、車は地下駐車場を飛び出した。
GPSに映る一つの光点だけを頼りに。
田口と零は、鈴木たちの後を追った。




