17
青年は三人の向かいに静かに腰を下ろした。
部屋には重苦しい沈黙が流れる。
警戒心を解かなければ、何も聞き出せない。
そう判断した田口は、まず自分から口を開いた。
「俺は田口。警視庁捜査一課の刑事だ」
隣の鈴木も軽く頭を下げる。
「鈴木です。同じく刑事をしています」
和葉も慌てて頭を下げた。
「音無和葉、普通の学生です」
青年は三人を順番に見つめるだけで、何も話さない。
田口は穏やかな口調で尋ねた。
「あんたの名前は?」
返事はない。
微動だにせず、田口を見つめている。
田口は質問を変えた。
「朝日零を知っているか?」
その瞬間だった。
青年はゆっくりと首を縦に振る。
その姿を見た鈴木が思わず問いかける。
「まさか……、あなた、話せないんですか?」
青年は表情一つ変えない。
代わりにポケットからスマートフォンを取り出すと、慣れた手つきで文字を打ち始めた。
数秒後、画面を三人へ向ける。
そこには、こう表示されていた。
『俺は朝日京。朝日零は俺の双子の兄だ。
なぜ俺に構う?』
田口は画面を見つめたまま息をのむ。
「やはり……」
朝日零と血のつながった人物。
しかも双子だった。
これで顔が酷似している理由にも説明がつく。
田口は静かに息を整える。
「俺たちは、あんたを逮捕しに来たわけじゃない。聞きたいことがあるだけだ」
京は黙ったまま視線を向ける。
田口は一呼吸置いてから、本題を切り出した。
「数日前、繁華街のビルで飛び降り事件があった。俺は、その現場にいた。
男が飛び降りた瞬間、辺りが眩しい光に包まれた。
そして光が消えたときには、飛び降りたはずの男は何事もなかったように歩き去っていた。
俺が見るに朝日京、お前はその男によく似ている」
田口は京の目をまっすぐ見つめる。
「……あの現象は何だ?お前は、何か知っているんじゃないのか?」
京はしばらく瞬きもせず田口を見つめ続ける。
やがて再びスマートフォンへ視線を落とし、ゆっくりと文字を打ち始めた。




