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藁人間  作者: Yem
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17/25

17

青年は三人の向かいに静かに腰を下ろした。

部屋には重苦しい沈黙が流れる。

警戒心を解かなければ、何も聞き出せない。

そう判断した田口は、まず自分から口を開いた。


「俺は田口。警視庁捜査一課の刑事だ」


隣の鈴木も軽く頭を下げる。


「鈴木です。同じく刑事をしています」


和葉も慌てて頭を下げた。


「音無和葉、普通の学生です」


青年は三人を順番に見つめるだけで、何も話さない。

田口は穏やかな口調で尋ねた。


「あんたの名前は?」


返事はない。

微動だにせず、田口を見つめている。

田口は質問を変えた。


「朝日零を知っているか?」


その瞬間だった。

青年はゆっくりと首を縦に振る。

その姿を見た鈴木が思わず問いかける。


「まさか……、あなた、話せないんですか?」


青年は表情一つ変えない。

代わりにポケットからスマートフォンを取り出すと、慣れた手つきで文字を打ち始めた。

数秒後、画面を三人へ向ける。

そこには、こう表示されていた。


『俺は朝日京。朝日零は俺の双子の兄だ。

なぜ俺に構う?』


田口は画面を見つめたまま息をのむ。


「やはり……」


朝日零と血のつながった人物。

しかも双子だった。

これで顔が酷似している理由にも説明がつく。

田口は静かに息を整える。


「俺たちは、あんたを逮捕しに来たわけじゃない。聞きたいことがあるだけだ」


京は黙ったまま視線を向ける。

田口は一呼吸置いてから、本題を切り出した。


「数日前、繁華街のビルで飛び降り事件があった。俺は、その現場にいた。

男が飛び降りた瞬間、辺りが眩しい光に包まれた。

そして光が消えたときには、飛び降りたはずの男は何事もなかったように歩き去っていた。

俺が見るに朝日京、お前はその男によく似ている」


田口は京の目をまっすぐ見つめる。


「……あの現象は何だ?お前は、何か知っているんじゃないのか?」


京はしばらく瞬きもせず田口を見つめ続ける。

やがて再びスマートフォンへ視線を落とし、ゆっくりと文字を打ち始めた。




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