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藁人間  作者: Yem
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15/29

15

翌朝。


静かな街を、田口の車がゆっくりと走っていた。

運転席には田口、助手席には鈴木。

二人は和葉が動画を撮影した公園へ向かっていた。


「休日に仕事なんて…仕事熱心にもほどがありますよ」


鈴木が苦笑する。


「これは仕事じゃない。プライベートだ」


田口は前を向いたまま答えた。


「お前がついてくるって言ったんだぞ?嫌なら、自宅まで送ってやる」


「…大丈夫です」


鈴木は肩をすくめる。

しばらく走り、車は公園に到着した。

日曜の朝にもかかわらず、人影はほとんどない。

ブランコは風に揺れ、滑り台の上には落ち葉が積もっている。


「静かですね」


鈴木が辺りを見回した。


「最近の子どもは、外で遊ぶより家でゲームなんでしょうか?」


「そうかもな」


田口も周囲へ視線を巡らせる。

動画と同じベンチはある。

しかし、そこに青年の姿はない。

そのときだった。


「やっぱり!」


聞き覚えのある明るい声が響く。


「来ると思ってました!!!」


二人が振り向く。


手を大きく振りながら駆け寄ってくる少女。

音無和葉だった。


「おはようございます!」


満面の笑みを浮かべる和葉に、田口は思わず額へ手を当てた。


「……ややこしいことになった」


小さく呟く。

和葉はそんなことなど気にも留めず、二人の前で立ち止まった。


「朝日さんを探しに来たんですよね?」


「違う。朝日に似た男だ」


田口はすぐに否定し、話を続ける。


「和葉、お前が撮った動画に映ってた男は、そのあとどっちへ向かった?」


和葉は待ってましたと言わんばかりに胸を張った。


「実はですね。私、その人の家かもしれない場所、特定しちゃいました!」


和葉が得意げに笑う。

鈴木が思わず引き気味に呟く。


「……それ、ストーカーじゃないですか」


「違います!」


和葉はむっと頬を膨らませる。


「尾行しただけです!」


「それを世間ではストーカーって言うんですよ」


鈴木が冷静に返す。


「もう!」


和葉は鈴木を軽く睨みつける。


「いいから、ついてきてください!」


そう言うと、迷いなく歩き始めた。


田口と鈴木は顔を見合わせ、小さくため息をつく。


「行くしかないな」


「ですね」


二人は和葉のあとを追った。


公園から歩くこと十分ほど。

住宅街の外れに、一棟の古びたアパートが姿を現した。

外壁は色あせ、鉄製の階段には錆が浮いている。

築年数はかなり経っているようだった。

和葉は立ち止まり、アパートを見上げる。


「ここです」


そう言って、アパートの二階を指差した。


「一番左の部屋、あそこへ入っていくのを見ました」


田口はその部屋へ静かに目を向ける。

部屋のカーテンは閉まっており、周囲からの生活音は何一つ聞こえない。

まるで、人が住んでいる気配すら感じられなかった。



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