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翌朝。
静かな街を、田口の車がゆっくりと走っていた。
運転席には田口、助手席には鈴木。
二人は和葉が動画を撮影した公園へ向かっていた。
「休日に仕事なんて…仕事熱心にもほどがありますよ」
鈴木が苦笑する。
「これは仕事じゃない。プライベートだ」
田口は前を向いたまま答えた。
「お前がついてくるって言ったんだぞ?嫌なら、自宅まで送ってやる」
「…大丈夫です」
鈴木は肩をすくめる。
しばらく走り、車は公園に到着した。
日曜の朝にもかかわらず、人影はほとんどない。
ブランコは風に揺れ、滑り台の上には落ち葉が積もっている。
「静かですね」
鈴木が辺りを見回した。
「最近の子どもは、外で遊ぶより家でゲームなんでしょうか?」
「そうかもな」
田口も周囲へ視線を巡らせる。
動画と同じベンチはある。
しかし、そこに青年の姿はない。
そのときだった。
「やっぱり!」
聞き覚えのある明るい声が響く。
「来ると思ってました!!!」
二人が振り向く。
手を大きく振りながら駆け寄ってくる少女。
音無和葉だった。
「おはようございます!」
満面の笑みを浮かべる和葉に、田口は思わず額へ手を当てた。
「……ややこしいことになった」
小さく呟く。
和葉はそんなことなど気にも留めず、二人の前で立ち止まった。
「朝日さんを探しに来たんですよね?」
「違う。朝日に似た男だ」
田口はすぐに否定し、話を続ける。
「和葉、お前が撮った動画に映ってた男は、そのあとどっちへ向かった?」
和葉は待ってましたと言わんばかりに胸を張った。
「実はですね。私、その人の家かもしれない場所、特定しちゃいました!」
和葉が得意げに笑う。
鈴木が思わず引き気味に呟く。
「……それ、ストーカーじゃないですか」
「違います!」
和葉はむっと頬を膨らませる。
「尾行しただけです!」
「それを世間ではストーカーって言うんですよ」
鈴木が冷静に返す。
「もう!」
和葉は鈴木を軽く睨みつける。
「いいから、ついてきてください!」
そう言うと、迷いなく歩き始めた。
田口と鈴木は顔を見合わせ、小さくため息をつく。
「行くしかないな」
「ですね」
二人は和葉のあとを追った。
公園から歩くこと十分ほど。
住宅街の外れに、一棟の古びたアパートが姿を現した。
外壁は色あせ、鉄製の階段には錆が浮いている。
築年数はかなり経っているようだった。
和葉は立ち止まり、アパートを見上げる。
「ここです」
そう言って、アパートの二階を指差した。
「一番左の部屋、あそこへ入っていくのを見ました」
田口はその部屋へ静かに目を向ける。
部屋のカーテンは閉まっており、周囲からの生活音は何一つ聞こえない。
まるで、人が住んでいる気配すら感じられなかった。




