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藁人間  作者: Yem
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「えっ……?」


和葉は田口の手元にある自分のスマートフォンをのぞき込む。


「この人、朝日さんじゃないの?」


田口はしばらく画面を見つめたまま、静かに首を振った。


「……、よく似ているだけだ。他人の空似だろう」


そう言いながらも、その声には自信がなかった。

和葉は納得できない様子で首をかしげる。


「ビルから飛び降りた青年に似てるのに、朝日さんとはまた別の人?

じゃあ、この人の名前は?」


田口はスマートフォンを返し、立ち上がった。


「今日はもう帰れ」


「えぇ?」


「お前はこれ以上、首を突っ込むな」


和葉は唇を尖らせる。


「またそうやって仲間外れにする……」


小さく不満を漏らしたものの、それ以上は食い下がらなかった。


「……わかりました」


玄関で振り返る。


「でも、何かわかったら絶対教えてくださいね、約束ですよ」


田口は苦笑しながら手を振る。


「ああ。気をつけて帰れ」


ドアが静かに閉まる。

部屋に再び静寂が戻った。

田口はすぐにスマートフォンを取り出し、鈴木へ電話をかける。


『田口さん?』


「あぁ、俺だ」


田口は動画の件を一から説明した。

朝日に酷似した男。

動画の撮影時刻が

遺体安置所で朝日に会っていた時刻とおおよそ一致すること。

電話の向こうで鈴木はしばらく黙り込んでいた。


「鈴木、お前はどう思う?」


『…他人の空似かもしれません』


鈴木は慎重に言葉を選び言った。


田口が少し間を空けて言う。


「血縁者、あるいは双子である可能性は?」


『双子…ですか?』


田口が小さくうなずく。


「俺は、その可能性が高いと思う。

朝日を追うより、動画の男と直接会って話を聞いた方が早いかもしれない」


『…なんだか僕、嫌な予感がします』


「嫌な予感?」


『…朝日さんは何を聞いても、はぐらかします。だけど、

動画の人が本当にビルから落下して無傷だったとしたなら、普通の人間じゃない。危険ですよ。

話が通じる相手じゃなかったらどうするんですか?』


『…確かに…な』


田口は静かに目を閉じた。


鈴木の言うとおりだった。

それでも、田口は自分の直観を信じることにする。


「悪い、鈴木。俺はこの目で確かめたいんだ。あの日、何が起こったのか…」


田口は窓の外へ目を向けた。


「俺は明日、あの動画が撮られた公園に行く。そこであの男に会えるかもしれない」


『……そうですか…わかりました。じゃあ僕も行きます』


「なんだって?」


『あなた一人じゃ、なにかあった時に対応できないでしょう?だから、僕も行きます。それじゃ』


一方的に通話を終える鈴木。


「…俺一人でも大丈夫だってのに…心配性だな、あいつは…」


通話を終えた田口は、ソファにもたれかかった。

脳裏には、和葉のスマートフォンで見た青年の横顔が焼き付いて離れない。

朝日零に酷似した、もう一人の男。

その存在こそが、一連の事件の真相へ続く最初の手掛かりになる気がしていた。



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