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ハズレスキル『丼マスター』で異世界スローライフ?〜ゴミ拾いしてたら始祖竜が懐いたので、辺境の最強村で至高の牛丼屋はじめます〜  作者: 月神世一


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EP 7

移動丼屋『サスガ屋』オープン

「ククク……見よ、ロード殿! この泥に塗れた暗黒の瘴気ただのヘドロを! 拙者の封印されし右手にかかれば、このような穢れなど一瞬で浄化(お掃除)できるでござるよぉぉ!」

翌朝のポポロ村。

そこには、黒コートの袖をまくり上げ、涙目で村のドブさらいに精を出す漆黒の魔闘剣士(20歳・大学生)の姿があった。

【 ピロッ♪ 善行(溝掃除)を検知しました。 +50 pt 】

【 ピロッ♪ 善行(おばあちゃんの肩揉み)を検知しました。 +100 pt 】

【 ピロッ♪ 善行(ゴミ拾い)を検知しました。 +5 pt 】

「ゼェ、ゼェ……よし、ポイントが……溜まったでござる……!」

(朝からよく働く男だ。マックス・ヴェーバーも『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で労働の尊さを説いたが、まさか異世界で体現する者に出会うとはな)

屋台用の荷車に繋がれたロード(始祖竜)は、あくびをしながらその様子を眺めていた。

ポポロ村の中央広場。

良樹はポイントを消費して木材や調理器具(これもスキルで出せるオプション)を召喚し、ロードに引かせるための立派な移動屋台を組み上げていた。

その名も、移動丼屋『サスガ屋』である。

「ダーリン様ぁ! お腹ペコペコですぅ! パンの耳じゃもう我慢できない体になっちゃったんですぅ!」

「だーかーらー! 拙者はダーリンではないでござる!」

屋台の最前列には、マイ箸を持ったリーザがヨダレを垂らして待機していた。

その横では、村長のキャルルが微笑ましそうに様子を見守っている。

「ふふっ。良樹さん、朝から村の掃除までしてくれてありがとう。村のみんなも、新しいお店を楽しみにしてるわ」

キャルルの言葉通り、広場には「何やら美味そうな匂いがする」と、村の自警団や農家のおじさんおばさんたちが集まり始めていた。

(……ククク。ここは一発、異世界人たちの度肝を抜く至高のメニューでデビューするでござるよ!)

良樹は黒コートを翻し、空中のパネル(村人には見えない)を乱打した。

「冥界の釜より出でよ! 罪深き背徳の器! 召喚サモン! 『チーズ牛丼(特盛)』!!」

カァァァァッ!

光と共に、屋台のカウンターにズラリと並ぶ牛丼。

だが、ただの牛丼ではない。その上には、たっぷりの黄金色のチーズが乗っている。

「わぁ……! お肉の上に、チーズ? でもこれ、溶けてないから少し冷たそうね」

キャルルが不思議そうに小首を傾げた。

「フッ、甘いでござるよ村長殿。ここからが『サスガ屋』の真骨頂でござる!……ロード殿! 出番でござるよ!」

良樹が指を鳴らすと、屋台の横で寝そべっていたロードが、面倒くさそうに首を持ち上げた。

「そのチーズに、お前の火炎ブレスを軽く当てるでござる! いい塩梅に炙るでござるよ!」

(……我に、チーズを炙れだと? 古代大戦で海を干上がらせ、山脈を消し飛ばしたこの始祖竜の絶望の吐息アルティメット・ブレスを、ただの調理用バーナー代わりに使えと言うのか)

ロードのプライドが、一瞬だけチクリと痛んだ。

しかし、昨日食べた『牛丼』の暴力的な旨味が脳裏をよぎる。

(……まあ良い。あの神の飯が食えるのなら、労働の対価としては悪くない)

ロードは大きく息を吸い込んだ。

もしここで彼が少しでもコントロールを誤れば、ポポロ村はおろか、隣国までが地図から消滅する。

まさに世界滅亡のカウントダウン。

「シュゴォォォォォォ……ッ」

だが、ロードは数千年の叡智と魔力操作を極限まで駆使し、水爆級の威力を『家庭用ガスバーナーの強火』レベルにまで精密に圧縮した。

これを名付けて、始祖竜の『プチブレス』である。

ゴォォォォッ!

熱線がチーズの表面を撫でる。

シュワァァァッ! という官能的な音と共に、チーズがトロリと溶け出し、表面に香ばしい焦げ目がついた。

「おおおおおっ!?」

「な、なんだあのトカゲ!? 魔法陣も無しに、あんな精密な炎の操作を!?」

村人たちがどよめき、キャルルも驚愕に目を見開いた。

「完成でござる! 『始祖竜の直火炙り・チーズ牛丼』!! さぁ、食うが良いでござる!」

「いただきまぁぁぁす!!」

リーザが猛然と丼に喰らいついた。

「んんんんんんんっ!? あっちぃ! けど、チーズがとろっとろで、お肉の甘じょっぱいタレと絡んで……濃厚ぉぉぉぉ!! これ、悪魔の食べ物ですぅぅぅ!」

ハフハフと熱がりながらも、箸が止まらないリーザ。

チーズが糸を引き、肉の脂と絡み合う極上の飯テロビジュアルに、見ていた村人たちの胃袋も限界に達した。

「わ、私にも一杯ちょうだい!」

「こっちもだ! 大盛りで頼む!」

「ククク……順番に並ぶでござるよ! ちなみに一杯、銅貨3枚(約300円)という破格の値段でござる!」

飛ぶように売れていく炙りチーズ牛丼。

良樹の目論見は見事に的中した。美味しい食事を破格で提供することは、システム上『地域貢献』として莫大な善行ポイントを生み出すのだ。

【 ピロッ♪ 善行(地域貢献・炊き出し)を検知しました。 +5000 pt 】

(よっしゃぁぁぁ! これでポイント無限ループの完成でござる! 拙者の天下でござるよぉぉ!)

「本当に美味しい……! 良樹さん、あなたのおかげで村のみんなが笑顔になってるわ」

キャルルがチーズ牛丼を頬張りながら、蕩けるような笑顔を向けた。

その無防備な可愛さに、良樹の心臓がドキンと跳ねる。

「ふ、フハハ! 漆黒の魔闘剣士にかかれば、この程度の笑顔を引き出すなど造作もないことでござるよ!」

良樹はドヤ顔で言い放った。

平和なポポロ村の広場に、牛丼の香ばしい匂いと村人たちの笑い声が響き渡る。

佐須賀良樹の異世界スローライフは、順風満帆にスタートしたかのように思えた。

――しかし、この圧倒的なまでの『美味さ』の噂が、やがて厄介な者たちを村へ引き寄せることになるとは、この時の良樹は知る由もなかったのである。

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