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ハズレスキル『丼マスター』で異世界スローライフ?〜ゴミ拾いしてたら始祖竜が懐いたので、辺境の最強村で至高の牛丼屋はじめます〜  作者: 月神世一


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EP 6

雷神の月兎らいじんのげっと

「……はふぅ、満足ですぅ。これならあと三日はパンの耳無しで戦えますぅ」

お腹をポンポンと叩き、幸せそうにベンチでとろけているリーザ。

その横で、良樹は引きつった笑顔を浮かべていた。

「ダーリン様ぁ、次は何の丼を出してくれるんですかぁ? 私、天丼も気になりますぅ」

「だ、誰がダーリンでござるか! 拙者はただ、道端の餓死しかけた家畜……いや、迷える子羊を救っただけでござるよ!」

(おい良樹。貴様、その『地下アイドル』とやらに完全にロックオンされているぞ。マキャヴェッリの教えによれば、無能な味方は敵より恐ろしいというがな)

「ロード殿、頼むからその不吉な予言はやめてほしいでござる……」

良樹が頭を抱えた、その時だった。

「――お騒がせな方がいると思ったら。そちらの大きなトカゲさんは、あなたの召喚獣かしら?」

鈴の音のような、それでいて芯の通った透き通る声。

良樹がハッとして振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。

ラフなグレーのパーカーにスラックス。

現代の大学生のような動きやすい格好だが、その長い耳――月兎族げっとぞく特有の白く美しい耳が、彼女の出自を物語っている。

(……ほう。この娘、ただの獣人ではないな。全身から溢れ出る闘気が、まるで満月の夜の海のように静かで、深く、鋭い)

ロードが初めて、警戒の色を見せて目を細めた。

良樹は、彼女の足元を見てゴクリと唾を呑み込む。

彼女が履いているのは、ルナミス帝国屈指のワークブランド『タローマン』製の特注安全靴。その武骨な靴から漏れ出る圧力が、ただ事ではない。

「あ、キャルルちゃん! おはこんりーざ☆」

リーザが気楽に手を振る。

「キャルル……? 殿、この御仁は?」

「ポポロ村の村長さんだよぉ。元はお姫様だったんだけど、今はこうして村を守ってる、すっごく強い人なんだから!」

「村長……!?」

良樹は驚愕した。こんな若くて可愛い子が、三カ国の緩衝地帯という修羅の村を束ねているというのか。

「初めまして。ポポロ村村長のキャルルです。……そちらの方は?」

キャルルは、じっと良樹を見つめた。

良樹は、小心者特有の防衛本能で、咄嗟に『最強の自分』を演出し始めた。

ここで舐められたら、そのまま国外追放されるかもしれないという恐怖が、彼を中二病の極致へと突き動かす。

「ククク……よくぞ見破った。拙者は漆黒の魔闘剣士、佐須賀良樹。……そして、このロードは拙者の影に潜む古の契約者でござるよ」

良樹はバサァッ! と黒コートを翻し、眼帯(伊達)を指でクイッと直した。

「先ほど、そこの青い人魚があまりに不憫な魂を晒していたゆえ、冥界の糧を少しばかり分け与えていたところでござる。……何か問題でも?」

良樹の心臓はバックバクである。

だが、キャルルの瞳は驚きに見開かれた。

(……信じられない。先ほどの、空間を歪めて食べ物を取り出したあの術。詠唱も魔法陣の予兆もほとんど無かった……。それに、あの大きなトカゲ。一見大人しいけれど、内側に秘めた『格』が、レオンハート王国の守護獣すら凌駕している……!)

キャルルの脳内で、「素晴らしい勘違い」が高速で組み上がっていく。

(この人、ただ者じゃないわ。あんなに足が震えている……。あれは武者震い? それとも、自分の溢れ出る魔力を抑え込むための拒絶反応!? 漆黒の魔闘剣士……なんて禍々しくて、それでいて慈悲深い響きなのかしら……!)

「……素晴らしい魔力操作ですね。魔法も闘気も感じられないのに、これほどまでの『存在感』。ポポロ村に、あなたのような実力者が来てくれるなんて心強いわ」

キャルルは、ふわりと微笑んだ。

北極星のような人望と称される、眩しすぎる笑顔。

「良樹さん。もし行く当てがないのなら、この村で『お店』を開いてみませんか? ちょうど広場の屋台スペースが空いているんです」

「えっ……お、お店でござるか?」

「ええ。あなたの『召喚魔法』で出すあの料理……リーザがこれほど幸せそうに食べるものなら、きっと村のみんなも喜ぶわ。村の自警団の食事もお願いできたら、私、とっても嬉しいな」

(おい、良樹。これは絶好の機会だ。この『雷神』の庇護下に入れば、しばらくは安全が保障される。それに、客が増えればお前の『善行ポイント』とやらも効率よく稼げるだろう)

ロードの助言を受け、良樹は覚悟を決めた。

「ふむ……。運命が拙者をこの地に留めるというのなら、抗うのも野暮でござるな。いいだろう、ポポロ村に、至高の『サスガ屋』を構えてやろうではないか!」

「決まりね! それじゃあ、まずはシェアハウスの私の家に案内するわ。……リーザも一緒に住んでるから、賑やかになるわね」

「え、シェアハウス!? お、女子おなごと同居でござるか!?」

良樹は鼻血が出そうなのを必死に堪えた。

「やったぁぁ! ダーリン様と一緒! 明日からはパンの耳を卒業して、三食牛丼ライフですぅぅ!」

「だーかーらー! 誰がダーリンでござるかぁぁぁ!!」

夕暮れのポポロ村。

中二病の青年、哲学する始祖竜、極貧アイドル、そして最強の村長。

後に「伝説の黄金カルテット」と呼ばれることになる四人の、奇妙な共同生活が今、幕を開けたのである。

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