表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル『丼マスター』で異世界スローライフ?〜ゴミ拾いしてたら始祖竜が懐いたので、辺境の最強村で至高の牛丼屋はじめます〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

EP 10

最強の防衛(?)拠点、ポポロ村

物理最強の村長キャルル、幻覚防衛の天然エルフ(ルナ)、遊撃工作と土木の極貧令嬢ダイヤ、そしてパンの耳を貪る底辺アイドル(リーザ)。

三大国の徴税官すらも無力化(幻覚漬け)して追い返したことで、ポポロ村は図らずもマンルシア大陸において「絶対に手を出してはいけない最凶の要塞」として完成しつつあった。

しかし、当の住人たちにそんな自覚は微塵もない。

「さぁ、皆の者! 今日は村の平和と、我ら『サスガ屋パーティ』の結束を祝して、過去最大の宴を催すでござるよぉぉ!」

夕暮れのポポロ村広場。

良樹は屋台の前に立ち、黒コートをバサァッ!と翻して高らかに宣言した。

その手には、先ほどの「無血開城ボーナス」で得た【 50,000 pt 】という、かつてない桁外れの魔力ポイントが握られている。

「ダーリン様ぁ! 宴ってことは、今日は牛丼のお肉が二倍ですかぁ!?」

リーザが空のどんぶりとマイ箸を両手に持ち、目をキラキラさせて飛び跳ねる。

「フッ。甘いでござるよリーザ殿。今日の拙者は一味違う。……刮目するが良い! これが、冥界の深淵より引き上げられし、海神の遺産でござる!!」

良樹は空中のパネルを、親の仇のように連打した。

消費ポイント、一万。二万。三万……全ツッパである!!

「いでよ! 『至高の海神宝箱アルティメット・シーフード・バレル』ッ!!」

カァァァァァァァァァッ!!!

これまでで最大級の魔法陣が展開され、広場のど真ん中に設置された巨大なテーブルの上に、『それ』はズシンッ! と重々しい音を立てて顕現した。

「なっ……!?」

「こ、これは……っ!!」

ヒロイン四人が、あまりの光景に息を呑み、言葉を失った。

それは、もはや「丼」という枠に収まるものではなかった。

直径一メートルはあろうかという巨大な木製の寿司桶。

その上に、まるで宝石箱をひっくり返したかのように、海の幸がこれでもかとばかりに積み上げられているのだ。

黄金色に輝く、大粒のウニの山。

ルビーのようにキラキラと光を反射する、こぼれんばかりのイクラ。

分厚く切られ、美しい霜降りの脂が乗った大トロ。

手のひらほどもある巨大な赤海老に、コリコリとした食感が伝わってくるようなアワビ、そして極太のズワイガニの爪。

酢飯の香りと、磯の豊潤な香りが、暴力的なまでの質量を持って広場に充満する。

「う、う、うわぁぁぁぁぁっ!!」

リーザが感極まって号泣した。

「パ、パンの耳にネギを乗せてお寿司の味を想像してた私が……本物の、海のお宝の前に……っ! お母様ぁぁぁ!」

「リーザ殿、泣いてないで食うでござる! 今日は無礼講でござるよ!」

「いただきまぁぁぁぁす!!」

リーザが猛然と桶にダイブし、大トロとウニを同時に口に放り込む。

「んんんんんんんっ! 溶けるぅぅ! お肉じゃないのに脂が甘いですぅぅ! イクラが口の中でプチプチ弾けて……っ! 生きててよかったぁぁ!」

「ちょっと、私にも食べさせなさいよ! ……はむっ! な、何これ……! これまで野営で食べてた缶詰のスープと干し肉は、一体何だったの……っ! アワビの歯ごたえと旨味が、脳髄に響くわ……!」

ダイヤも真紅の鎧をガシャガシャ鳴らしながら、感涙にむせび泣きながらカニ爪にかぶりつく。

「わぁ……綺麗ですね! いただきまーす! んっ、お魚さんが新鮮でとっても美味しいです!」

ルナは相変わらず優雅に、しかし恐ろしいペースでエビを平らげていく。

「ふふっ。良樹さん、本当にありがとう。あなたが来てから、この村は毎日がお祭りで、とっても楽しいわ」

キャルルが、イクラの乗った酢飯を上品に頬張りながら、蕩けるような笑顔で良樹を見つめた。

(ククク……最高でござる。美少女たちに囲まれて、最強の飯を食う。これぞ異世界転生の醍醐味でござるよ!)

良樹もまた、わさび醤油をたっぷりつけた大トロを口に運び、そのあまりの美味さに昇天しかけていた。

(――エピクロスは、人生における最高の善は『快楽の追求』であり、苦痛の不在であると説いたが……)

屋台の横で、騒がしい宴会を眺めていたロード(始祖竜)は、心の中で静かに呟いた。

(この底抜けの馬鹿騒ぎと、胃袋を満たす暴力的なまでの旨味。……神だの権力だのと小難しいことを捏ね回すより、この『海鮮丼』を食らって笑うことこそが、宇宙の真理アタラクシアなのかもしれんな)

最強の哲学竜は、スッと立ち上がると、良樹の背後に歩み寄った。

(……おい良樹。我の分のウニと大トロを残しておけ。あの青い人魚に全て食い尽くされる前に、我にもその真理(海鮮丼)を味わわせろ)

「アッハイ、ロード殿の分は別皿に取り分けてあるでござるよ!」

良樹が慌てて巨大な皿を差し出すと、ロードは満足げに鼻を鳴らし、ウニと大トロを一口で丸呑みにした。

「……美味い」

夜空には二つの月が浮かび、ポポロ村の広場には絶え間ない笑い声と、美味いものを食べる幸せな咀嚼音が響き渡っている。

小心者の中二病男が始めた、小さな移動丼屋『サスガ屋』。

その周りには、いつの間にか最強で最凶で、最高に騒がしい仲間たちが集まっていた。

「フハハハハ! 宴はこれからでござるよ! サスガ屋は、明日も元気に営業でござる!」

かくして、マンルシア大陸全土を巻き込む彼らの狂想曲スローライフは、さらなるカオスと飯テロを予感させながら、賑やかに夜の闇へと溶けていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ