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ハズレスキル『丼マスター』で異世界スローライフ?〜ゴミ拾いしてたら始祖竜が懐いたので、辺境の最強村で至高の牛丼屋はじめます〜  作者: 月神世一


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EP 6

シェアハウス、パンク寸前

「お、お願いですキャルルちゃん、リーザちゃん! 私もこのお家に住まわせてくださいっ!」

ポポロ村の村長宅(4LDKのシェアハウス)の玄関先で、絶世の天然エルフ・ルナが両手を合わせて懇願していた。

しかし、家主であるキャルルは腕を組み、冷酷なまでに首を横に振った。

「ダメよ、ルナ。あなたが家の中にいたら、寝ぼけて『火炎龍』を召喚して家が丸焼けになるか、朝のゴミ出しのついでにゴーレムで床を抜かれる未来しか見えないわ。絶対にお断りよ」

「そ、そんなぁ……!」

ルナの大きな瞳に、みるみるうちに涙が溜まっていく。

だが、純度100%の善意のテロリストを家に入れるのは、村の存亡に関わるリスクだった。良樹もキャルルの背後で「そうだそうだ」と頷いている。

しかし、ルナは最後の切り札を持っていた。

彼女は空間魔法のポーチから、世界樹の森で採れた最高級フルーツが山のように盛られた『極上フルーツバスケット』を取り出した。

マスクメロンサイズの黄金の桃、宝石のように輝くぶどう、滴るような甘い香りを放つマンゴー。

「これ……入居のご挨拶のつもりだったんですけど……うぅっ」

その瞬間である。

「ルナちゃん!! ようこそ私たちのシェアハウスへ!! さぁ、上がって上がってぇぇっ!」

リーザが、目にも止まらぬ速さでルナの手からフルーツバスケットを強奪し、満面の笑みでルナを家の中へと引きずり込んだ。

「ちょっ、リーザちゃん!? 物で買収されないでよ!」

「うるさいですぅ! 私は今日、パンの耳にメロンの果汁をつけて食べるんですぅぅ! この子は絶対に良い子ですぅ!」

飢餓状態の地下アイドルの前では、村の安全保障などパンの耳以下の価値しかなかった。

こうして、天然エルフ・ルナのシェアハウス入居がなし崩し的に決定した。

「ふふっ。賑やかでいいわね。……あ、私は家賃が払えないから、お庭を借りるわよ」

一方、紅蓮の極貧令嬢・ダイヤは、村長宅の広い庭の片隅に、手慣れた手つきで『軍用サバイバルテント』を設営していた。

「いや、女の子が庭でテント暮らしって……。ダイヤ殿、いくらなんでもそれは不憫すぎるでござるよ?」

良樹がドン引きしながら声をかけるが、ダイヤは腰に手を当てて胸を張った。

「フッ、心配無用よ。私は孤高の賞金稼ぎ。満天の星空と、研ぎ澄まされた刃があれば、そこが私のベッドルームよ! (※訳:今月も弾薬費で一文無しです)」

   * * *

そして翌朝。

村長宅の庭先オープン・ダイニングには、かつてないほどカオスな食卓の風景が広がっていた。

「いただきまーす!」

ルナの目の前には、彼女が自前で生成した【優雅なヴィーガン朝食】が並んでいる。

朝露をまとったオーガニック野菜サラダ、新鮮な果物のデトックススムージー、そして世界樹から直送された極上の蜂蜜をたっぷりかけた厚切りトースト。

「はぁぁ……あまあい……! はちみつ、最高ですぅ……!」

そのすぐ隣では、リーザがルナから恵んでもらった蜂蜜を『パンの耳』にベチャベチャに塗りたくり、恍惚の表情でしゃぶっている。

「ふぅ。朝の冷えた体には、やっぱりこれね」

一方、庭のテントの前では、フルアーマー装備のダイヤが焚き火を起こし、木の枝に刺したマシュマロを炙りながら、『熱々のコーンスープ(缶)』をすすっている。

そして、その全てを眺めながら、良樹はポイントで召喚した『ネギ玉牛丼(並)』を無言でかき込んでいた。

天然エルフのセレブ食。

人魚姫の極貧ポイ活食。

アサシンの野営ジャンク食。

中二病のチェーン店食。

あまりにも属性が渋滞しすぎた、地獄のような格差食卓である。

(――ジャン=ジャック・ルソーは『人間不平等起原論』において、私有財産制がもたらす階級と格差の悲劇を嘆いたが……)

屋台の横で寝そべっていたロード(始祖竜)は、朝日に照らされる四人のカオスな食事風景を眺めながら、心の中で深く深いため息をついた。

(この庭に広がる凄惨なコントラストを見るに、これはもはや経済格差などというチャチなものではない。生態系のバグ、あるいは文明の衝突だな。……やれやれ、我の牛丼の味が落ちる前にさっさと食うとしよう)

最強の哲学竜の冷静なツッコミが、今日も良樹の脳内にだけ響き渡る。

「む? どうしたでござるかロード殿、ため息などついて。拙者の牛丼が羨ましいでござるか? ククク」

「……貴様は本当に、救いようのないアホだな」

「なんでテレパシーで暴言吐かれたんでござるか!?」

ポポロ村の朝は、今日も平和(?)だった。

――しかし、彼らがこの狂った日常を謳歌していたまさにその時。

ポポロ村に向かって、ルナミス帝国、アバロン魔皇国、レオンハート獣人王国の「三大国」から、強欲な徴税官たちが同時にカチコミの足を向けているとは、知る由もなかったのである。

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