表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル『丼マスター』で異世界スローライフ?〜ゴミ拾いしてたら始祖竜が懐いたので、辺境の最強村で至高の牛丼屋はじめます〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/25

EP 3

善意のテロリスト、道路を粉砕する

「ゼェ……ハァ……! ククク、見よ! この澱みきった闇のただのドブを、我が聖なるスコップで浄化してやったでござるよ!」

純金100kgの塩漬け(地下室への幽閉)騒動から一夜明けたポポロ村。

良樹は朝から汗水垂らし、村のメインストリート沿いにある側溝の泥かきに精を出していた。

【 ピロッ♪ 善行(溝掃除)を検知しました。 +50 pt 】

「よしよし! 地道な労働こそが最強のポイント還元率でござる! これで昼飯は『特盛カツ丼』が確定でござるな!」

泥まみれになりながらも、ポイントの加算音にニヤニヤと笑う良樹。

そんな彼の背後から、パタパタと軽やかな足音が近づいてきた。

「あ、良樹さん! おはようございます!」

振り返ると、そこには朝の陽光を背に受けてキラキラと輝く絶世のエルフ、ルナが立っていた。

彼女は良樹が泥だらけになっているのを見て、パッと顔を輝かせる。

「すごい……! 漆黒の魔闘剣士さんともあろう方が、村のために朝早くからお掃除をしてるんですね! 私、感動しちゃいました!」

「フッ。当然でござる。この程度の泥など、我が身に宿る魔の瘴気に比べれば清流のようなもの……」

良樹がスコップを杖代わりにポーズを決めた、その時である。

「私、良樹さんのその気高い精神に胸を打たれました! 私も、村の環境美化のお手伝いをしますね!」

ルナが、胸の前でギュッと両手を握りしめた。

その瞬間、良樹の背筋にゾクァッ! と嫌な悪寒が走った。

昨日の「純金100kg」と「腎臓売買の提案」の記憶がフラッシュバックする。

「ま、待つでござるルナ殿! 拙者の修行(ポイ活)の邪魔を――」

「大地の精霊たちよ! この村を綺麗にするために、力を貸して!」

良樹の制止は間に合わなかった。

ルナが無邪気な笑顔で両手を天に掲げると、彼女の周囲に膨大な緑色の魔力光が渦巻いた。

ズゴゴゴゴゴゴォォォォォッ!!!

「な、なんでござるかこの地鳴りは!?」

良樹が慌てて地面に手をつく。

次の瞬間、ポポロ村のメインストリート――村人たちの生活を支える綺麗に舗装された土の道路が、ボコォッ! ボコォォッ! と次々に爆発するように盛り上がり始めた。

「「「ピギィィィィィッ!!」」」

土煙の中から姿を現したのは、体長2メートルを超える巨大な『土塊のゴーレム』たちだった。

その数、ざっと三十体。

「えへへ、ゴミ拾い用のゴーレムちゃんたちを召喚してみました! さぁみんな、村のゴミを綺麗にお掃除してね!」

ルナがウインクを飛ばすと、ゴーレムたちは「ギガァッ!」と従順に鳴き、道路に落ちていた小さな紙くずや小石を拾い集め始めた。

「おお……! これはすごい魔法でござるな。これなら村中があっという間にピカピカに……」

良樹が安堵の息を吐きかけた、その直後だった。

「――って、アレェェェェェ!?」

良樹の目が限界まで見開かれた。

ゴーレムたちが歩き回るたびに、ポポロ村のメインストリートが悲鳴を上げて崩落していくのだ。

それもそのはずである。

ルナが召喚したゴーレムの「素材」は、他でもない【ポポロ村の道路の土】そのものだったのだから!

ゴーレムが一体生まれるたびに、道路の土が数トン単位でえぐり取られ、歩き回るたびに地面に巨大な陥没穴クレーターが形成されていく。

ズドンッ! ガラガラガラッ!

「ああっ! 井戸へ続く道がァァ!」

「八百屋の前の道が陥没したぞォォ! 馬車が通れねぇ!」

村のあちこちで、村人たちの悲鳴が上がる。

「ほら見てください良樹さん! ゴーレムちゃんが空き缶を拾ってくれましたよ! えらいえらい!」

「えらいえらいじゃないでござるぅぅぅ! 道が! 拙者たちの生活インフラが完全に破壊されてるでござるよぉぉ!」

ルナの召喚した三十体のゴーレムによって、ポポロ村の交通網はわずか数分で完全に麻痺した。

巨大なクレーターだらけになった道は、もはや月面のようである。

「えっ? あれ? なんだか道がデコボコになっちゃいましたね……? おかしいなぁ」

首を傾げるルナ。その笑顔には、一点の曇りも(悪気も)ない。

純度100%の善意による、完璧なインフラ・テロリズム。

良樹は絶望のあまり、泥だらけのスコップを取り落とし、その場に崩れ落ちた。

(――カントは『道徳形而上学の基礎づけ』において、「無条件に善いものは、ただ善意志のみである」と説いたが……)

騒ぎを聞きつけて屋台から顔を出したロード(始祖竜)は、穴だらけになった村の惨状と、ニコニコしているエルフを見比べながら、心の中で深くため息をついた。

(知性と常識を伴わぬ『善意』とは、かように恐ろしい厄災となるのだな。……やれやれ、人間の哲学とは時として現実の不条理に敗北するものだ)

「ロード殿ぉぉ! 悠長に傍観してないで、時間巻き戻しでなんとかしてほしいでござるよぉぉ!!」

泣き叫ぶ良樹の悲痛な声が、クレーターだらけの村に空しく響き渡る。

天然エルフの恐ろしさを骨の髄まで味わった良樹だったが――この陥没した道路が、新たなトラブル(とヒロイン)を引き寄せることになろうとは、まだ知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ