第6話 苺谷さん
そして俺達は駅前の本屋にやってきた。そこそこも大型店でラインナップが充実しているので偶に来る店だ。着いた途端、月島が目をキラキラ輝かせてキョロキョロしている。
「月島って普通の本も読むんだっけ?」
「まあ金子君ってラノベと漫画くらいしか読まないって言ってたもんね……」
何故か月島にぷぷっと馬鹿にされる。おおん?ラノベ読みを馬鹿にしてんのか?
「あっそ〜ですか、俺みたいなオタクは真っ直ぐラノベコーナーに行かせてもらいますよ」
「ああ……、ごめんって……」
俺はわざと煽るようにラノベコーナーへと向かう。後ろから「待ってよ〜」とうめき声をあげながら月島がついてくる。そしてラノベがたくさん並ぶ棚についた。
「へえ、こんな本が出てるのか」
「ギャルの女の子……」
俺の肩越しに除くように俺が手に取った本をジロッと見ている。いや、俺が何を読もうが勝手だろう。
「こういうヒロインが好きなの?」
「いや、表紙の絵が上手いから手に取っただけなんだが……」
初見のラノベを見る理由なんて表紙の女の子が可愛いからくらいだろ。
「裏切り者……」
「俺が誰を何に裏切ってるっていうんだ……。月島だって漫画とかアニメのイケメンキャラ好きだろ」
「うぐっ」
俺の正論が効いたのか月島は頭を抱えている。
「月島も好きな漫画とか見てくれば?」
「……、折角二人で来たんだから一緒に周る……」
何故か月島は俺からピッタリ離れないみたいだ。自分の好きな所行ったら良いのに。まあ無理に離す理由も無いんだが。
「ねえ、相談者の女の子って可愛いの?」
「ん?そりゃ可愛いんじゃない?」
鬼塚さんはギャルって感じで怖がられてもいるけど超かわいいって言ってる男子も多いからな。そんな事を考えながら月島の顔を見るとほっぺを膨らませている。
「え?何?」
「金子君が他の女子を可愛いって言うのがムカつく……」
「月島から聞いたんじゃん……」
あまりに理不尽なので放っておいてラノベを漁る事にする。ちなみに月島はムカつくと言いながらも何故か俺の隣から動かなかった。
そして次の日、とうとう金曜日。今週色々あったが今日を乗りければ明日から休みだとウキウキしながら登校する。駅から学校までの道をルンルンで歩いていると急に脇腹に何かがぶつかった。
「なんだ?」
「金子、おはよ〜」
後ろを振り向くと鬼塚さんが立っている。どうやら持っていた鞄で俺の脇腹を叩いたようだ。
「鬼塚さん……、おはよう」
鬼塚さん、昨日の俺の話聞いてなかったのか?俺と一緒にいる所なんて周りに見られない方が良いって。まあ一緒に話してるくらいで気にするのなんて俺くらいなのか?
「何か疲れてる?」
「いや、そんな事無いよ」
まさか君の相談に乗っているから疲れたなどと言う訳にもいかないし言うつもりもない。
「まあ私みたいな美人に話しかけられたらテンション上がるでしょ?」
「……」
「ねえ、何で黙るの?」
俺が呆れた顔をしていると鬼塚さんは俺のケツを蹴ってきた。
「生意気」
「大変申し訳ございません」
怖いので平謝りをする。まるで蛇に睨まれた蛙である。ギャル怖いんだよ。
「ほら、行くよ」
「はいっす」
何故か俺は鬼塚さんの後ろを着いていく形になった。周りの人からは何故俺のような地味なやつが鬼塚さんと一緒にいるのだろうと不思議そうに見られているのを感じる。そして教室に二人で入る。
「零、おはよ〜」
「もえ、はよ〜」
クラスに入ると苺谷さんが鬼塚さんと挨拶をしている。俺はその間にするっと自分の席に行こうとする。
「ちょっと金子、挨拶くらいしなよ」
「かねこっち、おはよ〜」
「あ、おはようございます……」
苺谷もえ、鬼塚さんの友達でキャピキャピしたギャルだ。個人的には鬼塚さんより苦手である。
「え〜、二人仲良かったっけ?」
苺谷さんは俺達をまじまじ見て不思議そうにしている。鬼塚さん何とか上手いこと逸らしてくれ!!
「そうなの、金子って結構良いやつだからもえも何か困ったら相談した方が良いよ」
「はい!?」
何故か紹介されて俺は嫌な汗が垂れてくるのを感じる。何故。
「え〜、そうなの〜。じゃあ最近彼ピと上手くいってないの相談して良い〜?」
「え、ええ、俺が?」
「いやいや、金子そういうの得意でしょ」
鬼塚さんはケロッと言ってのける。もしかすると今までの相談を経て俺の事を信じてくれているのかもしれないがこういうのは困る……。
「ま、まあ、大して役に立たないと思うけどそれでも良ければ
……」
「言質取ったからね〜。今度話し聞いてね♡」
何か俺の平穏な生活が脅かされていってるのは気の所為ではないだろう。
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