第5話 去年の同級生
「この後、どうするの?」
スマホで時間を確認してみると四時半になっている。特に校内でやることも無いし帰るだけだ。
「帰るんだったら一緒に帰る?」
「いや、止めておいたほうが良いよ」
「……何で?」
俺に意見されて鬼塚さんがムッとしている。いや、鬼塚さんの事を思って言ってるんだ。
「鬼塚さんはこれから前田と付き合うために動くんだから、極力俺と一緒にいるところなんて見られない方が良い」
「……、あっそ」
鬼塚さんは不満そうな顔をして荷物を持ってさっさと部室を出ていく。出ていく際に部室の扉をバンと強く閉めていった。
「やれやれ……」
俺も鞄を持って部室の電気を消して外に出て鍵を締める。まあ鬼塚さんも前田との仲が思ったより上手くいかずにイライラしているのかもしれないな。俺もさっさと帰るか。
「あっ……、金子君……」
「ん?ああ、月島か」
部室棟の廊下を歩いていると、俺の目の前には一年の時のクラスメイトの月島沙織が立っていた。彼女は去年話していた時もかなり大人しめの女子だった。部室棟で会うと言うことは美術部の活動が終わったという事だろう。
「こんな時間までいるの珍しいね……」
「おう、久しぶりに相談者が来てな」
「……へえ」
月島は何か思うことがあるのかう〜んと唸っている。
「……、それって女子?」
「まあそうだな」
「……」
何故か月島は黙ってしまう。まあ恋愛相談部に依頼来るなんて珍しいから誰か考えてるのかな。
「その子のプライバシーに関わるから話せないぞ」
「……、分かってる。こっちで調べるから良い……」
こいつ、小声で不穏な事口走った気がするけど気の所為か?
「おい、デリケートな事なんだから詮索するなよ」
「その子って金子君の事が好きなの?」
「違う違う。他に好きなやつがいるんだと。ていうか詮索するなって言ってるだろ」
「……ふ〜ん」
何か納得していない感じだな。ていうか去年も思ってたけどやっぱりこいつ変わった奴だよな。大人しくて自分の話をしないから何を考えているか分からん。
「……、金子君これから帰るんだったら私と一緒に帰らない?」
「俺は全然良いぞ。じゃあ下駄箱の辺りで待ってる」
月島はニヤッと笑った後、長い黒髪を靡かせながら美術部の部室まで走って行った。そういえば月島とはクラスでよく話していたけど一緒に帰るのは初めてだな。
その後、慌てて走った来た月島と一緒に下校する。女子と一緒に下校だなんてまるで漫画やアニメで見た景色である。
「そういえば月島、俺と一緒に帰って平気なのか?」
「……何で?」
月島は不思議そうに俺の顔を覗く。こいつこう見ると結構可愛いな。
「いや、月島だって彼氏とか好きな人とかいるだろうし俺と一緒に返って周囲に勘違いされたら損だろ」
「……」
俺がそう言うと何故か月島はうえっと言いたげな嫌な顔をしている。
「私みたいなオタク女に彼氏なんている訳……」
「今どきオタクなんて気にするやつ少ないだろう。それに月島可愛いんだから多分モテるぞ」
推し活なんて言葉が流行るくらいなのだ。みんな何か好きなものがあるのなんて普通だろ。
「うへへ……、私が可愛い……」
「いや、モテたいならその笑い方だけは損だから止めた方が良いな」
うへへって悪役みたいな笑い方するな。折角の美人が勿体ない。
「か、金子君こそモテるんじゃないの?」
「はは、俺がモテる訳無いだろ。女子と一緒に帰るなんて小学生以来だぞ」
何故か月島が嬉しそうに笑っている。え、俺がモテないからって馬鹿にしてる?
「周りの女子達の見る目が無いだけ……」
「月島は優しいな。お前くらいだよ、そんな事言ってくれるの」
駅までの道を歩きながら周囲を見ると偶にチラッとこちらを伺う生徒がいる。まあ男女が一緒に歩いてたらそういう勘違いされることもあるのか。
「ね、ねえ、この後暇なら一緒に本屋でも行かない?」
「お、漫画か何かの発売日なのか?」
「そ、そういう訳じゃないけど……」
まあ本屋なんてただ眺めるだけでも面白いもんな。俺と月島は漫画やラノベが好きということで仲良くなった事もあるので趣味は合うのだ。
「まあどうせ、暇だし行くよ。久しぶりに月島と話もしたいしな」
「そ、それって……」
「しばらくの間に月島にオススメしたいラブコメ漫画があるからな!!」
先程まで嬉しそうな顔をしていた月島が一気にゲッソリとした顔をしていた。コロコロ表情が変わって面白いやつである。
もしよろしければブクマや☆、いいね、感想いただけると幸いです




