第7話 真の陽キャ
朝から疲れた。俺はあまりの疲労に机にうつ伏せになっている。
「お前、最近鬼塚に気に入られてるな」
顔を上げると前田が心配そうに俺を見つめていた。俺が何とか体を上げる。
「いや、そんな事無いぞ」
「ふうん、そう見えないがな」
鬼塚さんはお前の事が好きで俺と話してんの!!とキレたい所だがその気持は鬼塚さんが直接伝えるべきものだと思い直して口をつむぐ。まあ前田からは俺達が仲良くなったと見えてもおかしくないのか。これは放課後、彼女に注意しないと駄目だなと考える。
「ま、前田、おはよう」
いつの間にか眼の前に立っていた鬼塚さんが勇気を出して前田に挨拶をしている。俺はいいぞと拳を握る。
「鬼塚……、おはよう」
前田はまだ鬼塚さんが怖いのかぎこちなく返す。お前はお前で何をそんなにビビっているんだ。
「ふ、二人で何話してたの〜?」
「い、いや、別に……」
鬼塚さんの話をしていたというのが恥ずかしいのか黙ってしまっている。はあ、仕方ない。
「いや、俺が好きなラブコメ小説を推していたんだけど興味無いなと断られた所なんだ」
我ながらナイスフォローであると脳内で自画自賛する。
「へ〜、金子ってラブコメ好きなんだ〜?」
鬼塚さんは何故か俺の話題に食いつく。いや、俺にかまってちゃ駄目でしょ。俺は前田に見えないようにバッテンマークを作る。鬼塚さんはそれを見ても首を傾げているだけだ。何故こんな時だけ察しが悪いんだ。
「いや、俺のことなんかより前田、生徒会の活動どうだ?」
「は?いや結構忙しいぞ。まあやりがいはある」
「生徒会……、前田凄いじゃん」
鬼塚さんが目をキラキラ輝かせて前田を見つめている。ふう、これでいい。しかしサポートはいた方が良いか。何せ前田はまだ鬼塚さんを怖がっているし鬼塚さんもどこかぎこちない。
「俺なんてまだまだだ。会長達が仕事出来すぎるせいで俺はお飾りみたいなもんだ」
会長達が仕事出来るというのは本当なんだろうが、恐らく前田も仕事が出来るはずだ。確か、次期会長候補だと言われていたはずだ。
「いや、今年からは前田が会長をやるんだろ?」
「え、そうなの!?凄いじゃん」
先ほどから我ながらアシストがうまいな。これがもしバスケだったら滅茶苦茶褒められている事だろう(?)。
「いや、俺はそんな器じゃない」
だが前田は下を向き反応は著しくない。これはもしかしてあまり触れられたくない内容だったのか?
「いや、前田は凄いよ!!」
しかし、鬼塚さんは変わらず前田を褒めていた。
「会長になってもならなくても生徒会に入って頑張ってるんだからカッコいいじゃん!!」
「そ、そんな事ないさ……」
前田は顔を赤くして頭をポリポリ掻いている。お、これ良い雰囲気なんじゃないか。
「私なんて毎日友達と遊んでるだけだよ?それと比べたら二人共カッコいいよ」
「ん?」
二人ってなんだと思って鬼塚さんを見ると何故か俺の事を見つめていた。
「金子だって恋愛相談部で色々な人の相談に乗ってるんでしょ?それって凄いじゃん!!」
「は?いや、俺は殆ど相談に来ないし部室でゆったりしてるだけだから!!」
な、何で俺の話までしだすんだ。これで俺達の関係がバレる事はないと思うが余計な事は言わない方が良い。それにこの場面は前田を褒めて二人で仲良くなれば良いだけだろうに。
「いや、俺も金子は良いことしてるって思うぞ」
「お前まで何言ってんだ」
「関わりの無い奴から相談に乗ってやってるんだろ?俺みたいな堅物にはできん」
こいつ、自分が堅物だって自覚はあったのかよ。ていうか褒められて背中が痒い。
「私なんて友達とダンス部入ったけどすぐ行かなくなっちゃったし……」
鬼塚さんは天井を見て黄昏れてしまった。ど、どうする。前田をチラッと見るとブンブンと首を振っている。ええい、役に立たん!!
「鬼塚さんだって……」
と言いかけて俺は鬼塚さんの事をあまり知らない事に気付く。そんな状態で俺がアドバイス出来る事なんて……。
「私だって何?」
「あ……」
やばい、鬼塚さんは俺の事を真っ直ぐ見つめている。ここで何か気休めを言うのは良くない。けど……。
「やりたいことなんて今すぐ決めるものでも無いんじゃないかな」
「え」
「俺だって軽い気持ちで部活を作ったに過ぎないし。前田みたいに本気でやってない」
「……」
「それに俺達みたいな陰キャと違って鬼塚さんはクラスの中心人物じゃないか」
現に今クラスのみんなからこちらに視線を集めている。トップカーストの鬼塚さんが何故俺達のような陰キャに話しかけているのかと疑問なんだろう。
「二人は陰キャなんかじゃないでしょ」
「そ、そんな事……」
「ていうか陰キャとかネガティブな言葉好きじゃないだよね」
こ、これが真の陽キャかと俺達二人は眩しすぎる鬼塚さんに目を焼かれていた。
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