第3話 作戦会議
「……、恋愛相談部ってそこまでやるんだ?」
「まあケースバイケースではあるけどね」
鬼塚さんは再び席につく。どうやら俺の話を聞いてくれる気になったようだ。気付いたらホッとして息を吐いていた。
「で具体的にどうするの?」
「……、まあまずは授業を真面目に受ける所からでは……」
「うっ、そうだよね」
俺達は今二年で来年から受験になる。鬼塚さんが大学に進学する気があるのかは分からないが真面目に授業は受けた方が良いのは間違いない。
「積極的に手を上げるとか、生活態度をちょっと直すだけでも印象変わると思うから」
「わ、分かった。それは私が変わる」
まずは印象が悪いところを直す。それに気付けば前田も見直すはずだ。
「で聞いて良いのか分からないんだけど、どうして前田の事を?」
「何かいつもクールな感じできっちりしてて格好良いなあって……。それだけ……」
鬼塚さんはそっぽを向きながら話す。彼女が言っている事に嘘はないだろう。しかし何かを隠している、そんな気がした。だがそれを指摘しても仕方がない。空気が悪くなるだけだ。
「で二人って何か接点があるの?」
「いや……、特には無いかな」
先ほどから目が合わない。話していて思ったが意外と鬼塚さんは人見知りなのだろうか。まあ自分の恋愛話をしているから照れているだけかもしれないが。
「よし、分かった。俺が何とかセッティングをしよう」
「具体的にどうするの?」
鬼塚さんは横目で俺を見てきた。やっと目があったな。
「休み時間とかに俺達が話している所で鬼塚さんに入ってきてもらうとか。俺と鬼塚さんが知り合いだってことにして」
「良いけど……。それ私と金子が仲良いって思われない?」
まあその懸念は出るよな。いきなり俺と鬼塚さんが話すようになったら変だろう。だがその対策は今思いついた。
「考えたんだけど俺が他校の女子を好きって事にすれば前田も誤解しないだろう」
「好きな子いるの?」
「え?いや、そういう嘘っていうか体にするって事」
「なーんだ、つまらない」
いや、鬼塚さんの事を思って必死に作戦を考えているのにその言い草は何だと少しだけイラッとする。
「周りからすれば鬼塚さんが近付いたのは俺ではなく前田って事をアピールしたいね」
「どうして?」
「鬼塚さんと前田が仲良いって事を周知させたいって事。つまり外堀を埋めるんだ」
鬼塚さんと前田が急に近付いたら周りは絶対気にする。鬼塚さん、もしくは前田が相手の事を好きなのではないかという空気にするのだ。
「なるほど、金子って計算高いんだね」
「何か言い方悪くない!?鬼塚さんの事を考えて言ってるんだけど!?」
「ぷぷっ、冗談冗談」
鬼塚さんがやっと笑顔を見せた。まあこれでリラックス出来てれば良いのだ。大して仲良く無い俺、しかも自分の恋愛相談をしているのだ。心を開けっていうのは難しい。だがある程度気を許してもらえないと話がし辛いからな。
「……、今まで金子の事誤解してたかも」
「え、俺どう思われてたの?」
「クラスで本を読んでニヤニヤしている変態」
「……」
俺はラブコメ小説を読むのが好きだ。新刊が出た時など偶に休み時間に読んだりしているがまさかニヤニヤしていたとは……。思いがけない一言に俺の心がブレイクされた。
「ごめんごめん。でも今は頼りになるって思うよ」
「はは……、それは良かった……」
間違いなく今の俺は苦笑いをしていることだろう。心から笑っていないから分かる。
「それにさ」
鬼塚さんは何故か立ち上がって俺の横の席を引いて座る。え、何で?
「私の為に親身に話を聞いてくれるなんてお人好しじゃん」
「い、いや、それが部活だからさ」
「……、それもそっか」
鬼塚さんは立ち上がって先ほどまで座っていた席に戻った。今のは何だったんだ?
「それじゃあ対前田同盟って事で連絡先交換しようよ」
「え?」
「え?じゃないでしょ。相談とかしたい時に不便じゃん」
「ああ、それはそうだ」
俺はスマホを取り出してお互いの連絡先を交換する。メッセージアプリに【鬼塚零】という名前がポンと音を立てて追加される。俺の連絡先に女子が追加されるなんてなあ。
「じゃあしばらく放課後はここで作戦会議ね」
「え、連絡先交換したんだから毎回会う必要も無いんじゃ?」
「……」
何故か鬼塚さんから呆れたと言わんばかりに苦い顔をされる。
「こういうのって一緒に作戦立てるのが楽しいんじゃん!!」
「そ、そうなの?」
カップルを作るって過程と結果が楽しいだけで手段は何でも良いんだけど。まあ言わない方が良いだろうな。
「分かった。放課後は基本的に俺はここにいるようにするから来たい時に来て」
俺がそう言うと鬼塚さんはご満悦なのか笑顔になった。
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