第2話 前田が嫌いな人
「そう。あの前田が好き」
鬼塚さんは照れているのかそっぽを向きながら会話をしている。前田は俺の友達だがまさに堅物という言葉が似合うような男だ。生徒会に入っていて勉強もできて真面目な性格をしている。そんな奴を鬼塚さんが好きだという。
「……」
「こんな私が前田をって変かもしれないけどさ……」
「めっちゃ良いじゃん!!」
「!?」
俺は飛び上がって大喜びをする。ギャルが真面目系男子を好きになるって王道じゃん!!ラブコメが大好きなので憧れるシチュエーションに思わず興奮してしまう。
「良いと思う。俺、応援するよ!!」
「そ、そう?」
鬼塚さんは少し顔をひきつらせている。俺はそれを見て恥ずかしくなり座り直す。急にはしゃいで変なやつだと思われたか。
「そ、それで前田の何を聞きたいの?」
「う、うん。前田って好きな人とか彼女とかいるのか聞きたくて」
「ん?前田本人から聞かないの?」
「私達、あんまり話したこと無いし……」
あまり話したこと無いのに好きなのか。まあ、それは置いといても前田ってあまり自分の話をしないんだよな。いっしょにいる感じ、女性の陰はないと思うが。
「う〜ん、聞いたこと無いなあ」
「そ、そう……」
鬼塚さんはがっくりして下を向いてしまう。まあわざわざ部室にまで来て尋ねてきたのはそこを聞きたかったんだろうなという事は分かった。
「俺から聞いてみようか?」
「ほ、本当?」
「うん、友達だし俺から聞いてみるよ」
そう言うと鬼塚さんはぱあっと笑顔になる。うっ、可愛い。ていうか前田の奴、こんな可愛い子に好かれるなんて何て羨ましいんだ。
「あ、ありがとう。助かる」
「まあ活動の範疇だしね」
鬼塚さんは満足したのか鞄を持って立ち上がる。なるほど要件は済んだという事か。
「金子って明日もここにいる?」
「うん、いるよ」
「そしたら結果、また明日ここで教えてくれない?」
まあ、確かに人目がつくところで伝える内容では無いしね。鬼塚さんだって極力人に知られたくないだろうし、俺と二人でいるところも見られない方が良いだろう。
「分かった。また明日ここで今日と同じ時間で」
こうして俺は鬼塚さんと前田をくっつけるために動く事になったわけである。
そして次の日、昼休みに前田にその事を尋ねることにした。
「前田って彼女とかいるのか?」
「は?いるように見えるのか?」
質問を質問で返されたがこの反応はいないと同義だろう。俺はホッとする。これなら鬼塚さんに大きなチャンスがある。
「まあ良いや。好きな人はいるのか?」
「さっきから何だ。何を企んでいる?」
「企むも糞もあるか気になったから聞いてるだけだよ」
急に尋ねたからか警戒されてしまう。しかし、鬼塚さんの為にもなんとか成果を出さなければ。
「ふん、まあ良い」
「……、じゃあ好きなタイプとか。どんなタイプの女子が好きかくらい聞いても良いだろ?」
「別にそういうのは無いな」
駄目だこりゃ。堅物な前田には恋愛の話をしてもまともな返答がない。
「ああ、だが苦手なタイプはいるな」
「おお、どういう子だ?」
「ああいう、煩くて不真面目な奴らだ」
そういって前田はある集団をチラ見する。その方向を見ると鬼塚さん達のいる女子グループだった。みんな楽しそうに笑っていた。
「授業も寝たり話したり真面目に受けない、そういう連中は好かん」
「そ、そうかあ……」
話は終わりだと言わんばかりに前田は弁当を食べ始める。俺は一点憂鬱になる。この内容はなんて鬼塚さんに伝えれば良いんだ?伝えないという選択肢もあるが前田と付き合いたいという事なら伝えなければいけないだろう。
俺は放課後、足取り重く部室に向かう。少なくとも鬼塚さんを傷つけてしまうだろう。そんな事を考えていると肩をポンと誰かから叩かれる。
「よっ、元気無いけどどうしたの?」
後ろを振り向くと鬼塚さんが立っていた。明らかに元気がない俺を見て心配してくれたみたいだ。
「い、いやあ、話は部室で……」
「も、もしかして……」
一点、鬼塚さんの顔が暗くなる。もしかしなくても最悪の事を考えてしまったのだろうか。前田が誰かと付き合っているという可能性を。
「多分だけど鬼塚さんが考えている事ではないはず」
「ほ、本当?」
鬼塚さんはほっとして溜息を付く。最悪の想定をさせてしまった事を謝りながら一緒に並んで部室へと向かう。
部室へとついて俺達は長机を挟んで向かい合うように座った。
「で……、前田には彼女はいないみたい」
「良かった〜」
鬼塚さんはニッコリ笑顔になっている。うっ、こんなに喜んでいるのにあの事を伝えなきゃいけないのか……。
「で……、ここからなんだけど」
「も、もしかして好きな人が?」
「い、いや、それは教えてくれなかったんだけど……」
「じゃあ何?」
「え、え〜と」
「ハッキリ言ってよ」
鬼塚さんは腕を組んで早く言えと催促してくる。滅茶苦茶言い辛いけど仕方ない。
「……、何か不真面目な人が嫌いらしくて授業中寝たり話している人達が苦手だと……」
「なるほどね……、私みたいなのが嫌いだと……」
俺が言い淀む様子を見て察したらしい。もしかすると鬼塚さんにも思う所があるのかもしれない。
「まあそれはどう考えても私が悪いよね……」
鬼塚さんは溜息を付いて立ち上がる。もしかすると彼女はこの恋を諦めるのか。
「ちょっと待って。諦めちゃうの?」
「……分かんない……、けど嫌いって言われたら」
「別に鬼塚さんが嫌いって言われていた訳じゃない」
「そうなのかもしれないけど。実質振られたみたいなもんじゃない」
よく見ると彼女の目が潤んでいる。涙をこらえているのだろうか。
「諦めるのは早い。俺が協力する!!」
「え?」
鬼塚さんは驚いて俺を見つめる。
「俺が鬼塚さんと前田を付き合えるように全力でサポートする!!」
「な、なんで?」
「部活っていうのもあるけど。鬼塚さんを応援したくなったからさ。そんなに俺の友達を想ってくれてるんだから協力させて欲しい!!」
もしよろしければブクマや☆、いいね、感想いただけると幸いです




