第1話 恋愛相談部を訪ねる者
「金子は何で恋愛相談部なんて部活を作ったんだ?」
昼休み、俺の友達である前田裕太と一緒にご飯を食べている時に尋ねられた。俺は箸を置いて一瞬考える。
「いや、この学校部活か委員会に強制的に入れって言われるじゃん」
「それは知っている。何故部活を作ろうと思ったのかと、何故【恋愛相談部】なのかを聞いてる」
俺達が通う涼風高校は文武両道を掲げているかなんかで生徒は部活、または委員会などの活動を行わければいけないという面倒な校則があるのだ。
「いや、俺は運動もそんなに得意じゃないし委員会に入るのも面倒だったんだよ」
「新しく部活を作る方が面倒だろう……」
裕太はメガネをくいっと上げて俺を見つめている。全く理解出来ないといった感じだ。
「でなんで【恋愛相談部】かだよな。それ説明するの面倒なんだよな」
「まあ……、無理に聞く気はないが……」
裕太は溜息をついて弁当を食べるのを再開した。別に説明したくない訳では無い、ただ面倒なだけだ。俺はふと教室を見渡す。
「つっ……」
教室の奥で友達とご飯を食べていたであろう、鬼塚零と目が合った。俺と目が合ったのが気に食わなかったのかすぐ目をそらされる。俺は特に気にしないで弁当を食べる。俺はその後の放課後で鬼塚がこちらを見ていたのかを知ることになる。
そして放課後、俺は部室へ向かう。涼風高校には部室棟が校舎とは別に存在している。俺は校舎と部室棟を結ぶ連絡通路を歩く。向こうからは部室で着替え終わったであろう練習着を来た生徒たちとすれ違いながらドンドン奥へ進んでいく。
そして部室棟の一番奥まで進む。扉には下手くそな字で【恋愛相談部】と書かれた札が架かっている。俺は部室の鍵を鞄から取り出して部室の扉を開く。
「はあ……」
誰もいない部屋には長机と椅子が四脚置いてある。椅子を引いて座って机に鞄を置く。
「部員が俺だけってマズイよなあ……」
俺が一年の時に創設した【恋愛相談部】は創部以来、部員が俺だけしかいない。そのため、正式な部活というよりは部費もでないので同好会に近い。ただ部室棟の一番奥の部屋がたまたま空いていたので使って良いとの許可が出たのでここを活動場所にしている。
俺は鞄からラブコメ小説を取り出して読む。恋愛相談部に相談する人は数ヶ月に一回来る程度なので基本的に暇なのである。部室棟の外から運動部の練習の声が聞こえてくるのをBGMにして読み進める。
しばらく小説を読んでいると扉からコンコンと音がした。俺は扉を見るとわずかに扉が揺れている。まさか自分の所だと思わなかったので慌てて小説を鞄にしまい急いで立ち上がる。
大慌てで「今、開けます」と扉の所まで向かって扉を開ける。そこには赤みがかった髪、耳には何個かピアスをした女子が立っていた。それは同じクラスの鬼塚零だった。
「お、鬼塚さん?何か用でしょうか?」
俺は何故鬼塚さんがここに来たのかと疑問に思ったので尋ねる。
「いや、ここ【恋愛相談部】でしょ?相談したいんだけど」
「あ、ああ。相談者って事。どうぞ中へ」
俺は長机を布巾で拭いて椅子を引いて鬼塚さんに座るように促す。鬼塚さんは部室の中をキョロキョロと見渡した後、椅子にどかっと座る。
こ、こえ〜。俺は正直、鬼塚さんをビビっている。俺はクラスの中でカーストが高いとは言えない。別にいじめや問題があるわけでも無いので気にはしていないが。それに対して鬼塚さんは正真正銘クラスカーストトップのグループに属しているギャルだ。
「……」
「ねえ」
俺がビビって黙っていると鬼塚さんがしびれを切らしたのか話しかけてきた。
「は、はい。何でしょう?」
「一応、私が相談者なんだからそっちから話しかけてきても良くない?」
確かに、向こうは何かを思って相談しに来てきてくれているんだから俺からアプローチをかけていかなきゃだ。
「失礼しました。では相談内容を聞いても?」
「ぷっ、何で敬語なの。ウケる」
言われてみれば確かに同い年でクラスメイトなのに敬語って滅茶苦茶おかしいよな。
「おっほん、じゃあ相談聞かせてもらっても良い?」
「う、うん。私、好きな人がいて……」
まあ、想定通りの答えである。恋愛相談しに来る人はかなりのケースで好きな人がいるからどうすれば付き合いたいと相談に来る人が多い。
「なるほど。その人と付き合いと?」
「そ、そうかも。でもどうすれば良いか分からなくて……」
話を聞いていて思ったが意外だ。鬼塚さんはクラスではかなり活発な女子だ。いつも大きな声でみんなを引っ張るムードメーカーといった感じなので今のような照れてる感じは見たことがない。
「おっけー。俺が協力できる事はするよ。言える範囲で良いから好きな人ってどんな人なの?」
これからの方針を決める為に人物像を明らかにしていく。同じ学校の生徒の可能性もあるので無理に誰かを聞くつもりはないが。
「わ、私、前田が好きなの……」
「ん?前田ってもしかしてあの前田?前田裕太?」
鬼塚さんは顔を赤くして頷く。そう彼女の想い人というのは俺の唯一のクラスの友達である前田裕太だった。
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