【皇帝】追従に焦がれた支配者⑨
激しい戦闘により砕け散っていく神崎家所有の孤島。その中心で繰り広げられる迷、麗子、聖王の戦いはもはや一般人が飛び込めば即死の竜巻と化していた。
「どうした、斬れ味が落ちてきているぞ。」
「鈍い方がよりあなたを苦しめられると思ってねっ!」
麗子と聖王が空中を移動しながら渇糸と豪槍を激突させる。
「はぁ…はぁ…!」
麗子の顔色は蒼くなってきていた。渇糸は相手を切り裂ければその血を吸収し、キャドーの持続と斬れ味を維持できるが、そうでない場合は使用者である麗子自身の血で補うことになる。
…目も霞んできた…今にも目玉が破裂しそう…。でも…虎徹を殺して神崎家を滅茶苦茶にしたこいつを生かすなんてあり得ないわっ。
「そろそろどこかの人気漫画みたいにバラバラにされてくれないかしらっ!」
「あいにく漫画は読まない。あまり得るものがなさそうだからな。さぁ、そろそろ死のうか。」
聖王が渇糸の雨を掻い潜り、槍を振り下ろす。
「ぐぅっ!!」
麗子が渇糸を、束にして槍を防御する。
「それだけ糸を束ねても私の槍を斬れんとは。威力が落ち過ぎだ。諦めて命を差し出した方が楽……………ぐぅっ!?」
その時、聖王の背中に何度も激痛が走る。振り返ると突き刺さっていたのは無数の太い棘。巨大な薔薇の上に迷が立っていた。
「殺風景棘薔薇…。あなた、まさかこの状況で自分が有利になっていると思っているのかしら。残念、あなたの死もすぐそこまで来ているのよ。」
迷が冷たい眼差しで言う。聖王は背中を払いながら槍を横薙ぎにして2人から距離を取った。
「小賢しい…だが悪くない…お前たちの力、存分に発揮して足掻いて見せろ。それでこそ心躍るというものだ。」
「…………………………。」
麗子はそう言う聖王に何も言葉を返さなかった。ただ何かを見透かすような冷たい目をするだけ。
「…なんだその目は。興醒めするではないか。気に入らん。」
聖王にもそれが伝わったのか、麗子目掛けて槍の連撃を放つ。だが麗子も百戦錬磨。ボロボロの体で尚その攻撃のほとんどを見切る。
「ゴフッ……これ以上長引けば厳しいわね。」
すぐさま割って入った迷と戦う聖王を見つめながら麗子はぼやいた。
「迷さん…さっき宣言したわよね。この島全てを戦場にする。あなたの力量を信じてやらせてもらうわ。さぁ…私の目がどこまで持つか。」
「躾のなっていない植物共だ。この島ごと全て焼き払ってやろうか。」
迷から繰り出される無数の植物を弾きながら聖王がぼやく。
「それは紛う事なき地球の敵ね。もう指名手配犯の身だけれど、あなたを殺す大義名分ができるのは悪くないわ…………っ?」
その時、迷は視界の隅にいる麗子が指でサインを送っているのに気が付いた。
あのサインは……「誰一人死なせないで。」。
どうして今? いや、彼女のあの目…何かとんでもないことをやろうとしている。いずれにしてもこの島の誰一人として死なせないなんて無茶にも程があるわ…ほんと…。
「相応の成果がなかったら承知しないわよっ!!」
迷は地面に拳大ほどの大きな種を叩きつけた。すると種が弾けて白いふわふわしたものが舞い上がり、島中に飛んでいった。
「っ、何をしたっ…ちっ!」
「教えるわけないでしょっ!」
困惑する聖王に迷は桜のサーベルを振り抜く。距離をとりながら聖王は空を見上げた。
黒金迷のキャドーはいくつか見た。私の知る限り…あのキャドーは「斥候のワタガシラ」。あのワタガシラ一つ一つが彼女の目となる索敵用のキャドーだ。
何故今そんなものを? 敵の私は目の前にいると言うのに。何か碌でもないことを企んでいそうだな。
「念の為全て焼却……っ!?」
聖王のこめかみ付近を真紅の渇糸が走り抜ける。
「よそ見している場合かしら。細切れにして海にばら撒くわよ。」
麗子も視覚外から攻撃してくる。流石の聖王にも余裕はない。
「まぁいい。見てから対処すれば…。小手先の技では私を倒すことなどできんと教えてやろう。」
上空に幾千本もの槍が出現する。
「また槍の雨? そうは行かないわ。」
迷が周りの木々を操り迎撃の体制に入る。
「私の攻撃は変幻自在。回避など不可能だ。」
空から大量の槍が降り注ぐ…………が、同時に地面からも無数の槍が飛び出してくる!
「なっ!? 下からっ!?」
迷は虚をつかれるも、なんとか回避する。だが聖王もそれを突っ立って見てはいない。
「まずは黒金迷、終わりだ。槍輪・群星魔突風っ!!」
空間を貫く幾重もの突風が迷目掛けて放たれる。
「ぐっ………ああああぁぁっ!?」
そのうちの一つが迷の脇腹を抉った。
「がふっ!? ぐっ……はぁ…はぁ…!」
そのまま地面に落下するも、迷は全身を震わせながら聖王の前に立つ。夥しい出血、その身体は限界に近かった。
「散れ。」
聖王は間髪入れずに迷に槍を突き出した。
鮮血が宙を舞う。
「あ……………まい………わねっ……!」
「何だと…お前…!」
槍が貫いたのは迷の胸ではなく僅かに体軸をずらしたことによる左腕だった。
致命の一撃を回避したことに驚いたのではない。まだ大人とも言えぬ歳の少女があっさりと片腕を犠牲にする精神性に聖王は内心不気味さが募る。
「鳴海美奈といい…お前らは狂っているのか?」
「狂ってないと………やってらんないでしょう…世界中を…私たち数人の子供が敵に回すなんて…!」
迷は自分の腕を貫いている槍を右腕で掴んだ。
「ちっ!」
聖王は槍から手を離そうとするが、迷が創り出した太い木の根が槍と聖王の腕を固定した。
「大体ね………あんたを見てるとムカつくのよ……。自分が優秀だからって……他の人間をいないように扱って……。」
迷が血を吐きながら怒りの表情を浮かべる。
「鬱陶しい木っ端がっ!!」
聖王は空いている方の手に槍を持つ。しかし、それもどこからか伸びてきた木の根に弾かれる。辺りを見渡せば、自然という自然が意志を持った生き物の様に激しく胎動していた。
まるで迷の怒りに呼応する様に。
島を滅茶苦茶にした聖王を一丸となって排除しようとしているかの様に。
「えぇ…良いわよね…あんたも神崎麗子も…でもねぇ…優秀過ぎる兄弟を持つ弟や妹がどんな思いをするか分かるかしら?」
聖王はそれを聞いて、迷の姉、黒金神無の人にカテゴライズすることすら難しい戦闘力が頭によぎった。
「何でも自分ならできる…自分一人で十分…他は護る対象、支配の対象…ほんと…神にでもなったつもりかしら…。」
「ぐおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」
聖王が渾身の力を込めて拘束を解こうとするがびくともしない。麗子の意図よりも遥かに強い拘束…そこから見える迷の頑強な怒りの意志…聖王は初めて冷や汗を浮かべる。
こいつは何をするか分からん。こうなれば…
「ぐぅっ!?」
その時、聖王の腕に激しい痛みが走る。見ると聖王の腕に赤い花々が咲いていた。
「自惚れなあなたには………朱い永遠の眠りを送るわ…。」
このキャドーは邪馬牧師から聞いた…一嗅ぎで昏睡に至るアマリリス!! 今の状況で意識を失うのはまずいっ。
聖王は反射的に息を止めていた。それでも僅かにアマリリスの香りを吸ってしまう。
「ぐお………。」
視界が揺れてバランスを崩しそうになる。
何故こいつは昏倒しない…!
「ふふ……自分を超えかねない強敵との戦いを愉しむと言っておきながら…いざ自分の命が脅かされればその焦り様……正体見たり…ね…所詮……あなたは………本当のところ………」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!!!」
聖王は怒号と共に左腕の拘束を無理矢理解いた。腕から激しく出血するがそんなものは気にならなかった。
「クソ餓鬼があああぁぁぁっ!!!」
そのまま全力で迷の頬をぶん殴った。
「がっ…………!」
迷は力無く吹き飛んだ。
今にして思えば、迷が口に咥えていたのは一輪の救心律鈴蘭。それでアマリリスの昏倒を防いでいたと分かるが、もはやどうでも良かった。迷が喋ろうとしていたその先の言葉…聖王は何としても聞きたくはなかった。
迷は仰向けに倒れたまま動かない。勝負ありだ。
そう思い聖王は槍を持ってトドメに向かう。
だが…何かおかしい。聖王の戦闘者としての勘が訴える。
迷は倒れているが、意識は失っていない。ただ空を見つめている。身体はボロボロだろうが…先ほどまでの精神力を考えればあっさり抵抗を諦めるだろうか。
それに神崎麗子はどこにいった。先ほどから黒金迷との一騎打ちになっている。キャドーに限界が来たか? だとしても今の今まで何もしないなどあるだろうか。
それらの違和感は…ポツリと降り出した一滴の雨により聖王が空を見上げたことで……全て解消された。
「な………何だとっ!?!?」
上空には、空一面を覆い尽くすほどの真紅の糸が網目状に張り巡らされていた。それは島全体を軽く覆い尽くすほどの範囲…間違っても回避などできるはずがない。
神崎麗子のやつ…こんなものを仕掛けて…いや、それより…!
「貴様正気かっ!! こんなもの、島にいる全員が細切れになるぞぉ!!!」
聖王が麗子の方を見る。
「他人の心配なんて余裕ね。でも、私はあなたを殺すためなら何だってするわ。あなたが喧嘩を売ったのは…そういう相手なのよ。」
そう言った麗子の目からは血がだくだくと流れているそれで狂気的な笑みを浮かべるものだから気の弱い者であれば見るだけで失神しかねない迫力だ。
本気か? 本気で仲間諸共やる気か?
そう逡巡するほど聖王は未熟ではなかった。迷えば死ぬ。即座に防御体制を取る。
「死になさい。」
渇糸の網が落ちてくる。
「使いたくはなかったが仕方が無い。」
聖王の身体に鎧が纏われた。だがそれはそこら中に溢れている甲冑騎士のものとは違う。先ほど撃破された最上級騎士、男爵騎士のものだ。
これでも神崎麗子が本調子ならば受けきれなかっただろう。だが、渇糸の維持が限界値かつ斬れ味が落ちた今であればっ!
「何とかなりそうだなあぁぁぁっ!!!」
押しつぶそうと迫る渇糸と聖王の槍が激突する。
「ぐっ………ぐおおぉぉぉ!!」
「見苦しい…これで終わりっ!」
麗子が言うと、さらにもう一重の渇糸がのしかかる。
「がっ……舐めるな……私は……天に選ばれし…支配者なのだ……お前の様な者に下されるなど…あっては……ならんのだあああぁぁぁ!!!」
聖王の雄叫びと同時、 渇糸がつっかえを通り抜けた様に急速落下。大地を細切れにした。
大地の至る所から潮水が噴き出してくる。崩れゆく島…麗子の足元には何とか移動していた迷。二人の視線の先には…。
「はぁ…はぁ…くくくっ……終わったな。」
渇糸の網を生き延びた聖王の姿。
男爵騎士の鎧は粉々に破壊され、それでも防ぎきれなかった渇糸による斬撃で身体中血まみれだった。それでも…まだ聖王は立っている。
「万策尽きたお前たちにもはや勝ち目はない……もっとも……。」
聖王は粉々になった島を見渡し顔を歪めて嗤う。
「もはやどちらが勝とうが意味はないのかもしれんが。お前たち2人以外は全員死に、大陸亀の指輪も粉々か海の底だろう。まったく、つまらん自爆攻撃をしてくれた。」
聖王は嗤っている。こうする以外に手段が無かった麗子たちを嘲笑っている。この状況では実質麗子たちの負けのようなものだからだ。
2人はそれに答えず、
「私は行けるところまで行くわよ。」
迷は麗子にそう言って進み出る。
「そうしてもらえると助かるわ。あと少しだけ…最後の視力が戻る時間が欲しいもの。」
麗子も平坦な声で言う。2人に動揺は全く見られない。最初から予定調和だったように。
「まだ抗うか。ここまで犠牲を払ったからにはせめて私の首くらいは獲りたいと。まぁ、良いだろう。どのみちお前たちを誰1人生かすつもりはない。」
聖王は2人の態度に内心訝しみながらも前に出る。迷も植物を使えない環境になったため、手にしているのは愛用の桜色のサーベル。
「終焉だ。」「はぁぁっ!!」
2人が同時に踏み込み、互いの武器がぶつかり火花を散らす。そして激しい斬り合い。
「その身体でよくやる。だがもう私には付いていけない。」
聖王の槍が迷の頬を切り裂く。
「痛いわね…女相手に顔ばっか狙うんじゃないわよっ。」
迷がサーベルを切り返す。しかしその動きは満身創痍のため空を切る。
「何笑ってるのあなた? 理解に苦しむわ。」
「お前たちが滑稽だからだ。」
「そう…それは…。」
聖王の槍が迷に届いた瞬間、迷の身体が花びらになって消える。オート回避のこのキャドーは、迷の疲労により精度をほとんど失っていた。
「勘違いも甚だしいわね。」
迷はそう言って両手を胸の前に向けた。
…聖王は動かなかった。戦闘者として気付いたからだ。これが最期だと。迷は次の攻撃で力尽きる。だからこれまでの健闘を讃えて受けてやろう。聖王なりの、「施し」だった。
すると、迷の前に2種類の花が出現した。エリカと、牡丹の花。それは綺麗な葉っぱに包まれて花束の形になった。
「仇への花束」(フォウ・ブーケ)
それを迷は聖王に放った。
当然何かの攻撃だと思い、聖王は身構える。しかし、花束は聖王の前で散り、花びらは身体にまとわりつくようにして消えていった。
迷は力無く仰向けに倒れていく。
聖王はこの花束の意味を考えた。植物が好きで、尚且つ皮肉屋のこの少女が取りそうな行動…つまり、花言葉だ。学のある聖王はエリカと牡丹の花言葉を思い出す。
エリカは…孤独、牡丹は…王様。それらを掛け合わせると…。
聖王が考える前に、倒れゆく迷が最後に答えを発した。
「裸の王様………………。」
そう言って、迷は地面に倒れた。
数秒、聖王は思考と身体共に硬直していた。そして迷が言ったこと、やったことを理解した瞬間…
「……殺すっ!」
全身の血が沸騰したような感覚に襲われて、無我夢中で槍を持って迷に迫る。自分の勝ちなどどうでも良かった。この目の前のガキを穴だらけにする。聖王は思考はそれだけになっていた。
当然その姿は隙だらけ。
「がっ!?」
聖王の肩口を真紅の糸が通り抜けた。
「ふぅ…ありがとう迷さん。もう十分よ。」
麗子が聖王の前に立つ。
「ふん……いつまでもつまらん足掻きを。もうお前たちの負けだと言うのに。イラつかせることだけは上手い。」
聖王は左肩の腱が今ので完全に切れてしまい、片腕しか使えない状態になった。
「さっきからあなたは何を言っているのかしら。虎徹以外は誰1人として死んでいないけれど?」
「…………何を言っている。島全てを粉々にしておいて、とうとう狂ったか。」
だが聖王に何となく嫌な予感がして飛び上がる。
「なに…。」
すると、神崎本邸だけが無傷で残っているのが見えた。周りには迷が遠隔で発動させたであろう大木が。弱った麗子のキャドーならそれで防げるだろうが…。
「どう? 理解できた? あなたの私兵たちも助けてあげたんだから感謝しなさいよね。」
「…は?」
麗子の言葉が理解できない。確かに先ほど見た限りでは島中に散らばっていたはずの私兵たちは1人も見当たらなかった。いつの間に…そんな真似できるはずが…。
いや待て、小此木直はどこにいった。倒れていたはずの鳴海美奈も消えている。あの2人が…まさか…!
「分かる? あなたが自分さえ勝てば良いと言っている間、私たちは全員が生き残る方法を探していたの。…ノブレスオブリージュ…。あなたなら当然知っている言葉よね。あなたは…あなたの兵隊である彼らや弟を守らなければならなかった…その責任があったのよ。でもあなたがそれを放棄したから、私たちが代わりに果たした。もう他の人に言われてるかもしれないけれど、『支配者』である私が言ってあげるわ。」
やめろ……。
「不壊聖王、あなたは支配者失格よ。自分のことしか考えない、あなたが軽蔑している追従者こそ相応しいわ。」
ー弟はどうか知らないけど、お前、支配者向いてないんじゃねぇの?ー
ー上に立つ人間というものはね、自身の弱みに向き合うことも大切なんだー
ー裸の王様………………ー
「黙れえええええええぇぇぇぇぇっ!!!」
激昂した聖王の槍と麗子の渇糸が激突する。もはや渇糸の斬れ味は普通の刃物程度しかなく、ただのリーチの長い武器になっていた。
「あなたの過去は知っているわ。気の毒だとは思うけれど、あなたを救った桂陛下の言葉を履き違えるべきでは無かったわね。下を愛さなくて良いと、下を守らなくて良いは違うわ。」
「私が上に立つ者としての責務を怠っていたとでも言うのかあぁぁっ!!」
「その通りよっ! それ自体は責められることじゃない。人には向き不向きがあるし、上に立つ者だって間違えることはある。…私もそうだった…。でも、もはや全てを捨て駒としか見ないようなあなたは支配者になるべきじゃないっ、付いていく者たちに破滅しかもたらさないわっ!」
「私より能力のない奴らなど私の駒にされて当然! 私がそうしろと命じたのだからっ! 私という支配者が望んだのだからっ!」
2人の激突はもはや電光石火。ただでさえ不安定な大地をさらに細切れにしていく。
「あなた自身が支配者を望んでいない癖によく言うわ! 自分より弱い者が徒党を組んで乗り越えるのが良いとか言ってたらしいわね。 まるで周りの成長を望む美談に聞こえるけれど、自分という自信のない支配者の座を誰かに力で奪ってほしいという自信のなさが現れているだけじゃないっ!!」
「ふざけるなああぁぁ!! 雑魚のくせに私の何もかもを愚弄しおって!! そこまで私が支配者に相応しくないというならば誰かがさっさと取って変わればよかったのだぁ! そんな力もないくせにほざくなぁぁっ!!」
聖王の怒りの槍が麗子の腹部に突き刺さった。
「ぐふっ……居たじゃない……1人…あなたの代わりに……支配者になりたがっていた人が…すぐそばに…」
麗子が弱々しく撃ち合いながら言う。
「そんな奴いる……わけ……が…!」
その時、聖王は自身の弟の姿が浮かんだ。能力は自身に劣るが、貪欲で、皆んなの前に立ちたがる弟の姿が。
「あなたは……なにがしたかったの…。あなたは何のために力を得たの…。あなたが成し得たかったことは……何だったのよっ!!」
動きが止まった聖王の胸板を、渇糸が思い切り通り抜けた。
「ぐおおおおぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
私は……何のために……。
完全に致命傷だった。聖王は仰向けに倒れていく。
その時、自分の村が滅んだ日のことを思い出した。
力無く倒れる弟を、守りたいと思った。
そうだ……私は………俺は……弟を…聖司を守るために…強くなりたかったんだ……。
そのための力は…とうの昔に手に入れたのに…いつの間にか…守るべき弟さえも…醜い追従者に見えちまってた……。
一番大切なもの……何で……忘れて……たん…だ…。
俺の………人生って………いったい……なん……の…………た……め…………………。
不壊聖王は死んだ。その最期の声には、深い悔恨の念が麗子には見て取れた。
「あなたはきっと、私のあったかもしれない可能性……。深い怒りや悲しみは、怨念になって大切なものを見失わせることもある…。」
麗子はその場に崩れ落ちた。
「参ったわね。まだ戦いは終わってないのに…もう、目が見えない…わ…。」
エデン 第9位 「皇帝」 不壊聖王 死亡
「審判」 夕霧彼方vs佐藤明梨
「世界」 山田吹雪
「教皇」 邪馬脳
「力」 軍尾夏豪
? ?
「月」 上島御奈帆
「運命の輪」蛭子鉄丸
「節制」 神威マニア
「皇帝」 不壊聖王 death
「隠者」 羽田素子 death
「太陽」 稲取楓 death
「戦車」 剛火拳乱 death
「死」 那由多一美death
「塔」 谷岡浩二 death
「愚者」 影木幽 death
「魔術師」上代芳司 death
「吊し人」玉城清 death
「女教皇」山田深雪
「正義」 騎千勇士 death
「星」 屋島祈
「悪魔」 ?
「恋人」 空席 vanish
文字数普段の3倍になっちゃった…。神崎本島での戦いはまだ続きます。




