【皇帝】追従に焦がれた支配者⑧
「お前たちの死を持って決着だ。この不壊聖王には塵芥の刃など届かん。」
聖王が地面に手をかざすと甲冑騎士の腕が次々に生えてくる。その手にはどれも槍が握られている。
「ガラクタ遊びはもうたくさん。」
麗子が見つめるだけでそれらは細切れになる。
「決着ね。死ぬのはあなただけど。」
迷の背後には生き物のようにうねる大木たち。甲冑騎士たちを次々に粉砕していく。
「自然に優しく…など、流行らん。偽善者共がよくさえずっている。焼却だ。」
聖王の槍に炎が宿り、そのまま稲妻の如き突きが繰り出される。それは迷の大木を瞬く間に燃やす。
「酷いことをするのね。でも、この島はたくさんの自然で溢れかえっている。皆んなあなたに怒っているのよ。好き放題荒らされたから。」
燃え尽きた大木の先に迷の姿はない。代わりに周りの木々が蠢いて聖王に襲いかかる。
「この島の豊富な資源はお前に利するか。だが…これしきで何になる。」
聖王が槍をもう一本取り出し、腰だめに構える。
「槍輪・鰐鮫の顎。」
次の瞬間、二本の槍が巨大な猛獣の牙のように木々を噛み砕き、さらに奥から近づいていた麗子を牽制する。
「独特の槍術ね。軍備流がベースなのでしょうけど…私の瞳の前では無力よ。」
聖王がバックステップを踏むと同時、麗子の渇糸が空間を走る。その場にあった大地が、木が、聖王の持つ槍の先端が一瞬で粉々になる。
「これは遠くからちまちま攻撃していたのではリスクがあるな。」
聖王はそう言って一気に麗子の懐に飛び込む。完全に渇糸の射程圏内だ。
「馬鹿ね、裏を描いたつもりでしょうけど…。」
真紅の渇糸に混じって白い糸が聖王の元に走り、両手両足を縛りつけた。
「私の他のキャドーをお忘れ? 視界に入ればそれで十分よ。」
同時に天高くにそびえ立つ紅葉が迷の元に伸びている。
「手裏剣銀杏、苦無紅葉。切り裂きなさい。」
そして雁字搦めの聖王の元に殺傷の刃と化した落ち葉が殺到する。動けない聖王に回避は不可能。
「笑止……この程度で不壊聖王を取ったつもりか。」
聖王の両手両足が甲冑に覆われ、麗子の糸を断ち切った。
「槍輪・龍絶尾、槍輪・魔突風。」
そして目の前の麗子に凄まじい横薙ぎを、遠くの迷に空気を切り裂くような投擲を行う。
「ちっ。」 「っ!?」
二人は紙一重で回避する。
「どうした。もっといけるだろう。久々の本格的な戦闘なのだ。二人で私の半分くらいは行って見せろ。」
聖王は未だ衰える様子を見せない。迷はその手強さに内心冷や汗をかく。
「偉そうに。今からあなたの死に様が楽しみだわ。」
とはいえ技の引き出しが多過ぎる。一々初見の攻撃に驚いてたら死ぬわね。痺れる戦いになるわ。
迷は大地に赤い花々を咲き乱らせる。
「邪馬牧師が言っていた一嗅ぎで昏倒する花か。中々に多芸。だがこの聖王の前では全てが徒と散る。」
聖王の槍が一振りされる。迷の身体は花びらになり回避するが、赤い花畑は一瞬で散らされた。
「そちらも見えている。」
同時に聖王が屈むと真上を真紅の糸が走り抜けていった。
「ちょっとあなた、さっきから植物を雑に扱うんじゃないわよ。」
「この島にあるものは全て私のもの。私がどうしようと自由です。」
迷と麗子が並んで聖王と向かい合う。
「…不本意だけど、役割りを決めて対処しましょう。一人では手に余る相手だわ。」
「そうするしかないわね。ただし、あなたのお仲間はあなたが守るんですよ? 一応気は配りますが…私、この島全てを戦場にしますから。」
そう言って麗子の身体が宙に浮き上がる。
「作戦会議は終わりか。どう抗う?」
聖王の槍が禍々しい形状に変化する。これまで使い捨てられてきた槍とは別物のようだ。
「消えなさいっ。」
麗子が聖王目掛けて超加速。その前面に展開されたのは網目状の渇糸。
「はぁぁぁっ!!」
聖王が全力でサイドステップ。広範囲に渡って大地がブロック状に切り裂かれた。
「あの糸をこれほどの規模で展開するかっ。良いではないかっ! 槍輪・群星魔突風!」
空間すら切り裂くほどの投擲。それが何十発も繰り出される。
「渇糸っ!!」
麗子が再び渇糸を展開。ほとんどの槍が切り裂かれたが、何本かが渇糸を破って麗子に迫る。
「っ、血が不足してきた…!」
しかしそれらの槍が麗子に届く前に、背後にピッタリつけていた迷が木枯らしを巻き起こして破壊する。
「随分上機嫌じゃない。これから死ぬというのに変な人ね。」
さらに片手にある桜の大剣を振るう。
「黒金流・万絶光っ!」
音すら置き去りにする斬撃は聖王のこめかみを掠める。舞い上がった血が渇糸に吸収された。
「そうではなくてはなっ。」
聖王と麗子は空中で超高速移動を始める。
「渇糸っ、最大展開っ!!」
「槍輪・万華鏡燕連千突きっ!!」
麗子の渇糸が、聖王の槍が、島全てを覆い尽くすほどに展開される。二人が突風のように撃ち合い、通り過ぎた大地が粉々になって海に沈んでいく。
「甲冑大魔人…叩き潰せっ!!」
島中に跋扈していた甲冑騎士たちが一つとなり、巨大な化物へと変貌する。その巨腕が麗子に振り下ろされるが…。
「爆裂拳紫陽花っ、打ち砕きなさいっ!」
迷の操る紫陽花がそれを受け止める。
聖王と正面から麗子が撃ち合い、その他のキャドーを迷が封じる。この連携により二人と聖王の力が拮抗する。
「がっ!?」 「ぐっ!?」
同時に聖王の槍が麗子の肩を…麗子の糸が聖王の脇腹を斬り裂く。
「良いぞ…これほどやるとは思わなかった! だが残念だっ…この不壊聖王の前には等しく死しかないのだからっ!」
「いきなり酔っ払ったように上機嫌になるじゃない…!」
「あぁ酔っているさっ、これほど自分に迫る相手など滅多に現れないっ!!」
◇ ◇ ◇
「きっはは、いいのぉ聖王さん? マニアちゃんが8位であなたが9位で。ひょっとしたら逆かもしれないよぉ〜?」
「確かに私とお前の実力は近しいものだろう。お前が強者であることも認める。だが…いまいち心が昂らんのだよ。ただ相手が強ければ良いというものではないらしい。」
「へぇ、まぁどうでもいいけど。聖王さんが昂る相手ってどんなの?」
「そうだな……私より力の劣る者たちが結束して対抗してくる…とかか?」
「きっはは、それって誰ってよりシュチュエーションじゃん。しかも漫画とかであるコテコテの。やっぱり今までの人生に不満があるの?」
「不満はない……だが、見てみたいのだ。私が支配者にならずともよかった…私を叩き潰すほどの力が世の人間たちにはあるのかどうかを。」
◇ ◇ ◇
その時、甲冑大魔人が突然音を立てて崩れ去る。破壊されたのではない。まるで機能が停止したかのようだった。すると遠くに見えるのは魔人を妖しい瞳の輝きで睨みつける直の姿。聖王のキャドーを封じたのだ。
「ふふ、せっかくキャドーを開花させたのだもの。このくらいの役には立ってもらわなくては。」
麗子がニヤリと笑う。
「あぁ、実に愉しいっ! ここまで追い込まれることに喜びを感じるなど我ながら相当な屈折ぶりだっ!」
「自分で言ってるわこの人っ、変態ねっ!」
渇糸と豪槍がぶつかり合って火花を散らす。島全体がこの戦いで激震…もはや原型を留めないほどに崩壊してゆく。
「審判」 夕霧彼方vs佐藤明梨
「世界」 山田吹雪
「教皇」 邪馬脳
「力」 軍尾夏豪
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「月」 上島御奈帆
「運命の輪」蛭子鉄丸
「節制」 神威マニア
「皇帝」 不壊聖王vs黒金迷&神崎麗子 次回、決着
「隠者」 羽田素子 death
「太陽」 稲取楓 death
「戦車」 剛火拳乱 death
「死」 那由多一美death
「塔」 谷岡浩二 death
「愚者」 影木幽 death
「魔術師」上代芳司 death
「吊し人」玉城清 death
「女教皇」山田深雪
「正義」 騎千勇士 death
「星」 屋島祈
「悪魔」 ?
「恋人」 空席 vanish




