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ずっと一緒に。異世界ライフ  作者: 江野喜けんと
第2章 裏世界をもう一度
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【皇帝】支配に焦がれた追従者


 

 「「器用貧乏……私 (俺)の嫌いな言葉だ。本当の意味で他者から必要とされていない自分を表しているかのようだから。」」



 「「無能な働き者…私 (俺)の嫌いな言葉だ。努力しても空回りしてばかりの自分を表しているかのようだから。」」


 

 「「不肖の妹 (弟)…私 (俺)の嫌いな言葉だ。姉 (兄)が自分を紹介するときによく使っている言葉だからだ。」」



 「「憧れ……私 (俺)がいつしか嫌いになっていた感情だ。抱いたところで、何者にもなれはしないと、姉 (兄)を見てきて嫌と言うほど理解したから。」」



 「「『不屈の堕天使』とエデンによる戦争。その一局面である神崎本邸の戦いに私 (俺)は身を投じた。自分も役に立ちたい。そして己の価値を証明したい。姉 (兄)に…それを見せてやりたい。そう思っていたのに。戦いは私 (俺)の遥か上の次元で繰り広げられている。きっと私 (俺)の姉 (兄)は今頃、不壊聖王 (神崎麗子)との死闘を繰り広げているんだろう。」」





 「それに引き換え、私は動くことさえできない。」

 「それに引き換え、俺への指示は動く事さえ出来ない者の始末。」


 

 「姉さんはさぞかし私に失望しているだろう。」

 「兄者がいかに俺に期待していないかが分かる。」



 「「惨めだ…。すごく惨めだ。この戦いに勝ったとして、私 (俺)と言う個人にはいったい何の価値があるんだろう。」」


 

 「聖王のせいで散々悪夢を見せられた。」

 「今までの人生は悪夢そのものだった。」



 「この悪夢は、今起きて行動すれば晴れるんだろうか。」

 「この悪夢は、動けぬ神崎透子を殺せば晴れるんだろうか。」


 

 「そう思い、私は聖王のキャドーから抜け出したのを確認し…」

 「そう思い、俺は神崎麗子のキャドーを払い除け…」


 




 「起き上がって目を開けた。」

 「透子が眠る部屋に入った。」




         ◇ ◇ ◇


 透子view



  私が目を開けると、不壊聖王の弟…不壊聖司が目の前に立っていた。手には私を殺すためであろう槍が握られている。



 「随分と辛気臭い顔をしているじゃない。私を娶ろうとしていた時とは大違いだわ。」


 「お前こそ、私にとどめを刺した時の猛々しさは見る影もない。」


 聖司の言葉を聞いて頭に疑問符が浮かぶ。


 私が聖司を殺した? 前の時間のことを言っているんだろうけれど、私の結婚騒動の時は撃退に留まったはず。直が見聞きしていない記憶は私たちにも共有されない。直が見ていない所で前の私は聖司を殺したんだろうか。…随分、前の時間の私は強いのね。


 「まぁいい。雑用と言えどこれは戦争だ。ここで死んでもらおう。」


 聖司が槍を構える。


 「雑用で命を落とすことになるあなたは哀れな最期ね。相応しいわ。」


私はこれまでのように虚勢を張って拳を握りしめる。どのみち、ここで死ぬわけにはいかない。犬死には…イヤ。



 聖司が踏み込むと同時に私はバックステップ。


 「やって見せろ。この時間軸では血染めのドレスで着飾ってやる。」


 聖司の槍が突き出される。


 見える…傑出した才能があるわけじゃない。私にも十分対処可能。


 私は避けると同時にキャドーで透明化する。


 「俺のレベルにそんな目眩しは通じんっ。」


 聖司は私がいる場所に的確に槍を投擲してくる。流石にこの程度で撒けるほど弱くはないか。


 「あんまり部屋を散らかさないほうがいいわよ。あなたを殺す刃が増える一方だから。」


 私は床に突き刺さった槍たちに触れ、それらも透明化させる。


 「ふっ!」


 そして次々に聖司へ投擲。


 「風を切る音で分かるっ。」


 聖司はそれらを槍で薙ぎ払う。


 「こんなのはどう?」


 私は部屋の壁際に移動。そこにあった窓ガラスを取り外した。


 「痛いわよ。」


 そのままガラスを透明化し、床にあった槍を投げる。


 パリィィンッと甲高い音を立てて、不可視のガラス片たちが聖司に殺到する。


 「ちっ。」


 聖司は両目を閉じて顔を両腕で覆う。腕の数箇所と脇腹をガラス片が抉った。


 「両目両手を敵の前で塞ぐなんてバカね。そんなに自分のお顔が大事だった?」


 私は聖司の左腕を取っていた。


 「ぐっ…しまっ…!」


 聖司が腕を払おうとするが、もう遅い。


 「片腕もらいよっ。」


 私は一瞬で聖司の腕を捻り上げた。


 「ぐおぉっ!?」


 グキリッと言う音共に聖司の肩が脱臼する。


 「手癖の悪い小娘がっ!」


 聖司が強引に私を振り払おうとする。でもそんなものはもう読んでいるわ。


 「嫌なら離れてあげる………わっ!!」


 私は聖司の腹を思い切り蹴って距離を取った。


 「がっ!?」


 聖司の口から血が出る。内臓にダメージが入ったわね。


 「この程度? 聖王の影とは言え随分弱いのね。ここまで一方的になるとは思ってなかった。」


 「くっ……傑出した身体能力に、使用が確認されている発勁などの中国拳法、さらに関節技…そして今の脚技…サバットか…。武芸者らしくもなく随分色々と手を出しているじゃないか。」


 聖司が顔を歪めながら言う。


 「私は引き出しが多いのよ。才能あり過ぎて申し訳ないわね。」


 「くくく…お前が披露した技の数々…どれも真の達人ならば一撃で命を奪うものだ。だが俺はまだまだ動ける、お前のような奴を、下手の横好きと言うんだったか。」


 聖司が中々ムカつくことを言ってくる。でも、だからなんだって言うのかしら。あなただって優秀すぎる兄を持っているんだから分かるでしょう。


 「弱い者の戯言なんて虚しいだけねっ!! 今の負け惜しみを辞世の句にすると良いわっ!」


 私は脚のバネを最大限まで動かして突撃する。


 「挑発が効いてしまったかぁ!? 流石にその動きは単調すぎだぁっ!」


 聖司が槍を正眼に構える。その導線に完全に私の体が収まっていた。


 「死ぬがいいっ!!」


 聖司の渾身の打突。



 

 「そんなに甘いわけないでしょう。バカね。」


 私の足が跳ね上がり、聖司の槍を下から蹴り飛ばした。槍は彼方へと消えていく。


 「ぐぉぉ……。」


 完全に体勢を崩した聖司の眼前にもう私は付けている。


 

 「散りなさいっ!! 下手の横好き発勁の炸裂よっ!!」


 私の掌底が聖司の土手っ腹を完全に捉えた。


 

 「ごぶあああぁぁぁぁっ!?」


 

 決定的だった。今ので内臓は完全にぐしゃぐしゃね。聖司は錐揉み状に吹き飛んで激しく壁に叩きつけられた。



 「がっっはぁっ!!」


 そして吐血。


 「力の差があり過ぎたわね。…ここまでよ。」


 私は背を向ける。動けない敵をいたぶる趣味はない。一刻も早く直や姉様たちと合流しないと。


 

 …だがその時、僅かに空気を割く音がした。


 

 …聖司の断末魔とは違うっ、なにっ?


 私は振り返りながらサイドステップ。




 「ぐうぅっ!?」


 それと同時、私の脇腹を鋼鉄の槍が掠めて行った。


 

 「どこへ行く気だ……ゲフッ……勝負はまだ着いていないぞ?」



 そこにいたのは、口から夥しい血を流しながら立つ聖司だった。


 「…内臓に深刻なダメージが入ったはずなのに…どうして立てるわけ?」


 脇腹が痛い…でも、動けないほどじゃない。


 「皮膚にキャドーで甲冑を巻いていたのだよ…ゲフッ……まぁそれは粉々だが…それに…俺には一つだけ兄者より上だと言い張れるものがあってね…。」



 聖司が狂気的な眼で笑う。



 「昔から回避が下手なのか攻撃をくらいに喰らいまくるんだ…。故に斬撃…打撃…あらゆる攻撃に対する受け身と耐久性が極まったんだ。……こればかりは…回避の上手い兄者にも真似はできない。さぁ…続きと行こうか…。」


 聖司はそう言って槍を構える。


 「大人しく倒れていればこれ以上苦しまずに済んだと言うのに。だったら全身粉々になるまで甚振り尽くしてあげるわ。」


 私も腰から抜いたナイフを構え、突進。


 「さぁどんどん行こうじゃないかっ!」


 「あなたと私じゃ戦闘センスが違うのよっ!」


 技量ならやはり私。得物のリーチの差があるにも関わらず、私のナイフが聖司を切り裂いていく。


 「今度こそ終わりっ!」


 私のナイフが聖司の肩に突き刺さる。


 「これだよこれぇぇっ!!」


 しかし、聖司は歓喜の声を上げる。そして左手にはナイフ。私は攻撃したばかりで下がるのが遅れた。


 「なっ……しまっ、ぐうぅぅ!」


 私も肩にナイフを突き刺された。


 「耐久力が高いとなぁ…格上相手でもこの相討ち戦法が効くんだ。もっとも、俺はお前を格上だとは思っていないが。」


 「…っ……はぁ…はぁ…。」


 肩から血が溢れ出る。痛い…痛い痛い…!!


 耐久値がなくなって初めての本格的なダメージ、傷。自分に死が迫っている。


 私は今まで、姉様たちほどではないにしても才能があるほうだった。大概のことはできたし、大概の相手と戦って勝ってきた。


 でも、このエデンとの戦いは……どちらかが死ぬまで終わらない。本格的な命の取り合い。


 

 「…あ……れ……?」


 身体が…震える……?


 嫌だ……死にたくない……私はやっぱり…前の時間の私のように強くなんてなれない…!



 そんな私の恐怖を聖司は的確に見抜いたらしい。



 「命のやり取りすら舐め腐っている三下小娘が………さぁ……死のうかぁ……。」



 そして悪魔の様に笑った。


 

次回、神崎透子VS不壊聖司 決着


「審判」 夕霧彼方vs佐藤明梨

「世界」 山田吹雪    

「教皇」 邪馬脳 

「力」  軍尾夏豪

?     ?

「月」  上島御奈帆

「運命の輪」蛭子鉄丸     

「節制」 神威マニア

「皇帝」 不壊聖王 death

「隠者」 羽田素子 death

「太陽」 稲取楓  death

「戦車」 剛火拳乱 death

「死」  那由多一美death

「塔」  谷岡浩二 death

「愚者」 影木幽  death

「魔術師」上代芳司 death

「吊し人」玉城清  death   

「女教皇」山田深雪

「正義」 騎千勇士 death

「星」  屋島祈

「悪魔」  ?

「恋人」 空席   vanish


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