泣き虫の君へ-3
「ああ! 泣かないでよ、クォーツ! あたしの大事なクォーツ、笑顔でいてよ」
「もしかしてダグラスに何かされたの? だったら僕が代わりに怒ってあげるから!」
「えー、ダ、ダグラス、何したのよ! クォーツだって女の子なのよ。繊細なんだから、大事に扱わないと壊れちゃうんだから」
不覚にも泣き笑いの表情になってしまった。
「わ、私は何もしてません。誓ってしてません。ただ話をしていただけです。そんな疑いの眼差しを向けないでください」
追い討ちをかけるようにダグラスの慌てふためく様子に哀しみの涙は一気に笑いの涙へと変化してしまった。耐え切れずに肩を震わせると、更に心配されてしまう。
「ちょっとホントー? クォーツが泣くなんて余程のことなのよ!」
リーリアの怒り。
「そうだよ。僕だってあのニヒルな笑いをしたクォーツしか見たことないんだから。よっぽどなんだよ」
ポプリのずれた心配。
「ああ、もう、何てことをしてくれるのよ。あたしのクォーツはダグラスと違って砂糖菓子のように簡単に溶けちゃうんだから」
チェスの労り。
そのどれもに嬉しいと思ってしまう。泣いたことなんてないのだから、心配されたというよりは驚いてしまったのだろう。三者三様の態度に嬉しくて、楽しい。
「クォーツ、貴女からも何とか言ってください」
それに今最も泣きそうなのは、ダグラスの方だ。私はついに声を上げてしまった。
「あっははは! ふっ、はっ、はは、……お腹痛い。も、もうそれくらいにしてあげな。ダグラスは本当に悪くないからね。別に意地悪された訳じゃない」
ダグラスがほっとしたように息を吐いた。
流してしまった涙がおさまらないうちに、リーリアたちが宝探しを終えて戻ってきてしまったのだ。私の様子に驚いて、そこにチェスも加わった為に可笑しなことになってしまった。
「なんだ、元気じゃない」
「ああ、大丈夫。余計な心配かけたな、ポプリ」
ポプリの頭を撫でてやると、安堵したのかにっこりと笑う。無垢な笑顔が可愛い。
「本当よ。それならそうと初めから言ってよ。でも泣くほど哀しいことがあった時は今度からダグラスじゃなくてあたしに相談してよ」
「そうよ、あたしだって、聞いてあげちゃうわよ。クォーツのこと、好きだもの」
チェスとリーリアがばつが悪そうに視線を逸らしながら言う。けれどその様子に私の頬はまた緩む。
「心配してくれてありがとう。ちょっとナイーブになっていただけだ。大丈夫だよ」
そう言って、二人の髪にそっと口付けると見る間に顔を真っ赤に染めた。素直な反応に私は嬉しくなる。
「……もう、大丈夫ですね」
「ダグラス」
眉尻を下げたまま、彼は私へ苦笑いを見せる。チェスとリーリアの突っ込みは余程効いたらしい。少々顔が引き攣っている。
「悪い事をしたな。もう、大丈夫だ」
「いえ、貴女がそう言えるならいいんです」
「……ありがとう」
やさしい、けれど手厳しい新参者は綺麗な仕草で頭を垂れた。




