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泣き虫の君へ-1

「私が見えているのか」

 プラチナクォーツが初めて人間と言葉を交わしたのは、芯から冷え込む冬の夜だった。目を見開いて驚く彼女に人間は笑った。

「こんにちは、プラチナクォーツ」

「ああ……」

 ぼんやりと返事をした彼女はプラチナクォーツと呼ばれる石である。先日この人間に買われたのである。

「黒髪とは予想外だった。だが、その瞳が君の証なんだね。とても綺麗な白銀だ」

 彼女は何を言われているのかよくわからなかった。それよりもどうして人間が自分を見ているのかの方が不思議だったのだ。まじまじと見つめてしまうプラチナクォーツにその人間はただただ微笑んでいる。

「主、お嬢さんが驚いておりますぞ」

 そこに、別の声が加わる。

 視線をずらせば三十路の頃と思われる男性が立っている。男の髪は赤みのかかった茶色で、それは何故か男に似合いだと思った。口許はまったく笑っていない癖に、目が愉快だと言わんばかりに揺れている。誰だろうか。

「ガブリエル、また君は勝手に出てきて」

「はて何のことですかな」

「まったく。プラチナクォーツ、これは君と同類のモノだ。広間に置時計があるのを見たかい。あれだよ。こんなにふざけた奴だとは思っていなかったけどね」

 人間の苦笑にガブリエルと呼ばれた男は楽しそうな様子を見せる。そういう性格のようだと理解して、彼女は人間に向き直る。

「お前は何故私を見ている」

 人間ではないモノを、そのモノの現身を、通常の人間が見れるとは思えなかった。

「僕は昔から幽霊をみることが出来た。そういう体質のようだ。何故か君やガブリエルたちの姿が人と同じ姿で見えるんだ」

「お前だけではない、過去の主の中にはそういう者たちが居た。特別な血でも持っているのかも知れんな」

 人間の言葉を引き継いだガブリエルはそこで一旦表情を引き締めると柔和な笑みを浮かべた。

「さてお嬢さん、改めてガブリエルと申します。出来るならば貴女と永久に共にありたいものですね」

 綺麗に腰を折ったガブリエルの姿に、初めてプラチナクォーツは笑顔を見せた。


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