人間店主
天窓から射した陽が顔に当たっていたらしい。その熱と、目を開けたときの眩しさに眠気もとんだ。人の形をとった私は珍しくうきうきした様子のプラチナクォーツを見つけて首を傾げた。彼女の様子を回らない頭で見ていると、お茶を出していることから来客があるのだとわかった。
「来客ですか」
訊ねると邪気のない微笑で彼女が応じた。ここに居ついてから来客に対してこのような態度を取る彼女を私は見たことがない。私の疑問に気がついたのか、彼女は私も来いと手招きをした。
「以前に話しただろう。人間の主様が来ているんだよ。紹介しよう」
鼻歌でも歌いだしそうな彼女に、私は盆を持ってついていった。
「マリア、ゆっくりしていってくれ」
「あらあら、ありがとう」
チェスに腰掛けているのは白髪交じりの髪を綺麗にまとめ、控えめなドレスに身を包んでいる老婦人だ。
「クォーツ、こちらの方は新しいお仲間さんね。紹介してくださる」
「はい」
彼女はにっこりと微笑んだ。やはり珍しい。穏やかな微笑を湛えるプラチナクォーツに老婦人もにこにこと微笑した。私はその二人の様子に頬が緩んだ。
「ダグラス」
プラチナクォーツが私を示す。私は老婦人に一礼して彼女の表情を窺う。とても、とても穏やかでホッとしてしまいそうな笑みを浮かべていた。
「初めまして。ダグラスと申します」
「あら。初めまして、マリアよ。とっても礼儀正しい人なのねえ。うふふ、クォーツや皆をお願いね」
「マリア、わたしまでお願いするなよ。それより今日は何かあったのか」
お茶請けのお菓子をマリアの前に出しながら、彼女が訊ねる。私もそれを手伝い、婦人のカップをかえる。
「あらあら、何もないと来ちゃいけないの。貴方たちの顔が見たくなったのよ。ガブリエルやリーリアちゃんはもう起きてるかしら」
マリアの微笑みに私もプラチナクォーツもあたたかくなる。
「皆でお茶を飲みましょう」




